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6. 私の記憶
しおりを挟む最近、気がついたことがあるんです。
ひとつは、長老さんが寝る時以外はほとんど家にいないということ。
このお家は出入り自由なのかな?
そういえば出会った時も町外れにいたし。
長老さんは何者?
『長老さんはどうして頻繁に外出しているんですか?』
『わしは、元野良猫でな、外に大勢の仲間がいるんだよ』
『え!長老さんは野良猫さんだったんですか?』
『ああ。ある時大ケガをして死にかけていた所をここの主人に助けられたのじゃ。それからは寝る時はこの家に帰ってきている』
『知らなかった…』
『今は息子達に町を任せてこの家で悠々自適の生活じゃ』
ん?
今、気になるポイントが何ヵ所かありましたよね?
『息子さんがいらっしゃるんですか?』
『12匹いるよ。娘も合わせるともう少しいるな。全員、町で暮らしている』
え!?
『え~と、任せるというのは何のことなんですか?』
『わしは昔、この辺り一帯の町をしきっていたボスだったんじゃ。今は息子達が分散して取り仕切っているんじゃよ』
なんですって~!!!
猫の親分ってことだよね…。
人は…いいえ、猫は見かけによらないってやつですね。
今はこんなに優しそうな長老さんが昔はこの町のボス猫さんだったなんて…。
『お前さんもどこかに家族はおらんのか?』
長老さんに質問されて、私は困ってしまった。
『どうやら私は昔の記憶がないみたいなんです。…気がついたら長老さんと出会った近くの森にいたんです』
『そうか…。よし、わしが子供達に言ってお嬢ちゃんのことを調べてあげよう。何かわかったら知らせるよ』
『ありがとうございます』
そう、最近気がついたことのもうひとつは、実は私は前世の記憶はあるくせに、この世界に転生してからの記憶が全くないということだ。
神様と話をした、あの時からしか記憶がない。
これも神様のスランプのせいなのかな?
でも、神様の話だと私はこの世界に赤ちゃんとして転生していたみたいだから、生まれてから今が何歳なのかもわからないけど、今までの記憶がないってかなり変だよね?
せめて自分が何歳かは知りたいなと思う。
でも、まだ気になることもある。
神様は私を人間として転生させた…みたいなことを言っていたよね?
人間に生まれたはずの私がどうして猫になったんだろう?
でも、神様っていいかげんな感じがしたから、ひょっとして人間にしたつもりが猫だったんだよ~っていうのもありそうだから怖いんだよね。
でも、もしそうではないとしたら…。
それにまだあるんだよ、気になること…。
私、左耳にブルーのピアスをしてるんだよ。
猫なのに…。
ご主人様がつけたわけではなく、長老さんと最初に出会った時からつけていたみたい。
川で顔をみた時は猫になっているショックが大きくて、耳まで見ていなかったんだよね。
あ~…。わからないことだらけだよ~!
こういう時は…。
ザジさ~ん。
モフモフさせてくださ~い。
今日は時間延長でモフモフを希望します。
私は周りをよく確認して誰もいないことを確かめてから、ザジさんのお腹にダイブした。
私はザジさんにモフモフさせてもらいながら考えていた。
こうなったら長老さんに猫仲間を紹介してもらって、思いっきりモフモフ生活を楽しむっていうのもありかもね。
食べ物も住むところも確保できてるし、悩んでいても仕方ないし、なるようにしかならないよね。
よし、明日から町に行ってみよう。
あっ、ザジさんすいません。もう少しこのままでお願いします。
……モフモフやめられません。
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