98 / 100
98. 賢人さんの様子
しおりを挟む私は病院の人に婚約者だと告げて賢人さんの居るところまで案内をしてもらった。
処置室に入ると賢人さんは点滴をしていた。
点滴してない方の腕を額にのせて疲れている様だった。
「橘くん、すまなかったね…」
賢人さんは橘さんが戻ってきたと思っているみたい。橘さんは私が来ることを言わなかったのかしら?
賢人さんは腕をのけて私の方を見て間違いに気がついたけど「あっ…」と言った後は黙ってしまった。
気まずいです。
「あの…橘さんが連絡をくれて。それで橘さんに今日中に取引先に渡さないといけない資料があるから変わってほしいとお願いされたので…すいません」
「いや、菫ちゃんが謝る事なんてないよ」
声だけ聞いているといつもの賢人さんと変わらない様な気もします。どこが悪かったのでしょうか?
「あの…どうしてこうなったのか聞いても良いですか?」
下ろされていた腕をまた額の上に置き賢人さんは大きな溜め息をついてから話し始めた。
「情けない話なんだけど…。寝不足と栄養失調だってさ…」
「え?」
いつも賢人さんは栄養のバランスに気を付けながら食事をされていましたよね?それに寝不足?何か悩み事でもあるのでしょうか。
「本人を目の前に言うことではないのかも知れないけど…プロポーズした後から急に会ってくれなくなったから僕が何か嫌な事をしたのかな?とか本当は結婚したくないのかな?とか嫌われていたらどうしようとか…色々と考えていたらご飯も喉を通らないし、ベッドに入っても寝付けなくて…情けないよね」
…原因は私だったのですね!!
どうしましょう…、賢人さんを嫌いになったわけでも結婚が嫌になったわけでもありません。ただアレルギーが出てしまうのが怖かっただけなのです。
本当の事を話さないといけませんよね。
「賢人さんは情けなくなんかないです。全部私が悪いのです。私が気持ちをちゃんと伝えていなかったから」
「菫ちゃん…」
「私…実は男性アレルギーがあったんです」
「男性アレルギー?」
「はい。男性にじっと長い時間見つめられたり、抱きしめられたりすると湿疹が出るんです」
「え?でも今まで…」
賢人さんと付き合う時にはアレルギーが大分でなくなっていましたからね、驚くのも無理ありません。
「最近は少し落ち着いていて湿疹が出ることは無かったのですが…この前久しぶりに出てしまって…」
そこまで話すと賢人さんは理解したみたいで
「え!この間の湿疹がそうなの?」
少しショックを受けている様子です。誤解しているのかしら?
「あの…アレが嫌だったとか賢人さんが嫌いだから出た訳ではなくて、私は恋愛経験が無いのでキャパオーバーになってしまって…それで久しぶりに出たのかと…」
賢人さんがホッとしています。良かった誤解は解けたみたい。
何だか私も少しホッとしました。
0
お気に入りに追加
152
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる