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75. 台風去る
しおりを挟む「ありがとう。みんな可愛らしいのね。」
母さんがクラスメイトに笑顔で挨拶をする。皆は顔を赤くしているけど…。みんな年上好きなのか?
「本当に大谷くんはその辺の女の子より可愛いくらいよね。」
桃花姉さんが大谷くんの頬を触っている。
大谷くんは人形のように固まってしまっている。息してるのか?
「佐藤くんは似合わないわね。男らしい骨格をしているからかしら。」
菊花姉さんは佐藤くんの肩付近を触っている。
佐藤くんも大谷くんと同様人形みたいになっていて動かない。っていうか、姉さん達がやっていることはセクハラになるんじゃないか!?
「姉さん達!あまり友達をベタベタ触らないで下さい。」
俺は大谷くんと佐藤くんに悪いと思って止めに入ったけど、なぜか2人から睨まれてしまった。
何で?
「まあ、竜ちゃんかたいことを言わないの。それより早くミックスジュースを持ってきてくれないかしら?」
母さんは相変わらずマイペースだな。
そう言えば注文してから時間がたっているな。どうしたんだろうか?
裏の作業している所を覗くと…。
「俺が持って行く!」
「いや、俺が!!」
「いやいや、僕が!!!」
クラスメイト達の誰がジュースを持って行くかで揉めていた。殺気だっていたけど…じゃんけんで決めることになったみたいだ。
俺が持って行こうかと行ったらまた睨まれた…。
何で…そこまで持って行きたいか?
最後の一人に決まりかけた時に予想していなかった事が起きた。
「お前達は何をしているんだ?」
織田先生が現れたのだ。
「え!?いや…。」
委員長が先生に正直に話した結果…。
「あら?もしかして担任の先生ですか?いつも息子がお世話になっていますわ。」
母さんが椅子から立ち上がり先生に挨拶をすると、姉達も立ち上がり挨拶をした。
そう、先生がミックスジュースを持って席に行ったのだ。
裏から生徒達の恨めしい視線が織田先生の背中をつきさしている。
「いえ、皆様にお会いできて光栄です。八岐くんは優秀な生徒ですから、安心してください。」
…よく怒られていますけどね。先生は本当にそう思ってくれているのかな?
『何だか面白いことになっているな』
翡翠がポンと現れて周りを見ている。
『本当にね。龍達もこんなに集まることはあまりないよね?』
黙っていたけど、この部屋には人間だけではなく龍達も沢山集まっていたんだよ。この国には数少ないと言われている龍持ちが集まっている状態だからそうなるのは当たり前なんだけどね。
『龍達はあまり会話しないんだね。』
さっきから見ているけど、会話をしている感じがないんだよな。
『そうだな。必要なこと以外は基本的に無口な奴が多いな。勿論、例外もいるがな。』
佐藤くんの龍みたいな…。
『失礼しちゃうわね。そんなにおしゃべりじゃないわよ!』
あ、聞こえてた!?佐藤くんの龍がすごい勢いで近づいてきた。
『ちょっとそれより貴方の家族を早く帰らせなさいよ。佐藤の鼻の下が伸びてて見ていられないわ!私がいるというのに…まったく。』
プリプリと怒っているようだ。これは嫉妬してるんだな。
『私の姿が見えていればこんなことにならないと思うけど、見せることができないから歯がゆいわ~。』
…見せてもどうだか。
『ちょっと…あんたいい加減にしないと怒るわよ!』
もう怒ってるじゃないか。
『まあまあ、落ち着けよ。』
翡翠が間に入ってくれた。
その時、会話に入ってきたのは織田先生の龍だった。
『こんなに一同に仲間が集まることは滅多にないのだから静かにせんか。』
やっぱり他の龍達と迫力が違う。出てきた瞬間から空気が変わるような感じだよな。佐藤くんの龍も驚いたのか、黙ったよ。静かになった。
『やっと静かになったな。人間とも仲良くやっていかないといけないぞ。』
佐藤くんの龍はまだ黙ったままだ。静かすぎて少し怖い気もするな。
先生と俺の家族達は和やかな雰囲気で話をしている。バックにいるクラスメイトの殺気は別にしてだけどね。
織田先生は気づいてないのかな?
「織田先生のような良い先生が担当してくださっているのなら安心ですわ。息子は少し常識はずれな所がありますからビシバシと指導してやってください。」
母さんが表情はにこやかに話しているけど内容は怖いな。
「そうですね。お母様から許可も頂きましたし、きっちり指導させていただきます。」
織田先生の答えも怖いよ。姉さん達は気にもせずにジュースに夢中になっているな。
「さあ、安心したから帰りましょう。」
母さんが姉さん達に声をかける。
「え!もう帰るのですか?」
「「「もう少し見て帰りたいです~。」」」
「もう結構いろいろと食べたわよ。まだ食べるの?」
姉妹で意見は割れているな。三つ子の姉さん達はまだまだ食べたりない感じでごねている。
「貴方達、それ以上食べると太るわよ。学校の先生に休み中に太るなって言われていたわよね?」
母さんが扇子で口元を隠しながら三つ子の姉さん達を諭している。目が笑っていない。
「「「え~と…。はい…帰ります。」」」
「…っと言うわけで帰るわね。頑張るのですよ。」
母さんは三つ子の姉さん達の背中を押しながら去って行った。
「「竜ちゃん、体に気をつけてね。」」
桃花姉さんと菊花姉さんも俺を抱き締めた後教室を去っていった。
「八岐くん…。僕もバグして良いかな?」
大谷くん…目付きが違うよ。ん?後ろには沢山のクラスメイトの姿も見える。
「「「「「「僕たちも…。」」」」」」
「うわぁ~!!!!!」
この後俺は揉みくちゃになっていったのは言うまでもない。
誰だよ!間接ハグだなんて言ったの!!
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