28 / 86
28. 両親の意外な話
しおりを挟む「竜?どうしたんだ。」
父さんが心配そうに俺の身体を掴んで揺すっていた。どうやら翡翠と長い時間話していたから龍が見えない父さんからしたら俺が意識を失くしているように見えたのかもしれない。
「大丈夫だよ。心配させてごめんなさい。龍と話をしていたんだ。」
「龍と話を…か。龍は何と言っているんだ?」
「言霊の話を教えてもらっていたんです。」
「ことだま?」
やはりこの国にはこんな言葉はないんだな。今の父さんの言い方だと漢字も意味も分かってないよね。
「言霊とは分かりやすく言えば…人が口から出す言葉には魔力の様なものが宿るということです。」
父さんに理解してもらえる様に魔力と言ったけど理解してもらえたかな。すごい腕組をしているな。
「魔法を使う時に口で呪文を唱えるがそれの事か?」
あ~、理解してもらえなかったか。どう説明したら良いかな。
「いえ、魔法の呪文だけでなく全ての口から出す言葉のことです。」
「全てか?」
「全てです。」
「では私達は日常において呪文をずっと唱えていると言うことか?」
そこまでになると呪いをかけあっているみたいな感じになるよね。
「え~と、例えば良い言葉を口にすると良い空気になりますが、悪い言葉を口にすると空気も悪く変化しますよね。そういうことです。」
これで分かるよね?
「…なるほどな。確かに言われてみればそうだな。」
父さんもやっと理解してくれたみたいだ。
「だから口から出す言葉は良い言葉を出しなさいと言われました。」
父さんは黙って腕を組んだまま頷いていた。
「後…龍達は口にした言葉を望みだと思い叶えようとするから覚悟がないなら気を付けろ…と教えてもらいました。」
「ほぉ…。ん?覚悟とは何のだ?」
そう、これで俺も翡翠から散々話を聞かされたんだよ。
「それは、例えば何か叶えたい夢があったとします。それを口にします、すると龍は叶えて上げたいと思い準備をしますが言った本人がその夢に対して努力をしなければ夢は叶わないし、努力していたとして叶えるタイミングを龍が作ったとしてもそこで本人に夢を現実にする覚悟が出来ていなければ本人の意志で夢が途絶えるんです。そして今まで準備をしてくれていた龍はガッカリしてその人から離れてしまうかもしれないということです。」
「なるほどな…。」
これを翡翠にいろいろと聞かされたんだけど、意外とこういう人間は多いんだそうだ。翡翠が言うには『例えば恋人が欲しいと願うから会わせてやったのに、私にはもったいないだの、今はそんなきぶんではないだのと言って結局は付き合わないでいるんだ。口にしたのは自分なのにな!』…だそうだ。
これは龍達の間で最近話題になっていて、人間の気持ちが理解出来なくなってきたと言われているらしい。
龍の使いとしては(見習いだけど…)龍との信頼を損ねる事はやめたいよね。
「では、逆に言えば口に出して願いをいってからそれを叶える為に努力をすれば龍が手伝ってくれて願いを叶えてくれやすくなる。というこか?」
「そうです。お父様についている龍は格が高いので努力さえすれば願いは叶えやすいと思いますよ。」
父さんは大きく頭をふり頷いている。
「分かる様な気がする。…母さんと結婚する時にもしかしたら力になってくれていたのかもしれないな。」
母さんと結婚するのって大変だったのか?その時父さんについている龍が姿を見せた。
『久しぶりだな。おぬしは頑張ってきたようだな。皆から噂は聞いておるぞ。』
大きな白い体は輝いていて美しい。
『ありがとうございます。』
『こやつに教えてやって欲しくてな、姿を見せた。さっき言っていた結婚の時の話しは当たっている。』
『そうなんですか?!』
親の馴れ初めなんて聞いた事がなかったから知らなかった。
『おぬしの母親は人気者でな結婚の申し込みが多かったのだ。どうしても結婚したかったこやつはいろいろと努力してな…。だから私が偶然を装い2人を何回か会わせるように仕組んだのだ。まあ、結果は今の通りだ。』
『分かりました。お父様に伝えます。』
『頼んだぞ。』
それだけ言うと龍は姿を消した。
「お父様の考えた事は合っているらしいです。今、お父様についている龍が出てきて教えてくれました。お父様とお母様が結ばれる様に偶然を装い何回も会わせたらしいですよ。」
父さんは凄い驚いているな。目がこれでもかというくらい大きく見開いている。
「やはりそうか…。あの時は本当に運命を感じたんだ。何回も意外な場所で会っていたからな…。そうか…龍様が手伝ってくれていたのだな…。」
父さんは感動しているのか、何かを思い出しているのか分からないが目を閉じている。
父さんの事だから当時の母さんの事を思い出したりしているのだろうな。今でも仲が良いし、母さんは美人だしな…。
あ、すっかり話が反れてしまって忘れていたけど王様に会うまでにいろいろと準備をしないといけないんだった。
間に合うかな…。
0
お気に入りに追加
60
あなたにおすすめの小説
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
チート薬学で成り上がり! 伯爵家から放逐されたけど優しい子爵家の養子になりました!
