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30. 調査 〈クルシュナ視点〉
しおりを挟む俺は今、妹のいる屋敷に来ている。
それは、妹に会うためでもあるが、屋敷の主人がどんな人なのかを見極めるためだ。
妹の結婚相手として、相応しいかどうかを…。
今まで、色々な独身貴族のいる屋敷を調査したが、愛人がいるだの、毎日飲んだくれているだの、領民達に嫌われているだの…ろくな奴がいなかった。
最後に辿り着いたのがこのお屋敷だ。
身分が高い方なので、どうするか迷ったが…妹もお世話になっているし、この際、調査しようと思う。
庭にある森の方から入り様子を伺う。
ちょうど、サファイアが大型犬と一緒に、庭で日向ぼっこをしているようだ。
寝姿も可愛いな妹よ。
大型犬がこちらに気がついたようだ。
「ウゥーーー」
『ザジさんどうしたんですか?』
妹も起きてしまった。
寝ぼけた顔も可愛いな妹よ。
『見たことない犬が庭に入って来ているのよ』
『見たことない犬?』
サファイアがこちらを見た。
『あっ…クルシュナ…さん』
まだ、兄さんとは呼んでくれないのだな…。
『サファイアちゃんの知り合い?』
『はい。私の…』
どう説明しようか迷っているな。
そうだよな、犬が兄だとは言えないよな…。
『驚かせてすまなかった。サファイアの友人のクルシュナです』
二人の近くに行き大型犬に挨拶した。
『私はザジよ。よろしくね』
『それにしても、どうしてここに来たんですか?』
サファイアが驚いている。
『近くまで来たから、どうしてるかなと思って見に来たんだ』
本当のことはまだ秘密だ。
『何だか貴方達…種類は違う犬と猫けど毛色とか雰囲気が似てて良い感じね』
ザジという大型犬がサファイアに小声で言っている。
まぁ、兄妹だからな。
『ザジさんが考えているような仲じゃないですよ』
妹は顔を赤くして否定している。
そういう顔も可愛いな。
話していると、俺が待っていた屋敷の主人が現れた。
「そんな所で何を楽しそうにしているのかな?」
顔は笑っているように見えて口元はひくついている。
分かりやすくいうと威嚇のオーラが出ている。
「見慣れない犬だね。…前にサファイアを屋敷まで送って来た犬か」
よく覚えているな。たった一度少しだけ見ただけなのに…。
「サファイアとはどういう関係なのかな?友達?まさか…サファイアが好きとか…」
好きは好きだが、恋愛の好きではないな。
家族の好きだ。
『ご主人様はサファイアちゃんが可愛くて仕方ないのよ。…たぶん、貴方に嫉妬してるんだわ…困ったご主人様ね…』
ザジが呟いている。
猫の妹を可愛がっている?
犬の俺に嫉妬するくらい?
こいつ…。
変態なのか!?
可愛がるのは良いが、人が動物に見せる嫉妬の範囲を越えてないか?
動物愛が強い異常者なのか?
やっぱり変態か!
今もサファイアを抱き上げたまま俺を睨んで威嚇をしている。
俺は見ているぞ…。
サファイアが前足で男の顔が近づき過ぎないように止めているのを…。
サファイアが嫌がっていることをするなんて…。
確かに、そういう時のサファイアは可愛い反応をするのでいつまでも見ていられるが……。
…それをして良いのは俺だけだ!
やはり、この屋敷の主人も、サファイアの結婚相手ではないな。
俺は何も言わず屋敷から立ち去ることにした。
はぁ~。
可愛い妹の結婚相手を探すのがこんなに大変なことだったなんて…。
あの屋敷の主人は俺と似た匂いがするから大丈夫かと思ったが…変態だったな。
あっ、俺は変態ではないぞ!
ただ、妹が可愛すぎるだけだ!
あの屋敷の主人とは違うぞ!
…たぶん。
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