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11. どうしたら良いですか?

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「おい、そこの猫。お前だよ…尻尾を下げて歩いている猫」

どこの世界に「おい、そこの猫」って呼ばれて振り返る猫がいるんだ。ちゃんと名前で呼んでほしい。
昨日、ご主人様から私の名前を教えてもらったでしょう。

睨むように後ろをチラッと振り返った。

「わかってんるだろ。自分が呼ばれてるって。お前に用があるんだから、ちょっとこっちに来い」

リルさんが私を捕まえようとしているみたいだ。

昨日、泊まらないで、さっさと帰ればよかったのに。

私はあなたのせいで、精神的なダメージが大きいんだよ。これ以上、あなたと関わりたくないです。

鼻息を荒くし、フンと前を向いてリルさんを無視した。

「やっぱり、可愛くない猫だな。お前、俺の言葉がわかってんだろ?」

可愛くない猫で結構です。リルさんに好かれたいとも思いません。言葉もわかっていますが、無視します。

「リル…サファイアに何をしようとしているのかな?」

ご主人様だ。

ご主人様のお友達でしょ、もっと言ってやってよ。
ついでに、帰ってもらってよ。

「何って…ちょっとコミュニケーションをとって、ついでに…少し調べようかかと思っただけだ…」

「何を調べるのかな?」

「そいつのピアスとか…身体とか…」

「………。」

ご主人様の無言の圧力だよ。
空気が凍っているよ。

でも、ピアスと身体を調べるって言ったの?
やだよ、リルさんに身体を触られるの…。
ご主人様でも、まだ慣れないのに…。

「サファイアは人に身体を触られるのを嫌がるから駄目だよ」

「じゃあ、ピアスだけ調べる。それなら良いだろ」

「サファイアが良いならね」

え…そこは許可しちゃうのご主人様?
ピアスに何かされているなら私も知りたいけど…。

…って迷っているうちに、リルさんが近くまで来てたよ!
どうしよう…。
リルさんの手がピアスに触れた。


ブワーッ!ビュー!ドーン!


その瞬間、竜巻みたいなのがおきて、リルさんが部屋の反対まで吹っ飛んだ。

   ???何が起きたの???

「リル、大丈夫か?」

ご主人様が慌ててリルさんに駆け寄った。

「イテテ…。凄い威力だな。ピアスを無理にはずそうとすると吹き飛ばされるようになってんだな」

そうなんだ。

あれ…でもご主人様が頭を撫でてくれた時もピアスに手があたったりしてたよね?
それは大丈夫なのかな。

「昨日、僕が頭を撫でてた時にピアスに手が触れたけど何もおきなかったよ」

そうだよね。

「故意じゃないからだと思う。ピアスをはずそうと故意に触れると発動する魔法なんだと思う」

すごい!そんなことできるんだ。

何だか忘れていたけど、私は異世界転生したんだなって実感したよ。

でも、このピアスは結局はずせないって事だね。

人がはずせないのなら、猫の私では絶対にはずせないし…。

誰が、こんな凄いピアスを私に着けたんだろう?

思い出したいのに出来ないんだよね…。

私はどうしたら良いのだろう…?

また、落ち込んできちゃったよ…。

『サファイアちゃん、元気なさそうだけど、どうしたの?』

ザジさん!

尻尾フリフリでザジさんに身体スリスリしちゃう。

「おい、アレ…猫が犬に何してんだ?俺に相手する時と態度が違いすぎるだろ…」

リルさんが驚いてるみたい。

「ここでは、いつものことだよ。見ないであげてくれる?ザジとじゃれることがサファイアの楽しみみたいだから」

いつものこと?

ご主人様、ひょっとしてモフモフタイムのことも知っていたの!

嘘…!

ここでは、やっぱり恥ずかしい…。

『ザジさん、すいませんが向こうの部屋でいつもの…お願いして良いですか?』

『わかったわ。良いわよ』

ザジさん良い犬だよ。感謝だよ。

モフモフタイムを見られていたと思うと恥ずかしいけど、やっぱり止められません。


今度からはもっと周りを警戒するよ。


ア~!モフモフ最高~!!!




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