運命なんて信じません

縁 遊

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20. 突然の訪問者

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 やっぱり…。

 そんなドラマのようにはピンチを助けに来てくれる人は来ることはありませんよね…。うん、わかっていますよ。

「ねえ?聞こえてます?」

 あ~、お母様に詰められそう。…と思っていたら間に占一さんが割り込んでくれました。

 少しほっとします。

「彼女に会話を振るのは止めてもらえませんか?巻き込みたくありません。」

 占一さんは自分の後ろに私を隠してお母様から見えない様にしてくれました。

 …ドキドキするのは緊張した場面だからよね?

「あら?彼女は貴方の婚約者だと聞いたけど…違うのかしら?」

 お母様は私が見える位置に移動しようとしていますが占一さんが移動してくれて見えない様にしてくれているみたいです。

「間違っていませんが彼女を貴女達に紹介するつもりはありませんよ。僕達の事は気にしないで下さいとあの人にも伝えてもらえますか。」

 その時会社の電話が鳴り響きました。

「仕事がありますのでお帰り下さい。もうこちらには来ないようにしてください。営業妨害です。」

 占一さんがお母様の方に移動します。

「え?それは…ちょっ、ちょっと!」

 うわぁ~、慌てているお母様を押しながら会社の外へと追い出してしまいました。

 私は急いで電話を取り対応します。その間中、外に出されたお母様がドアを叩いていた様で…音が止みませんでした。

 電話を切る頃には音が止んでいましたので帰ったんでしょうか?

「はぁ~。」

 占一さんが大きく溜め息をつきながらソファーに倒れるように座りました。

「大丈夫ですか?お茶でもいれましょうか?」

「あ~、ありがとう。お願いします。」

 私がお茶をいれて戻ってくると占一さんは誰かと電話をしています。着信音が聞こえなかったから自分からかけたのかな?

 そっと占一さんの前にお茶を置くと、占一さんがいつものイケメンスマイルを見せてくれます。私も笑顔で頭を下げてその場から離れました。

 私は受付の椅子に座って落ち着く為に大きく深呼吸をしました。

 緊張していた空気が消えてドキドキしていたのも落ち着いたみたいです。

 気になることは沢山ありますが私から聞くのは良くないよね。占一さんから話してくれるまで待とうかな…。

 私も家族の話は人にはしたくない。たまに聞かれることもあるけど…いつもあやふやにしている。

 みんなが幸せな家族を持っている訳じゃない事を知らない人がいるからな…。

 それとも知っていて興味だけで聞いているのかな?そうだとしたら嫌だな…。

 そう言えば前の職場の時に人にも言われた事があったな~。家を出てから実家に帰っていないと話をしたら冷たいだとか信じられないとか言われて驚かれたんだよね。あれから私に対する見る目が変わったんだよね。

 両親に感謝はしてます。だって両親がいなければ私はこの世に産まれていませんから。だけどそれだけです。高校に行く頃には遊ばず自分で働いて必要なお金は自分で稼いできました。両親にお金を何度か使われたりしましたけど…。

 大学も奨学金で行って…そのローンは今でも残っていますが自分で決めたことなので後悔はしていません。

 親には頼りたくないし…頼れない。

 そんな人間は沢山いるよね…。

 父とは何年会ってないかも忘れました。

 母はたまにお金の事で私に連絡をしてきますが直接は会っていません。

 あ…ダメだ。気持ちが沈んできた。


「お茶美味しかったよ。ありがとう。」

 電話が終わったみたいですね。占一さんがコップを持ってキッチンに向かいながらお礼を言ってくれています。

「さっきはごめんね。僕の家族の事で嫌な思いをさせたよね。」

 私の様子を伺うように話しているのがわかります。

「いえ、気にしないで下さい。私は大丈夫です。」

 占一さんの方こそ大丈夫かな?顔色が悪い様な気がしますけど…。

 あっ、そうだ。

「すいません、伝え忘れる所でした。先程の電話ですが、今日の予約のお客様からでした。急用ができたのでキャンセルしますと連絡がありました。」

「そうなんだ。」

 キャンセルになって良かったかもしれません。

「今日はもうお休みされてはどうですか?」

「そうだね…。」

 その時会社のドアを開ける音がしました。

「すいません…失礼します。」

 若い女性の声がします。

 今日の予約はキャンセルされたし…誰だろう?
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