男装令嬢の願い

74. せっかく会えたのに 〈レリア視点〉

リオンを連れてレオナのいる部屋に入れた。

レオナの「リオン」と呼ぶ声が聞こえたと思ったのに…。

今は目を開けない。

クリフ様は目を覚まして少し話をしていたんだ、と言っていた。

一目でもリオンを見れたのだろうか…。

クリフ様は急いで医師を呼んでくると言って部屋を出ていった。

「おかあさま…ねんねしてるの？」

リオンがレオナを指差して私に聞いてきた。

「そうね。リオン、この人は…」

何と言うか迷ってしまった。

貴方のもう一人のママよ…何て言って他の人のいる前でママと呼んでしまうと危険よね。

「この人はレオナさん。リオンの事を大好きってしてくれる人よ」

リオンの顔が笑顔になった。

「ぼくのことをギューとしてくれる人？」

リオンは"大好き"と言って、身体をギューと抱きしめてもらうのが大好きなのだ。

「そうよ、お母様みたいにしてくれるわよ」

「はやく、おめめあけないかな？」

「そうね…お母様も早く目を覚ましてほしいと思うわ。そうだわ、リオンいつも朝起きてお母様にしてくれるみたいに、レオナにもしてあげてくれる？」

「うん。いいよ」

私は抱いていたリオンをレオナの寝ているベッドに下ろした。

リオンはレオナの顔を小さな手でペタペタと触っている。

「はやく、おめめをあけてください」

レオナの耳元で囁いた後、頬にキスをした。

キスをした後、私の方に振り返り笑顔を見せた。

「これでおきてくれる？」

「そうね。きっとすぐに起きてくれるわよ」

その時、レオナの瞼がピクッと動いたような気がした。

「レオナ！」

私はレオナの肩を触って呼びかけた。

気のせいだったの…？

そうだ、今なら…。

「リオン、レオナを大好きってギューとしてあげてくれる」

「うん」

リオンは"大好き"ってレオナの首の所に手をもっていき顔をすり寄せた。

リオンは遊んでいると思っているのか、何度もギュー、ギューと言いながらレオナを抱きしめていた。

本当ならこの光景が当たり前なのよね。

人見知りのリオンも、他の人とは違う事をなんとなく分かっているのかしら。

クリフ様の時もそうだったわね。

「リ…オン」

レオナの微かな声が聞こえた。

「おかあさま、ぼくのおなまえだ」

レオナが自分の名前を言ったのでリオンは不思議そうに私を見た。

「そうね。リオンもっとギューしてあげて」

「大好き！ギュー！」

満面の笑顔でリオンはレオナをギューと抱きしめた。

その時、寝ているレオナの瞳から涙が溢れてきた。