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21. お客様の正体は…
しおりを挟む入ってこられたのは長い艶やかな黒髪に涼やかな目元をしたクール系美人でした。
綺麗な髪を揺らしながらゆっくりとこちらに向かって歩いて来ています。
キャンセルのお客様ではないわよね?確か50歳の女性だったけど、どう見てもこの女性は20歳代よね。
予約のないお客様かな?
「いらっしゃいませ。どういったご用件でしょうか?」
私は受付らしく笑顔で応対した。女性は少し驚いたような表情をして占一さんを見た後で私の方に顔を向けた。
イケメンだから驚いたのかな?
「あの…どうして…いえ、あの占いをお願いしたいのだけど…。」
少し言葉に詰まりながら話しているのがわかる。緊張している?
「ありがとうございます。お日にちはいつがよろしいですか?」
「…今からは駄目かしら?」
「申し訳ございません。予約制となっておりまして当日は受付をしていないんです。」
「…そうなの。」
女性は私の話を聞きながらチラチラと占一さんを見ている。
占一さんが気になるのかな?
「お客様、本日はキャンセルがございまして時間がありますので、特別に本日だけは今からさせてもらいますよ。次回からはご予約をお願いします。」
占一さんが横から話し出した。
休まなくても大丈夫なのかしら。
「え…大丈夫ですか?」
私が心配して聞くと占一さんらウインクしながら頷いた。
…イケメンウインク攻撃ハートにきます。
自分でも顔が熱くなるのがわかります。
いや、仕事中よ!しっかり私!!
私はお客様の方を向いて気を取り直した。
女性も見ていたらしく顔が赤くなっている。
「宜しいのですか?ではお願いします。」
女性は目を輝かせて嬉しそうにお礼を言いました。…が、また悪い予感しかしませんが大丈夫でしょうか?
占一さんの人タラシは危険ですからね。
これは本人にも自覚してもらった方が良いかもしれません。これ以上被害が出ないようにしなければ!
「ではお名前と生年月日と血液型をこちらの用紙に書いて頂けますか?」
ソファーに案内してテーブルに紙とペンを置いてお茶を用意しに行く。
キッチンで日本茶を用意していたら突然占一さんの驚く声が聞こえてきた。
「え?!貴女が…。」
ん?どうしたんだろう。
私がお茶をいれ終わり占一さん達の所に帰って来ると占一さんが記入された紙を見て固まっていた。
「どうされたのですか?」
大丈夫かと思い声をかけるが難しい顔をしていて反応がない。
「あ、すまない。いや、彼女の名前を見て驚いてしまって…。」
知り合いだったとか?
すると彼女がにこやかに自己紹介を始めました。
「はじめまして。私、占一さんの婚約者の円城寺 百合華と申します。」
えええ~?!?!?!
あの、会ったこともないって言っていた婚約者さん?!
しかも凄い名前ですね?!如何にもお家柄が良さそうな感じを醸し出しています。
占一さんが驚いたのは当たり前だ。
私は占一さんの顔を見た。
なんとも言えない顔をしてる。それはそうですよね…今まで会ったこともなかったのに婚約解消の話をしたその日にまさか相手が来るなんて誰も思わないわ。
ある意味ミラクル過ぎます。
「ふふっ…。お2人共凄い顔になってますよ。」
「「……。」」
お互いに無言で顔を見合った。
「驚くのも無理はないです。今まで一度もお会いした事がありませんでしたから。でも…私は占一さんを知っていましたのよ。」
円城寺さんは意味ありげに微笑みながらお茶を飲んだ。
「…実は今日、母には話したのですが円城寺さんとの婚約を解消していただきたいと思っています。」
占一さん、急に本題に入りましたね。
「あら?理由を聞いても宜しいですか?」
円城寺さんは余裕と言うのか…動じません。
「僕には別に婚約者がいるからです。」
偽装婚約者ですがね。
「その人とは私より前に婚約をしていたのですか?」
「…いいえ。最近です。」
円城寺さんといつ婚約したのかは知りませんがこちらはつい最近の話ですからね。
「ふぅ~。」
円城寺さんは大きく溜め息を一つついてこちらを見た。
「でしたら婚約は解消しません。」
ん?!
嵐の予感がします!!!
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