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77. お母様との再会
しおりを挟む「顔を上げろ。」
静かな部屋に皇帝の声だけが響く。
「はい。」
私は緊張しながらゆっくりと顔を上げた。
「…確かに妹に似ているな。」
私の顔をじっと見つめ皇帝は表情を少しも変えずに言った。
「長い間苦労をさせてすまなかったな。」
まさかこんな言葉をかけてもらえるなんて思っていなかったわ。
「いえ、とんでもございません。私は元々平民だと思って生きてまいりましたので苦労などとはあまり思った事がありません。」
嘘ではない。私が自分の出自をしったのはつい最近と言っていいくらいだ。それまではただの村人として暮らしていたし、あの生活は貧しかったかもしれないが楽しかった。
「そうか…。しかしこれからはお前は皇族の一員として働いてもらわねばならない。宜しく頼むぞ。」
え…私が皇族の一員として働く?
「陛下…皇族の一員として働くとは何をすれば良いのですか?」
「あ~、今は后妃も失脚し皇女達もここから出ていくことになる。そうなれば、皇族の役目を果たせる者がいなくなる。祭典への参加等には私一人では無理だからな。」
やっぱり皇女のお二人もここからいなくなるのね。除籍されるのかしら…。
「そうですか、分かりました。」
私は皇女の身代わりといった感じね。
「早く部屋に帰るが良い。妹がお前を待っているぞ。」
「え?!お母様がいるのですか!」
「ああ。」
皇帝は笑顔で頷いた。初めて表情が変化した…。
「分かりました。では陛下失礼しますわ。」
私は早足で皇居内に作っていただいた自分の部屋に向かった。
まさか、お母様がこんな身近にいたなんて…。生きていらしたのね…良かった。
部屋の前に到着し呼吸を整えて扉をノックした。
「失礼します。星蘭です。お母様…入っても宜しいですか?」
緊張しながらお母様の返事を待っ。中から弱々しい声で返答がされた。
「どうぞ…。」
はやる気持ちを押さえながらゆっくりと扉を開ける。ソファーには姿がない。キョロキョロと見回すと寝台に人影があるのが分かる。ゆっくりと寝台に向かって歩いて行く。
やっとお母様と会える…。
寝台に横たわっていたのは痩せ細ったお母様だった。
「お母様…。」
私は布団の中から出された細くて折れそうなお母様の手を握りしめて泣いた。
私の記憶にあるお母様は艶やかな美しい髪が自慢の綺麗な人だったのに…今寝台に横たわっているお母様の髪はパサついた白髪になってしまっている。一体これまでどんな目にあってきたのだろうか…。
想像するだけで胸が苦しい。
お母様は細い指で私の涙を拭き取り笑顔を見せてくれた。
「会いたかった…。」
私はこの後お母様のこれまでの壮絶な生活を聞くことになる。
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