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73. 誰?

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『まさかこれが役にたつなんて思ってなかったよ…。』

『本当にな。』

 翡翠は少し馬鹿にしたような言い方だ。ムカつくけど言い返せない。

 それは以前に俺が会長に龍がついているのを忘れて龍をつけようとして怒らせた時に作った龍のついている、いないを記した生徒名簿が今回は役にたったからだ。

 銀色の龍にその名簿を見せて確認をしたんだよ。本当にまさかだよね。

 だから、翡翠に馬鹿にされても仕方ないことをしでかしたんだからここはグッと我慢することにする。

 もうあんな過ちはしないようにと気を付けています。はい…。

 話がそれたね。え~と銀色の龍は長話をしていた時に俺に『龍達についてもらうにもターゲットがわからないと別の奴につくかも知れんぞ。』って言ってきたので『それなら良いのがあります。』って名簿を差し出したんだよな。

 失敗から得るものがあって本当に良かったよ。

 おかげで今は順調にいっています。

 大谷くん達の食べたキノコの毒に効く薬も分かって飲ませたよ。今はすごい元気になって以前のように走り回ってスクープを探しているみたい。

 毒キノコについても記事にしていたのには驚いたけどね(笑)見出しも"龍の呪いは毒キノコのだった!!"って書いてあったしね。商魂たくましいとはこのことだよ。

 俺はというと今日は久しぶりに家族に会えるので緊張している。半年ぶりくらいになるのかな?

 なぜ家族に会えるかって?

 それは今日は学園の文化祭だから!

 大谷くんが忙しそうにしていたのは今日に向けて新聞部の活動をしていたからなんだよね。

 俺はなにもしていない…一応は生徒会の一員だけど、他の人達が優秀で特にすることもないからクラスの模擬店を手伝うことになっているんだ。本当は気がすすまないんだけど…。だってさ…クラスでは女装カフェをすることになっているんだよね。誰が提案したんだか…。

 男ばかりの学園生活だからこうなるのは仕方がないのか?これは異世界でも変わりはしないんだな。

 もちろん俺も女装させられている。こんな姿を姉さん達に見られたらどうなるか…。想像するだけでも恐ろしい。家族に宛てた手紙には両親だけで来て欲しいと書いたけど大丈夫かな…心配だ。

「八岐くん、似合いすぎじゃないか?」

 佐藤くんが上からしたまでじろじろと至近距離で見ている。佐藤くん、近すぎるよ。

「そんなことはないよ。佐藤くんは…。」

 …全然似合っていない。何故だろう男らしさが逆に際立っているような感じさえする。

「俺は全然似合わないな(笑)」

 豪快に仁王立ちで笑っている佐藤くんは格好いいようにさえ見えるよ。でも、下はスカートだから気をつけてね。

「おっ、見ろよ。アイツも八岐くんと同じで似合ってる…というかアイツ…美少女過ぎないか?誰だ?」

 佐藤くんの口があんぐりと開いている。無理ないな。目の前に現れたのは可憐な美少女にしか見えないよ。男だと知っていても見てしまうほどだ。

 肌は白く手足はスラッとしていてパッチりとした青い瞳に唇はピンク色で可愛らしい。髪の毛はカツラかな金色のロングヘアーだ。

 本当に誰だ?

 クラスの人に間違いはないと思うけど、あんな感じの美少年なんてこのクラスにいたかな?

「聞いてこようかな。」

 佐藤くんが知りたいのを我慢できずに聞きに行くらしい。俺も知りたいので黙って頷いた。

 頼んだ佐藤くん!

「あっ、いたいた。」

 佐藤くんが美少女に聞きに行こうとした時、美少女の方から俺達の方にやってきた。

 あれ?もしかして…。

「は~、やっとクラスに戻れたよ。」

 この声は聞き覚えが…。

「「大谷くん!?」」

 俺と佐藤くんは2人で大声を上げてしまった。

 そうだよ。見慣れすぎていたけど大谷くんってかなりの美少年だったよ。

「え?!何…もしかして2人も僕だと分からなかったのか?」

 2人もと言うということは他の人も分からなかったんだな。当然だと思うよ。

 化粧のせいもあるとは思うけどかなりの美少女に仕上がっているからね。それこそミスコンでもあれば優勝するんじゃないかというくらいのレベル…いや、学祭に来た知らない人がナンパするんじゃないかというくらいのレベルだよ!

 新聞部はどうしたのかな?

「え…何で。新聞部は良いのか?」

 佐藤くんが相変わらずストレートに聞きましたね。

「うん。一段落したから抜けてきたんだ。僕だってクラスのみんなと楽しみたいからね。」

 美少女の笑顔が眩しいです。クラスのみんなも大谷くんと分かっても見とれています。これって危ない扉を開きかけてない?

「何かさ~、この教室に来るまでも周りの視線が変な感じなんだけど…なんでかな?そんなに似合ってない?」

 いや、逆だよ!似合いすぎてみんながポーとなっているんだって!

「大谷くんの美的感覚って…。」

 さすがの佐藤くんも何も言えなくなっている。

「変だな~。家の母親にそっくりだからいけるかと思っていたんだけどな…。やっぱり脱ごうかな。」

「「「いや!そのままで!!!」」」

 クラスのいろんな所から止めにはいる声がしたのは言うまでもない。
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