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20. ピンチの予感
しおりを挟む例の変なお客様があれからよく声をかけてくる様になりました。嫌な人ではなさそうです。
名前は曹(そう)さんで都からやって来たらしいです。
「おはよう星蘭ちゃん」
「おはようございます、曹さん」
朝の食堂に行く時間にバッタリ曹さんに会いました。
「星蘭ちゃんは朝ごはん食べたの?」
「はい、終りました。今からお仕事です」
「そうか…頑張ってね」
曹さんは私の頭をポンと軽く触った。
曹さんって雰囲気が亡くなったお父さんに似ているんだよね…へへ、頑張ろう。
曹さんは人を探してここまでやって来たらしいんだよね。…青晶には会わさない方が良いのかな?
この前も青晶を探している男の人達が沢山いたわけだし…きっと、曹さんが青晶の敵ではないと分かってから会わせた方が安心だよね。
そんな事を考えながら井戸で水を汲んでいた。
「星蘭!」
元気よく青晶が私に向かって走ってくる。
「青晶、どうしたの?」
「宿に泊まっていたお客さんがチップをくれたんだ。春華さんに話したら自分が貰って良いって言われたんだよ」
余程嬉しかったのか凄い興奮して話している。
「でね…このお金でいつもお世話してくれる星蘭に何かをプレゼントしたいと思うんだけど…何が欲しい?」
恥じらう青晶…女の子にしか見えません。
「え…と、特に欲しい物は今はないよ。気持ちだけで嬉しいよ。ありがとう」
「でも、それじゃあ僕の気が済まないから…」
青晶って意外に頑固なんだよね。
「う~ん、本当にないの。それなら貯金して貯めたお金で家を買わない?もちろん、私もお金を払うから」
「家か…良いね」
何も思わずに口から出た言葉だったけど案外良いかもしれない。大きくなくて良いから茉央や青晶と一緒に暮らせたら楽しいだろうな。
でも…この夢はきっと叶わない。
私はお父様を殺した犯人達に復讐しなければならない。その時は命は無いものと思わないと…。
甘い夢を見ることができるのは今だけね。
「おや?星蘭の友達かな…」
曹さんが朝ごはんを終えて井戸にやって来た。
しまった…青晶とは部屋の中で話をするんだったと後悔したがもう遅いわね。
「あれ…君はもしかして…」
やはり曹さんは青晶を探していたの?胸の鼓動が速くなる。
「私の妹の青晶と言います。美人だからって惚れては駄目ですよ」
私は何とかごまかそうと必死だった。青晶には睨まれているけどね。
「女の子なのか?」
「ええ、男の子に見えますか?」
私は作り笑顔がひきつるのを堪えていた。
「いや、すまない。でも2人は全然似ていないんだね」
「それって私が不細工って言いたいのですか?!」
失礼しちゃうな~。これでも村では綺麗な顔立ちをしていると言われていたんだけど!
「いや、そうではなくて。星蘭は私の知り合いに良く似ているけど…妹さんは似ていないから」
「私は母似で妹は父似なんです!」
「妹さんは違う知り合いによく似ているんだけどな…」
ああ…ピンチの予感しかしません!
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