芽狐
ファンタジー
⭐️チート薬学3巻発売中⭐️
ブラック企業勤めの37歳の高橋 渉(わたる)は、過労で倒れ会社をクビになる。
嫌なことを忘れようと、異世界のアニメを見ていて、ふと「異世界に行きたい」と口に出したことが、始まりで女神によって死にかけている体に転生させられる!
転生先は、スキルないも魔法も使えないアレクを家族は他人のように扱い、使用人すらも見下した態度で接する伯爵家だった。
新しく生まれ変わったアレク(渉)は、この最悪な現状をどう打破して幸せになっていくのか??
更新予定:なるべく毎日19時にアップします! アップされなければ、多忙とお考え下さい!
トップ冒険者の付与師、「もう不要」と言われ解雇。トップ2のパーティーに入り現実を知った。
空
ファンタジー
そこは、ダンジョンと呼ばれる地下迷宮を舞台にモンスターと人間が暮らす世界。
冒険者と呼ばれる、ダンジョン攻略とモンスター討伐を生業として者達がいる。
その中で、常にトップの成績を残している冒険者達がいた。
その内の一人である、付与師という少し特殊な職業を持つ、ライドという青年がいる。
ある日、ライドはその冒険者パーティーから、攻略が上手くいかない事を理由に、「もう不要」と言われ解雇された。
新しいパーティーを見つけるか、入るなりするため、冒険者ギルドに相談。
いつもお世話になっている受付嬢の助言によって、トップ2の冒険者パーティーに参加することになった。
これまでとの扱いの違いに戸惑うライド。
そして、この出来事を通して、本当の現実を知っていく。
そんな物語です。
多分それほど長くなる内容ではないと思うので、短編に設定しました。
内容としては、ざまぁ系になると思います。
気軽に読める内容だと思うので、ぜひ読んでやってください。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
病弱が転生 ~やっぱり体力は無いけれど知識だけは豊富です~
於田縫紀
ファンタジー
ここは魔法がある世界。ただし各人がそれぞれ遺伝で受け継いだ魔法や日常生活に使える魔法を持っている。商家の次男に生まれた俺が受け継いだのは鑑定魔法、商売で使うにはいいが今一つさえない魔法だ。
しかし流行風邪で寝込んだ俺は前世の記憶を思い出す。病弱で病院からほとんど出る事無く日々を送っていた頃の記憶と、動けないかわりにネットや読書で知識を詰め込んだ知識を。
そしてある日、白い花を見て鑑定した事で、俺は前世の知識を使ってお金を稼げそうな事に気付いた。ならば今のぱっとしない暮らしをもっと豊かにしよう。俺は親友のシンハ君と挑戦を開始した。
対人戦闘ほぼ無し、知識チート系学園ものです。
エラーから始まる異世界生活
KeyBow
ファンタジー
45歳リーマンの志郎は本来異世界転移されないはずだったが、何が原因か高校生の異世界勇者召喚に巻き込まれる。
本来の人数より1名増の影響か転移処理でエラーが発生する。
高校生は正常?に転移されたようだが、志郎はエラー召喚されてしまった。
冤罪で多くの魔物うようよするような所に放逐がされ、死にそうになりながら一人の少女と出会う。
その後冒険者として生きて行かざるを得ず奴隷を買い成り上がっていく物語。
某刑事のように”あの女(王女)絶対いずれしょんべんぶっ掛けてやる”事を当面の目標の一つとして。
実は所有するギフトはかなりレアなぶっ飛びな内容で、召喚された中では最強だったはずである。
勇者として活躍するのかしないのか?
能力を鍛え、復讐と色々エラーがあり屈折してしまった心を、召還時のエラーで壊れた記憶を抱えてもがきながら奴隷の少女達に救われるて変わっていく第二の人生を歩む志郎の物語が始まる。
多分チーレムになったり残酷表現があります。苦手な方はお気をつけ下さい。
初めての作品にお付き合い下さい。
アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~
明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!!
『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。
無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。
破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。
「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」
【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?
全てを奪われ追放されたけど、実は地獄のようだった家から逃げられてほっとしている。もう絶対に戻らないからよろしく!
蒼衣翼
ファンタジー
俺は誰もが羨む地位を持ち、美男美女揃いの家族に囲まれて生活をしている。
家や家族目当てに近づく奴や、妬んで陰口を叩く奴は数しれず、友人という名のハイエナ共に付きまとわれる生活だ。
何よりも、外からは最高に見える家庭環境も、俺からすれば地獄のようなもの。
やるべきこと、やってはならないことを細かく決められ、家族のなかで一人平凡顔の俺は、みんなから疎ましがられていた。
そんなある日、家にやって来た一人の少年が、鮮やかな手並みで俺の地位を奪い、とうとう俺を家から放逐させてしまう。
やった! 準備をしつつも諦めていた自由な人生が始まる!
俺はもう戻らないから、後は頼んだぞ!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる