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58. お母様の本当の名前
しおりを挟む「これって…お母様のことなんだわ…」
亡くなったとされながらも葬儀をされたことが書き記されていない皇族…。
「お母様の本当の名前を知らなかったわ…」
亡くなったとされている皇女の名前は星華(せいか)とされていた。
お母様は身分や名前を捨てて暮らしていたのね。
どんな気持ちだったのだろうか…。
家族に命を狙われて、いつ襲われるかもしれない中での逃亡生活で結婚して子供を産んで幸せだったのかな。
私はお母様の本当の姿を何も知らなかったのね。
私はお母様の名前の書いてある所を指でなぞりながら泣いていた。
お母様…今は何処にいるの。
生きているのなら会いたい…。
何者かに連れていかれてからお母様は何処にいるのか、生きているのかすら分からない。
手がかりもなくもどかしい気持ちだったけど、やっと何かを掴めそうな所まできたよ。もう少し待っていてね。
私は本を胸に抱きしめた。
その時足音が遠くに聞こえた。
早すぎる…もう帰って来られたのかしら。
私はすぐに本を元の位置に戻した。
戻し終わったのと同時くらいに部屋の扉が開いた。
私は棚を拭いているかの様に装った。
扉の方に顔をやると思っていた人物ではなかったので驚いた。
「貴女…ここでなにをしているの?!炎華はどこなの?!」
部屋に入ってきた女性はヒステリックに叫んでいる。
誰なの?
炎華様に似ている様な気もするし、炎華と呼び捨てに出来る人物…。
もしかして…皇后様!
私は慌てて頭を下げた。
「早く言いなさい!ここで何をしていたのか!炎華はどこにいるのか!」
私が掃除に来ていることを知らないのね。
「私は炎華様の部屋の掃除をさせていただいています。炎華様は皇帝様に呼ばれて出て行かれました」
「チッ…遅かったのね」
今、舌打ちしましたか?
しかも、遅かった?って言いましたよね。
やはり、何かが起きているのですね。
しかも、皇后様絡みで…。
「炎華が帰って来たら私の部屋に来るように言いなさい。分かったわね」
「はい」
皇后様は真っ赤な髪を揺らしながら出て行かれました。
「ふぅ~、凄い迫力だったわ」
初めてお会いしましたが、何とも迫力のある女性でした。
真っ赤な髪と瞳だから余計に凄みがあるのでしょうか、性格もきついのかなと想像してしまいます。
それにしても何がおきているのかしら…。
何だか胸騒ぎがします。
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