男装少女は復讐を誓う

縁 遊

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42. 空気が凍っています

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「曨範(ろうはん)様!うちの者が失礼しました」

海様が慌ててやって来て私の前に立ちました。

「海よ、明日からこの星に俺の部屋も掃除させろ」

「へ?星にですか…。それは…」

海様が困っているのが分かります。この人は曹操様より身分が高いのかしら。

「申し訳ないが星は姉上からの使いでやって来ているだけなのだ。我々が勝手には動かせない」

いつの間にか曹操様がやって来ていました。

「曹操様から頼んでいただいたら済む話ではないのかな」

曨範様はニヤリと嫌な顔をした。

この人…苦手だな。

曹操様を困らせようとしているのが分かる。

人を困らせて楽しむタイプの人間だ。

「どうでしょうか…。姉上に聞いてはみますが良い返事が得られるかは分かりませんよ」

曹操様は目だけしか見えませんが、無表情で話をされているような感じがします。

海様は下を向いたまま固まっていますが冷や汗をかいているのが見えていますよ。

このお二人は仲が良さそうではありませんからね、緊張しているのでしょうか。

でも私を助けに来てくれたことには感謝しないといけません。後でお礼を言わないとね。

いろいろと考えている間に終わるかと思っていましたがお二人の冷戦状態は解消されていません。

「曨範様!姫が来られるそうです。お支度を急いでください!」

若い男性が息を切らせて走ってきたことで空気が変化した。

曨範様はまたニヤリとして曹操様を見た。

「ああ、今日もいらっしゃるのか…。忙しいことだね。すぐに帰るよ」

走って来た若い男性にそう言うと、今度は私の方を見た。

「星…また会おう」

嫌、私は貴方に会いたくはありませんから。

その時、一瞬だけど曹操様が曨範様を睨んだ気がした。…けど気のせいよね。

曨範様は若い男性と一緒に足早に去って行った。

「ふん!曹操様の顔の傷がなければ二番手だったくせに…」

小声で海様が呟いたのが聞こえた。

「こら、海!誰が聞いているか分からないんだからそんな事は口にするな」

曹操様が海様を叱りつけた。

「申し訳ありませんでした」

海様は納得はいっていない様子ですが謝っています。

「星…これからは1人で動かない様にしなさい。水汲みは海に任せなさい。部屋の中だけにいるんだよ」

曹操様が私の頬に手をあてた。

「ここは危険な場所だからね…」

少し悲しそうな顔をして私の顔を見つめています。

私の頬を触る手の温度があがっているような気がします。少し親指を動かして唇に触れたかと思ったらすぐに手を頬から離しました。

な、なんだったの…今のは?









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