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56. 手掛かりの本
しおりを挟む「これは捨てないのですか?」
「それは大事な本だ!」
寝台の下の隙間にあったボロボロの本を炎華様は大事な本だと言って私の手から取り上げた。
大事な本をこんな所に置く?
やはり変わっているわよね。
だけど何回か掃除に通ううちに会話ができる様になってきました。
慣れれば可愛らしい人だと分かるのですが…口は悪いですね。
私以外には殆ど人はやって来ないので周りが静かすぎて声が響くんですよね。
「それはどんな事が書いてある本なのですか?」
私は寝台の下を箒で掃きながら聞いてみた。
炎華様は目を見て話す事が苦手らしく、顔を見ないようにして話しかけたほうが会話が続くんです。
「…あれには皇室に関する事や昔の事件の事が書いてあるのだ」
え?皇室や昔の事件に関する事が…。
それならもしかして両親に関する事件の事も書いてあるかもしれない!
「面白そうですね。私にも少し見せて頂けませんか?」
「ダメだ!これは皇族しか閲覧できない事になっている本だからな!」
ガッカリです。せっかく手掛かりが見つかるかもしれないと思ったのに…。
「そうなんですね。知らなかったです、申し訳ありません」
でも、チャンスはまだあるはずよ。
実際、今まで寝台の下に置いたままになって気がついていなかったんだから、こっそり持って帰っても分からないんではないかしら?
今日は諦めるけど、次のチャンスを待つわ。
本の表紙をよく覚えておかないといけないわね。
私は掃除をしながら炎華様が抱き締めている本をチラチラと見た。
全体は紫色で金色の文字が入っています。
紫色は皇族の色と言われる色でしたね。覚えましたよ。
「炎華様はその本のどこに興味をもったのですか?」
皇女が読む様な内容なのかしら?皇族の歴史とか?それなら私には必要ないかもしれないわ。
「気になる事があったから調べていただけだ」
気になること?
「何が気になったのですか?」
炎華様は黙ったまま固まっている様子だ。言うかどうするか迷っている?
「…昔の事件についてだ。これ以上は言えない…」
事件ね…。これ以上聞くなと言われているのよね。仕方ないか。
「そうなんですね」
今日はここまでかな。掃除も少しずつしないと終わりが近いしね。まだ調べたいことがあるから終わるわけにはいかないし。
「お前は…何かを調べに来ているのか…」
ヤバい!疑われているみたい…。聞きすぎたわね。どうしよう…。
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