男装少女は復讐を誓う

縁 遊

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55. 2人の時間 (曹操視点)

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「星…?」

星蘭が僕の顔にある傷に優しく触れている。気持ち悪くないのか?

僕の顔の傷を見て何人の女達が気持ち悪がり逃げて行ったか…。

まあ、僕には都合が良かったんだけどね。

この傷があるお陰で誰かの愛人にならなくて済んだわけだからね。

でも…君にだけは見られたく無かったかな…。

僕は頬に触れている星蘭の暖かい手のうえに僕の手を重ねた。

「え?!曹操様?!」

星蘭がビックリしている。可愛い…。

「星の手…暖かいね」

僕はわざと星蘭に僕を意識させる為に星蘭の掌に頬をスリスリと当ててみた。

星蘭の顔が面白いくらいに真っ赤に染まっていくのが見てとれた。

「星…顔が赤いけど暑いのかい?」

僕はわざとわからないふりをして星蘭をからかう。

「そ、そうですね。…急に暑くなってきましたので、手、手を離して下さい」

可愛いな…これくらいですぐに赤くなるんだから。

「残念だ…」

僕は星蘭の手を掴んだまま僕の頬から手を離した。

「え?あの…手を…」

手を繋いだ状態でいることが恥ずかしいらしく上手く話せていないね。

「最近、僕の部屋を掃除しないしてもらっていないから今から来てくれる?」

僕はわざと聞こえないふりをして手を繋いだまま自室に向かった。

この時間なら他の人に会うこともないだろうと考えながら。

「あの…曹操様。手…手を…こんな所を誰かに見られたら…」

まだそんなことを気にする余裕があるんだね。アイツに苛められていないというのは本当だったのかな。

どこもケガはしてなさそうだし気持ちも落ち込んでいそうにない。

一体何が目的で星蘭を連れて行ったんだ?

僕の大事な星蘭を…。

「そうだ!一緒にお茶をしようよ。今日は何をしたのか僕に聞かせてよ」

そう言って星蘭の方を振り返ると驚いた顔で固まっている星蘭がいた。

「星…どうした?」

星蘭が見つめている方向を見る。あるのは僕の家というか部屋だけだ。何を見て固まっているんだ?

「曹操様…」

「何だ!今日は何をしたのか話してくれるのか」

僕は嬉しそうに星蘭の手を両手で包んだ。

だけどすぐに星蘭が手を引っ込めてしまったんだよね。残念!と思っていたら…。

「曹操様…確かに2~3日来ませんでしたけど…どうしたらこんなに散らかせるんですか?!」

さっきまで可愛く照れていた星蘭の姿が消えて、鬼の様な形相の星蘭が仁王立ちをして僕を見ていた。

「え…?だって海も今いないし…」

「言い訳は聞きません!お茶どころではありません!先に片付けますよ!」

え~!せっかく2人で甘い時間が過ごせるかと思ったのに~!

結局は日が暮れるまで掃除で終わってしまった…。

残念…。
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