運命なんて信じません

縁 遊

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23. 奢りです

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「はあ~、今日は色々ありすぎたよね…。確かに良い日では無かったけど…ありすぎだよ。」

 くたびれた~といった感じでソファーに倒れこむように座った占一さん。

 あの後、円城寺さんは顔をひきつらせながら「また来ますね。」と言って帰って行きました。一体何をしに来たのだろう?

 結局は占いもせずに帰りましたからね。

 でも本当に濃い1日でした。

 まさかこんなすぐに婚約者さんにお会いできるとは思っていませんでしたよ。もしかして占一さんのお母様とは連絡を取りあっているのかもしれませんね。

 だとすると…このままあっさり終わるとは思えないんだけどな…大丈夫かな?

 あっ!そうだ。白玉先輩におやつをあげると言っていたんでした。

「は~い、白玉先輩おやつですよ。」

 チューブタイプのおやつを出しながら白玉先輩に食べてもらいます。一生懸命舐めていて…可愛い。ほんわか癒されタイムです。今日の疲れが吹っ飛ぶわ~。

「白玉先輩はこんなに可愛くて人妻…いや猫妻さんなのですね。今日は旦那さんはどうしたのですか?またご近所さんのお宅にいっているのですか?」

 実は白玉先輩と旦那さんの小豆は会社の近所の猫好きさん達の家を転々と移動して暮らしているみたいなんです。人でもアドレスホッパーとかいうんでしたっけ?家を持たずに各地を転々と移動しながら暮らす人達がいるみたいですが羨ましい話ですよね。何事にも縛られていない感じで…。

 ああ…猫になりたい。

 私の様子を見た占一さんがププッと笑っている気がしますが気にしません。

「今日はもう帰ろうか。葉山さんも疲れているみたいだしね。この後お詫びにご飯を奢るよ。何が食べたい?」

 一息ついたのか天井を見た姿勢で固まっていた占一さんが姿勢を正して聞いてきました。

 食事のお誘いか…。

 こういう時は何でも言いと言われると困るんだよね。何て言おうかな。

「え~と、昨日は夜にカレーを食べたのでそれ以外なら嬉しいです。」

 昨日の夜は自分でカレーを作ったんだよね。今日は残ったカレーにお出汁を足してカレーうどんでもしようかと考えていたんですが奢ってもらえるのに行かないと言うのは無いですね。カレーは明日でも食べられます。

「カレーか…。自分で作ったの?」

「はい。基本は自炊してます。」

「へぇ~。料理が好きなんだね。」

「好きというか…する状況にいたので自然に身に付いたというか…。」

 実は母の料理がとんでもない代物だったんですよ。学校の給食を食べるまでは知らなかったのですが…。あ~、今でも初めて給食を食べて味に感動した時の事をハッキリ覚えていますよ。

「それってどういうこと?」

 不思議そうな顔をしていますね。そりゃ普通は考えられないですよね。

「あ~、私の母が凄い料理が下手だったのでするしかなかったんです。」

「え?そんなに凄いの?味覚の違いとかではなくて?」

「ん~、そうですね。例えば朝ごはんだと、芯の残った果物が入ったで固い炊き込みご飯と味噌だけを溶いた薄い味噌汁に具はその日のラッキー食材…ではなくて、えーと、チーズケーキが入っていたりチョコレートが入っていたりした時もありましたね。」

 そうなんですよ…母はその日の占いに出ていたラッキー食材を必ず料理に取り入れるのが日課だったんです。

 美味しければ文句はありませんが…これまた絶妙に不味いんですよね~。

「何だか想像しただけで甘さが口の中に広がってくるよ。…凄いね。お母さんは個性的な人なんだね。」

 良い様に言ってくれていますが、同情をするような目線を送られています。

 あっ、私の味覚は大丈夫ですよ!多分…。

「そうですね。」

 本当に個性的な人なので反論はありません。

「普通の家庭に見えても色々あるんだね…。」

 何だか含みのある言葉ですが深くは聞かないことにしてニッコリ笑っておきました。

「そうだな~、じゃあ行きつけのイタリアンがあるんだけどそこでも良いかな?」

 イタリアン!占一さんのイメージにピッタリですね。美味しそうなお店を知っていそうですよね。

「はい!そこでお願いします。」

「お店に連絡をしてみるから、その間に会社の戸締まりをお願いしても良いかな?」

「わかりました。」

 さあ、美味しいものをいっぱい食べて今日の疲れを吹き飛ばすぞ~!!



 
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