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12. 橘さんの悩み

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「藤堂さんって習字とか習っていたの?」

書類を持ってきた橘さんが唐突に聞いてきた。

「昔に少しだけ習っていましたけど…それが何か?」

何でそんなことを聞いてくるんだろう?

「いや、いつも資料にメモを貼ってくれるけど、字が綺麗だな~と思って…」

「ありがとうございます」

誉めてもらえるのは嬉しいけど何故今頃なんだろう?

メモを貼っているのは昔からなのに…。

「はあ~、俺も習おうかな…」

橘さんと一緒にいると森本先輩に睨まれるから早く席に帰ってほしいけど、何だか話を聞いてほしそうですね。

「どうしたんですか?」

「実は先日取引先の人に会えなかったからメモを残して帰ったんだけど字が汚くて笑われたんだよ…。営業としてはね…落ち込んだ」

「大変だったんですね…」

それは相手も失礼だなと思いますが、先の事を考えると字は綺麗な方が良いとは思いますよ。

そういえば…。

「わざわざ習いに行かなくても今なら書店で字を綺麗にする本とかが売ってますよ」

この前、近くの本屋に行った時にこんなのもあるんだと思って見ていたのを思い出しました。

「え?!今ってそんなのがあるの?ありがとう、見に行くよ」

私の肩をポンポンと叩いて席に戻ろうとした。

「橘さん資料出来上がりましたので持って帰って下さい」

「…相変わらず早いね。それに藤堂さんの作成した資料は見やすい」

なんだか、今日は誉め殺しですね。

「ありがとうございます」

「そうだ、いつもの御礼に今度ご飯でも御馳走するよ」

え?それは…ちょっと…うわぁ~、森本先輩が凄い顔をして見ていますよ。

あっ!森本先輩が立ち上がった。

こっちに来る…。

「橘君、話が聞こえてたんだけど私も行っていいかしら?」

「え?森本先輩もですか…俺は良いですけど…」

橘さんこっちを見ないで下さい!

「…すいません、私…」

何て言うかを迷っていたらデスクの内線電話が鳴った。

「はい、藤堂です。はい、はい、分かりました」

至急応接室に来るようにという電話だった。

「すいません、呼び出されましたので失礼します」

「あ…わかった。じゃあ、森本先輩もまた今度…」

橘くんは席に戻って行った。

森本先輩の睨みがきつい…。

「私も呼ばれていますので…」

先輩の視線を感じながら席を外した。

あの状況から逃げ出せたのは助かりましたけど、誰が私を呼び出したのでしょうか。

謎です。

お茶を持ってきてほしいと言われていたので、お茶を入れて応接室の扉をノックした。

「失礼します。あ…」

そこに居たのは島岡さんと見知った顔だった。
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