男装令嬢の願い

縁 遊

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35. 2人の時間

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「リオ、喉がが渇きませんか?」

私が、クリフ様にどうやって嫌われるかを考えながら歩いていると、クリフ様が私に聞いてきた。

「そういえば…」

「そこのベンチに座って、待っていて下さい」

そう言うと、クリフ様は飲み物を売っている屋台まで走って行った。

私、上手く嫌われる事ができるかな…。

「お待たせしました。どうぞ…」

クリフ様はオレンジジュースを2つ持って帰ってきた。

「ありがとうございます…」

普通に御礼を言ってしまった…。

嫌われるなら、これは飲みたくないとか言わないとダメだよね…。

「どうしたの?美味しくなかった…」

私は頭を横に振った。

「そう…なら、良かったよ」

クリフ様と横並びに座ってジュースを飲む…。

嬉しいけど…喜んでいてはダメだ。

「あの…どうして…私に会いたかったのですか…」

私は思いきって聞いてみた。

「……それは…その…」

クリフ様が言葉につまっていると、雨が降り始めた。

そこで、やっと私はマリーの言葉を思い出した。

いけない…マリーに話は家でしたほうが良いと言われていたんだった…。

「あの…私が借りている家が近いので良かったらそこで話しませんか?」

「良いんですか?」

「…はい。雨が酷くなる前に急ぎましょう…」

「わかりました」

2人で家まで走って行った。

家に入ると、タオルをクリフ様に渡した。

マリーが日用品を揃えてくれている。

「ありがとう…」

クリフ様が雨で濡れて…何だか色気が出ています…。

ドキドキが止まりません。

いや、ドキドキしている場合ではない…。

親切にしてはいけないんだった…。

嫌われなくてはいけないんだ…。

「雨がやんだら…今日は終わりにしましょう…」

「え…どうして急に…」

クリフ様が呆然として私を見ている。

「…雨は神様が降らせたのかもしれないと思ったのです。降りだした時に帰るべきだったのかと…」

「そんな…せっかく会えたのに…。さっきの質問の答えだが、一目惚れなのだ…。だから、貴女がどんな女性なのか…知りたかった…だから…」

「………」

「困らせるのはわかっている。しかし、考えてくれないだろうか…。婚約者とは相思相愛なのか…?結婚はまだしていないよね?ねっ…」

クリフ様が矢継ぎ早に質問してくる…。

いつの間にか私のすぐ前にクリフ様が来ていた。

「私は…」

質問に答えようとしたら…クリフ様に抱きしめられた。

「まだ…答えなくても良い。少し…このままでいてほしい」

ドキドキのスピードが速くなってきた。



外はまだ雨が降っている。

雨の音と心臓の音しか聞こえない。

このまま時間が止まれば良いのに…。





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