男装少女は復讐を誓う

縁 遊

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6. ここはどこ? 〈謎の少年視点〉

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目を開けると見知らぬ部屋の中で寝ていた。

ここは…どこ?

僕は…。

必死で記憶を辿る。

僕は…。

思い出せない。

ベッドから起き上がろうとしてみるが、お腹が痛くて動けない…。

布団をめくって自分の体を確めた。

左の脇腹に血がついている。

痛い原因はこれか…。

僕はどうしてこんな傷があるんだろうか?

どうして何も思い出せないんだろうか?

いろいろと考えていると部屋に人が入ってきた。

真っ黒な髪と瞳の綺麗な子…誰だろう。

「あ…目が覚めた?お爺!目を覚ましたよ」

部屋にまた人が入ってきた。

今度は白い髭が立派なお爺さんだ。

「どれどれ…。ふむ、もう大丈夫そうじゃな。心配はいらん、わしは医者じゃよ。お前さん名前は?」

お爺さんは目を見たり、手首を触ったりした後、僕に名前を聞いてきたけど…。

「…分からない。僕は…誰なんだろう」

「何?驚かそうとかしてるの?」

黒髪の綺麗な子が僕に顔を近づけてきた。

「…いや、本当に分からないんだ」

綺麗な子は納得がいかないみたいな顔をしている。

僕だって自分が誰かを知りたいよ。

「星蘭や、そういう病気があるんじゃ。全てを忘れてしまう病気がな」

綺麗な子は星蘭っていうのか。

男の子?女の子?どっちだろう…。

「脇腹に傷があったが原因を覚えているかの?」

僕は首を横にふった。

「そうか…。お前さんは刺されたショックで記憶を失ったのかもしれないのう…」

お爺さんは立派なアゴヒゲを触りながら教えてくれた。

「いつ記憶が戻りますか?」

「んー、難しい質問じゃな。それは人によって違う。明日かもしれないし、戻らないかもしれないし…。はっきりとは言えないのう」

戻らないかもしれないのか…どうしよう。

「まあ、焦らんでいい。まずは傷を治すことを考えてゆっくりすると良い。この家は爺しかおらんから気をつかわずに居たいだけいると良いよ」

お爺さんは優しい笑顔をうかべて僕の頭を撫でてくれた。

「あれ…どうした?傷が痛むのか?」

星蘭っていう子が僕の顔を覗き込んでくる。

何で…?

「お爺この子は何で泣いてるんだ?」

泣いてる?僕が…。

僕は自分の目元に触れた。

確かに涙が出ている…。

「星蘭…そっとしておいてやりなさい」

僕はなぜ泣いてるんだ…勝手に涙が溢れてくる。

「余程辛い目にあったんじゃな…もう大丈夫だから安心して寝なさい」

お爺さんはもう一度大きな手で僕の頭を優しく撫でてくれた。

「…あり…がとう」

僕は掛け布団を頭までかぶり泣いた。

何故だか分からないけど涙は止まらない。

こんなに涙ってでるんだなというくらい泣いた。

そして知らないうちに寝てしまっていた。

暖かな布団に包まれて…。









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