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83. 恋愛初心者です

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恥ずかしくなった私達はあれからすぐにお店を出て何故か島岡さんの自宅にいます。

ゆっくり話せる場所は…と考えて島岡さんが提案してくれたのです。

しかし…付き合うとなってから初めての自宅訪問。

き、緊張しています。

いえ、別に何も無いのは分かっていますが男性の部屋にいるということだけで慣れていない私は気を使うのです。

「さっき珈琲を飲んだから紅茶で良いかな?」

「あ、はい。ありがとうございます」

慣れた手付きで紅茶の茶葉から入れてくれている。

部屋に紅茶の良い香りが立ち込め始めた。

「良い香り…」

「そうなんだよ。この紅茶の香りが気に入っているんだ」

香りのお陰か少しリラックスできた様な気がします。

「はい、どうぞ」

私の前に紅茶を置いて、島岡さんは私の前に座った。

「さっきの話の続きだけど…僕も橘くんには言ったけど…あっ、琉斗にも言ったけどその他の人には言っていないからね」

「そうなんですね」

2人で紅茶を飲む音しか聞こえなくなってしまった。

何か話さないといけないかしら?

………。

「あ、琉斗には自分から言った訳ではなくて向こうから聞かれたんだ。…忘れてたよ、藤堂さんにも言っといてくれと言われていたんだ…」

島岡さんが気を使って話を始めてくれました。

「何をですか?」

「琉斗が森本さんと付き合う事になったらしいんだよ。デーティングは終了したんだってさ」

「え!そうなんですか?良かった…」

色々と心配しましたが森本先輩にもやっと幸せが訪れたみたいですね。これで穏やかになってもらえれば…嬉しいです。

「それとせっかく話し合える機会がもうけられているから言うけど…有宗さんが藤堂さんの事を菫って名前で呼んでいるよね?」

正確には菫様ですけどね。

「はい。そうですね」

身体を前のめりにして島岡さんが私に寄ってきた。

「僕も呼んで良いかな。菫ちゃん…って」

真剣な表情で真っ直ぐに私を見つめている島岡さん。

「…はい」

私が返事をするとホッとした様な顔をして乗り出していた身体を元に戻した。

「もう一つ、今度はお願いがあるんだけど…」

お願い?何かしら。

「何ですか?」

「僕のことも2人だけの時は名前で呼んでほしいな」

「な、名前ですか!」

恋愛初心者にはハードルが高いと思うのですが…。ほら、考えただけで心臓がドキドキしてますよ。

「もしかして僕の名前を覚えてない?」

島岡さんが、悲しそうな顔をしています。

「知っています。…賢人さん」

島岡さんがまた身体を乗り出して、今度は私の手を強く握りしめました。

「嬉しいよ、菫ちゃん。これからも宜しくね」

島岡さんってこんなにも表情が豊かな人だったのですね。新しい発見です。

何だか気持ちがポカポカと温かくなります。

嬉しくてニコニコと笑顔でいると、不意に顔の前が暗くなった気がして目を開けると、島岡さんの顔が近づいていました。

え!?

チュッ…。

唇に軽く温かいものが触れました。

「大切にするね菫ちゃん」

島岡さんが私を強く抱きしめます。

キャー!!

恋愛初心者にはもっとお手柔らかにお願いします~!





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