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55. 悪巧み 〈ハイリ視点〉

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「前に言われたことを、よく考えたのですが…やっぱりあなたの言う通りだなと思いまして…」

クククッ…。

引っ掛かったな……。

「わかってもらえたんだね。本当に僕は君の力になりたいんだよ」

こいつを上手く使ってアイツを痛めつけてやる。

「それで、具体的には何をすれば良いのですか?」

「そうだね…まずは、噂を広めようか。君のお兄さんが王様には不向きな人間だということを、皆に知ってもらうとこからだね」

「噂を広めて、どうするんですか?」

「たかが噂と思ってはいけないよ。噂を上手く利用すれば人は動くんだよ。人が動くといろいろとやりやすいんだよ…」

そう、アイツが、王様に向かないと噂が流れれば貴族達はアイツを見限り、次男を王様にしようと動くだろう。

王族で無くなれば何かとやりやすくなる。
アイツを殺すことも…。

次男は真面目だから扱いやすい。
俺の手駒として使えるだろう。

俺が兄を王座から引きずり下ろす時にも、今回の事で恩をうっておいて、コイツに手伝わせれば…フフッ…完璧だろ。

「あの~…王様には向かない様な噂って具体的には、どういう…?」

そんな事まで聞くのか?
自分で考えろよ!
…だが、今は仕方ないな…。

「…そうだね…例えば、お金使いがあらいとか、女遊びが激しいとか…人格的に破綻しているとか…」

…俺が執事に言われている事ばかりだな。
だが、俺は王になるけどな。

「どれも、すぐに嘘だとわかってしまいませんか?」

…その心配もあるか…。

「では、弟から見て兄の欠点て何だと思う?」

「欠点ですか…無いように思います」

はぁー?無い奴なんかいるのか?

「お兄様は学校の勉強も実技も常に1番でしたし、お金の事に関しては細かいですし、女性に関しては周りから女嫌いなのか…?と言われているくらいです。しいて言うなら…物事に集中し過ぎる所があるくらい…ですかね」

アイツ…そんなに賢い奴だったのか?
俺の兄と良い勝負なんだな…。

「集中し過ぎるって…どういう事かな?」

「気になる事があると自分の納得いくまでとことん調べたりするので、身体を壊したりすることがあるんです…」

噂には使えそうにないか。でも…。

「そうなんだ…。今は気になる事ってあるのかな?」

「今ですか?そうですね…あっ…そう言えば、領地内でおきた火事について調べているから忙しいと言っていましたね…」

それだ!

「噂の内容が決まったよ」

「え?どのような内容なのですか?」

「その火事の犯人はアデルだ!と噂を流すんだ…。領民を立ち退かせる為に火事をおこしたとか…または、火事をおこして自分でフォローをいれて人々に良い印象を与える為に…とかだ」

「なるほど…わかりました。やってみます」

素直だな。

クククッ…。
楽しみだよアデル…。
君が弟の手によって落とされていくのを見るのが…。
その時には、サファイアも返してもらうからな。

サファイアは俺が王座につくためには必要だからな…。



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