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71. 山の龍

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「本当に行くのか?」

 心配そうに声をかけてくれたのは大谷くんだ。

「うん。正直…迷ったけど行かないと謎は解明できないよね?行って確かめてくるよ。」

 周りのみんながあまりにも心配するからそんなに危険なのかと思って止めようかとも思ったけど、何だか行かないといけないような気がするんだよね。

 不思議なんだけどさ…。

「やっぱり俺も一緒に行こうか?」

 佐藤くんも心配してくれているみたい。

「ありがとう。でも大丈夫だよ。一人で行ってくるよ。」

 たぶん龍に関係する事だから俺一人の方が何かあった時には良いと思うんだよね。誰かと一緒だとずっと一人でぶつぶつと言っている危険な奴だと思われかねないからね。

 正確に言えば、実は一人ではないんだけどね。

『俺は行かないとダメなのか?』

『翡翠が来てくれないと不安だから一緒に来てよ!』

「どうしたんだ?」

「いや、何でもないよ。じゃあ、行ってきます。」

「気をつけてな!」

 佐藤くん達に見送られながら翡翠と山に向かった。

『翡翠は山について知っていたのか?』

『まあ、一応はな…。』

 何だか曖昧な返事だな。

『何で教えてくれなかったのさ?』

『こういうのは自分で調べてこそ価値があるだろ。あまり龍に頼ろうとするなよ!』

 たしかにそうかもしれないけどさ…少しくらいは良くない?

 噂の山は思っていたよりも学校から近くにあった。何で今まで知らなかったんだろうというくらいにね。

『うわぁ~、何だか霧がかかっていて神秘的な感じがするね。いろいろと噂されているのも納得できる感じがするよ。』

 目の前の山は霧がかかって頂上まで見る事ができない。というか、すぐ先も見えないくらいの深い霧だ。俺…滑落しないよね?

『翡翠…この霧って無くなったたりしないのかな?』

『……。』

 翡翠が難しそうな顔をして黙り込んでいる。こういう時に翡翠が黙るってことは何かを知っているということだ。

『あるんだね。どんな方法か教えてくれないかな?』

『……。』

 まだ無言を貫くか!

『…あまり龍に頼るなと言っただろう。自分で考えてみろ。』

 えー!!翡翠のケチ!

 自分で考えてみろといわれてもな~。霧を無くす方法なんて学校でも教えられてないし、前世でも習わなかったぞ。でも、翡翠が自分で考えてみろと言うくらいだから俺にできる方法があるということだよな…。何だろうか、俺にできること…?

『もしかして…龍に頼むとか…?』

 翡翠が黙って聞いている。これは正解かもしれない。でも頼む?どこの龍に?

『ここに龍が住んでいるということなのかな~?』

 翡翠がまた何も言わずに聞いている。やってみるしかないな。

『この山に住んでいる龍よ、どうかこの霧を無くして下さい。私は貴方に会いにきました。』

『……。』

 何も聞こえてこないし、霧も無くならない。

『違うじゃん…。』

 俺が声に出してガッカリしていたら山に光が差しこみはじめた。

『霧が…無くなってきた…。』

 一歩先も見えない様な霧が立ちこめていたのに今は向こう側が見えている。山の全体像も見えてきた。…かなり高い山だな。

『我に話しかけてきたのはお前か…。』

 目の前に現れたのは巨大な銀色の龍だった。俺は驚きすぎて口をあんぐりと開けてみとれていた。

『おい!竜!お前に話しかけられているんだ!しっかりしろ!』

 翡翠が俺の背中を尻尾で叩く。

『はっ!す、すいません。はい!そうです。僕が呼びました。』

『ほ~、久しぶりに龍と仲が良い人間を見たな。お主は…。ん?魂が異世界から来たのか?』

 な、何でわかるんですか?!

『はい。異世界から転生しました。』

 銀色の龍は表情も柔らかく穏やかな感じだ。

『龍神の加護があるな…。この世界には龍神の頼みで来たのだな。』

『はい…。』

 この龍…すごい!何で分かるかは分からないけど何でもお見通しみたいだ!

 もしかしてこの世界の龍神様なんじゃないか?

『ハハハッ!違うぞ。ワシは龍神ではない。ただの長生きしている龍だ。』

 俺の考えていることを読まれた。

『今日は何か用事があってきたのではないのか?』

 そうだった!大谷くんの件を忘れる所だったよ。

『あの…僕の友人がここの山に来てから体調を崩しているみたいでその原因を知りたくて来ました。』

『お主の友人…?もしかして男数人で山に入ってきた者達のことか?』

 人数は聞かなかったけどそうかな?

『多分…そうかと思います。』

 今まで穏やかだった龍の雰囲気が急に変わり霧もまた濃くなってきた。

 あれ?もしかしてヤバイのか?!



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