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77. さよなら…お父様 〈アデル視点〉

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周りを覆っていた黒い霧みたいなのがなくなって、以前の景色と同じになった。

「終わったみたいだな…」

お兄様がポツリと言った。

終わった?

神様の戦いが?

雷が落ちたり、ピカッと光ったくらいだったけど…終わったの…。

アデル様は無事なのかな…。

「アデル様が心配だから、見に行ってきます」

私は、森へ向かって走って行った。

「お、おい、待て!サファイア…」

呼び止めるお兄様の声が聞こえてるけど…止まりません。

『俺が一緒に行くから心配するな。お前は母上と一緒にいろ』

ライさんが格好いい事を言っているみたいです。

「頼んだぞ!ライ」

お兄様が、また叫んでいます。

『サファイア、人間に戻ったら思う様に走ることができないだろう。俺の背中に乗れば速いぞ』

「ありがとうございます。ライ様」

私は背中に乗せてもらった。

ビュンビュンとスゴイ速さで風をきって進んでいく。

私は振り落とされない様に必死にライ様のタテガミを掴んでいた。

しばらくすると、焼けただれた森へ着いた。

あんなに綺麗な緑の森だったのに…。

話し声が聞こえる。

アデル様の声だ。

私はライ様にここで下ろしてもらえる様にお願いした。

邪魔にならない距離でアデル様達を見守る事にしようと思う。


「助けて下さってありがとうございました」

アデル様が神様に御礼を言いながら、頭を下げている。

「…私はたいした事はしていない。それに、こちらが人間を巻き込んだしまったのだから、御礼を言う必要はないぞ」

神様…照れてる?

頭を片手で触りながら返事してる。

だって…俗に言う所の…感動の親子対面ですもんね。

アデル様が気がついているかどうか…。

「あ…そろそろ帰らないと今度は妻の雷が落ちそうだから帰るよ…元気でな」

神様…そんな…もっとアデル様と会話してあげてくださいよ。

「…そうですか。また、いつか…お会いできますか?」

アデル様もアッサリしすぎだよ!

「ああ…また、いつか会おう。私はいつも天界から見ているから…」

神様の神々しい笑顔…そういえば、神様って何歳なのかしら?

どう見ても、美青年にしか見えないんだけど…。

「僕も今度から、空を見上げる事にしますよお父様…」

アデル様もわかってた!

そして、また辺りは光に包まれて…気がついたら神様は消えていた。

…見てる私が泣けてきました。

やっと、父親が誰かわかったのに…。

会えたと思ったら、すぐにさよなら…なんて…。

「ウッ…クッ…ヒックッ…グ…」

思わずすすり泣きです…。

「サファイア…聞いてたの?」

アデル様に気づかれてしまいました。

「アデル様…本当に…グス…良い…の…ズビ…ですか…」

アデル様が私の涙を拭いた後…抱きしめてくれた。

「アデル様…」

驚きで涙が止まった。

「僕にはサファイアがいるからね…僕の代わりに泣いてくれてありがとう…」

アデル様…が私の額に口付けをした。

「顔が真っ赤だね…可愛いいよ、サファイア」

「もう…アデル様たら…」

「そろそろ皆の所に戻ろうか…」

「…はい」

『置いて行くなよ…』

ライ様…すいません。

忘れていました。

ライ様に2人とも乗せてもらい、屋敷に帰った。

みんな心配していたので私達の無事な姿を見て喜んだ。

本当に…終わったんだよね。
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