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67. 初恋の人
しおりを挟む私は取り敢えずお二人の事を知らないふりをして商談を済ませました。
ですが商談が終了してからが…。
「お二人は今日の夕食はどこかを予約されているんですか?」
淘汰さんが私達を見ながら予定を聞いてきました。
嫌な予感がしています。
「いえ、予約はしていませんが…」
「では、夕食は私にご案内をさせて下さいよ。美味しいお店にお連れしますので」
あ~、せっかく島岡さんと2人で島岡さんのお薦めのお店に行けると楽しみにしていたのですが無理そうですね。
「ありがとうございます」
「じゃあ、島岡さんと細かい打ち合わせをさせて下さい。藤堂さんはここでお待ちいただけますか」
淘汰さんが私達を離そうとしている気がします。何も島岡さんだけ連れて部屋から出て行かなくても良いと思うのですが…。
部屋にはおじ様と私だけになりました。
「いや~、久しぶりにだね。菫ちゃん、女の子らしくなって」
「おじ様ご無沙汰しております。お元気そうでなりよりですわ」
やはりこうなりますわね。
「本当は仕事の話を抜きにして話したいことがあったんだがアイツがそれを許さなくてな~」
アイツ?とはお父様の事を言っているのかしら。
「どうだ、淘汰も良い男に成長しただろう」
「…ええ。すっかり大人の男性に成長されていて一瞬分かりませんでした」
「そうだろう…」
おじ様は頷きながら話を聞いていますが、一体何を言いたいのでしょうか。
「アイツに淘汰と菫ちゃんの見合い話をしたらケンカになってな…」
え?!見合い話し…。
目的はこれでしたのね。
お父様は私の結婚に繋がる様な事は嫌がりますからね、怒っている姿が目に浮かびますわ。
「…それで…どうだろ菫ちゃん。淘汰との結婚を考えてみてはくれないだろうか。私も義理の娘に菫ちゃんがなってくれたら嬉しいし、会社の繋がりも今より強力なものになる…損はないと思うんだ。何より菫ちゃんは淘汰の初恋の人だからな」
淘汰さんの初恋の人?!
私がですか?!
それ…本人のいないところでばらしても良いのですか?
淘汰さんの初恋の人が私ということは知りませんでしたが…確かに会社の繋がりは強固になりますわ。
私も昔から知っているおじ様やおば様が義理の両親になるのなら過ごしやすいかもしれませんが…。
以前の私ならこの結婚の話をすぐに受けていたかもしれませんね。でも今は…初めての恋を知ってしまった私は…頷く事はできません。
「おじ様…」
私が返事をしようとした時、島岡さんが戻ってきました。
「あ…何かお話の途中でしたか?申し訳ありません…。藤堂さん持ってきた書類を貰えるかな」
「はい」
返事はしないままにおじ様との会話を終えてしまいました。
変な胸騒ぎはこれだったのね…。
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