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86. 龍神様に感謝
しおりを挟む俺は今…猛烈に悩んでいます。
だって前の世界で俺のじいちゃんだったのに、この世界でじいちゃんが俺の弟になるなんて信じられないよね?!
まだ決まった訳ではないけど、何となく俺の勘がそうだといっている。弟ならまず間違いないだろう。
妹だったら良いのに…。
いや、じいちゃんが近くにいてくれるのは嬉しいけど弟に頭が上がらない兄…ダメダメにしか見えないよね?
神様…どうしてこんなに近くに転生なんてさせるんですか。せめて友達の兄弟とかにしといてくださいよ。
「はあ~。」
「あら?大きな溜め息ね。」
母さんが大きなお腹を擦りながらゆっくり歩いてくる。
「貴方に弟か妹ができるのは嫌なの?」
「え?!」
確信をついた母さんの質問に俺は狼狽えてしまった。
「貴方が考えていることはだいたい分かるわよ。母ですからね。」
母さんは笑顔で俺の頭を撫でた。
「今までは貴方が一番末っ子だったからね。どうして良いのかわからないのかしら。」
母さん…ちょっと違うんだけど理由は言えないんだよな。何て説明すればよいかな。
「…いや、少し驚いただけです。まだ実感がないというか…。」
当たり障りのない言葉で返答した。
「そう…。でもこれだけは覚えておいてね。この先もしかしてまだ弟妹が増えることもあるかもしれないけど、お父様も私も竜のことが大好きよ。愛しているわ。」
母さんは俺の頬に手をあてて優しく撫でている。愛おしむってこんな感じなんだな。
あったかいな…。
「僕も…母さんも父さんも姉さん達も大好きだよ。」
俺は母さんに抱きついた。母さんも俺を力強く抱きしめてくれた。前の時には記憶にない母さんのぬくもり…。
「この子が生まれたらまた顔を見に帰ってくるのよ。」
母さんは言い終わると俺の頬にキスをした。
「はい。」
俺は顔を赤くしながら頷いた。自分の母親なのに照れてしまう。この感じはどうも慣れることができない。日本人として生きていた時はじいちゃんとの男二人暮らしが長かったのでその感覚が身体に染み付いている。女性の扱いは不慣れなんだよな。
俺は母さんに手を繋がれて庭を散歩することになった。我が家の庭は母さんが花が好きなので、いろんな種類の花が植えられている。季節を問わず沢山の花が咲いているのだ。
「実はね…誰にも言ったことがなかったのだけど、竜を身籠った時に龍神様が夢に出てきてお告げをされたの。」
母さんはいつもの会話と変わらぬトーンで話している。結構すごいことを話していると思うんだけど…。俺は何も言わずに母さんの顔を見ていた。
「気になる?」
「はい!教えてください。」
気にならない人何ていないよね。
「龍神様がね『これからお前が産む子供はとても大事な使命をもった子供だ。大切に育てるように。』って言われたのよ。」
龍神様がそんなことを言ってくれてたのか。だけど…父さんにも言ってないのはなぜなんだろう?
「なぜ父さんには言わなかったのですか?」
母さんはクスッと笑った。
「だって、想像できない?龍神様のお告げのあった子供だって言った後のお父様の慌てようが。」
納得したよ。確かに父さんが知ったら産まれる前から大騒ぎだっただろうな。生まれたら相当な過保護になっていたかも…。俺は学園に通えてなかったかもしれない。そう考えると父さんには言わなかった母さんに感謝だよ。
「実はねこの子もお告げを受けたのよ。」
母さんが愛おしそうにお腹を擦る。
「え?」
「この子もね竜と同じで大事な使命がある子供だそうよ。竜を上手く育ててくれたから今回も宜しく頼むって龍神様に言われちゃったわ。」
あ~!やっぱり俺の勘は当たってるのか?!
龍神様は、じいちゃんに何をさせる気なんだ?
悩み事は消えないよ。
俺が驚きの事実を知ってから数ヶ月がたった。
やはり、俺には弟ができた。
今日はまた実家に戻るために馬車に乗っている。
『何だか楽しいことになっているな。』
翡翠の身体はまた一回り大きくなっている。見た目は以前と違うようになってきた。だけど言うことは変わらない。ニヤニヤしているのが腹が立つな。
『知っているんだろ。』
『龍達の噂で聞いた。龍神様も面白いことをなさるな。』
面白いことって…。龍はイタズラ好きなのか?
『お前と一緒にいると本当に退屈しない。パワーもかなりもらっているしな。龍神様には感謝している。』
今まで一度も聞いたことがなかった翡翠からの言葉に俺は黙ってしまった。
『な、なんだ。お前が黙ると気持ち悪いぞ!』
人が感動しているのに口の悪さで帳消しだよ。でも…翡翠らしいな。
『俺も翡翠と一緒で毎日楽しいよ。龍神様に感謝してる。これからも宜しく。』
『ああ…。』
何とも言えない空気感になったところで実家に到着した。実家の前には姉さん達も揃っていた。
「「「「「「「お帰り~。」」」」」」」
そして父さんと母さん姉さん達の後ろにいる。母さんの腕の中には俺の弟が抱かれている。
これからも俺はこの家族とこの世界の為に頑張って行こうとふいに思った。
龍神様!俺をこの世界に転生させてくれて本当にありがとうございます!!
これからも頑張ります!!!
これで最終回になります。
最後まで読んでくださった皆様、お気に入り登録、しおりをしてくださった方ありがとうございました!!
この物語は途中で読みやめてしまう人が多く悩んだ作品でしたが、何とか最終回を迎える事ができてホッとしています。
本当にありがとうございました!!!
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ルシアさん
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