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54. 本当だった…
しおりを挟む「入れたの!?」
蝶華様が驚いて私に近寄ってきました。
「え?どうやって入ったの。ドアを蹴破ったとか?」
そんなことしませんよ!
「普通に入れてもらいました」
蝶華様はフラフラとしながらソファーにたどり着き腰をおろした。
「今まで何人も行ったんだけど皆ドアの前で終わり。部屋の中には入れなかったのよ」
そうだったんだですね。
たまたま運が良かったとかですかね。
「あの…それで今日だけでは掃除が終わりそうにありませんので何日か通わせていただきたいのですが…」
茉央が知ったら激怒でしょうね。
「そうなの、分かったわ。女官達には言っておくから大丈夫よ」
「ありがとうございます。ではまた明日よろしくお願いいたします」
私は帰路についた。
実はただ掃除をしていたわけではありません。掃除をしながら部屋の間取りを覚えたりや女官達の話を盗み聞きしたりして情報を得ていたんです。
しばらく通う事で情報をもっと得ようという考えもあり掃除はゆっくりと行うことにしました。
まあ、実際あの部屋は1日では終わりませんけどね。普通に掃除しても1週間はかかりそうな汚さでした。
あの炎華様という方…本当に皇族なのでしょうか。
いろいろと考えながら歩いていると前から会いたかった人が歩いてきました。
「久しぶりだね星。蝶華様の所に通っているみたいだけど大丈夫?何もされていないかい?」
優しい笑顔だと目だけでも分かる。
「ありがとうございます、曹操様。普通にお仕事をさせてもらっていますから安心してください」
もしかして曹操様は心配して見に来てくれたのかな?いつもは仕事以外で出歩く事はないって言ってたわよね。それなのにこんな仕事場からもお住まいからも離れた場所で会うなんて…。
「フフッ…顔に煤がついているよ」
曹操様が手を伸ばして私の頬に触れる。指で煤を拭いてくれたみたい。
「あ、ありがとうございます」
私はハンカチを取り出し頬を拭いた。
「もうついていないよ」
「あ、曹操様の手が汚れたのではないですか?」
「僕は大丈夫だから」
その時、急に強い風が吹いてきた。
「キャッ!」
思わず髪を押さえて耐えた。
風が去った後に髪を整えようと前を向くと…。
「あ…お顔が…」
いつも曹操様の鼻から下を覆っている布がとれてしまっていて顔があらわになっていた。
曹操様もすぐに気がついて顔を蒼くしてすぐに傷を手で隠した。
「すまない…。気持ち悪いものを見せたな」
気持ち悪い?そんな事は思わなかった。ただ…美しい曹操様の顔に大きな傷が本当にあるのだというのを実感してしまった。
痛かっただろうな…。
私は無意識に曹操様の傷に手を伸ばしていた。
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