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13. 第一領民発見!

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「あ~、だるいな~。暫くは地上に出ることが出来ないなんて退屈だよな~。」

「まったくだぜ。何でもお偉いさんが何かの調査に来ているらしいから、ここで働く領民達がそいつらに会うことが無い様に俺らに見張っとけって言ってたらしいぜ。」

「そんなのはこの入口に鍵をすれば終わりじゃねーか。アイツらは出てこれねーだろ。」

「お前、頭良いな!そうだよな!そうしようぜ。」

 柄の悪そうな男2人が笑いながら畑の近くにある小屋に穴に入って行った。

 鍵をかけるつもりか?そうなると出られなくなるな…。いったん出るか。しかしすぐそこにいつ出てくるか分からない男達がいる。今の俺の足では見つかればすぐに男達に追い付かれるよな。

 どうしたものかと悩んでいる間に男達が鍵らしき物をもってまた現れた。

「よし!酒でも飲んで楽しもうぜ~!」

「そうだな!ヒャヒャッ…」

 俺は2人に見つからないように暗闇に紛れて息を殺した。

 男達は俺に気がつかずに階段を上りだした。父さん達に連絡したいけどもう少し離れてからでないと見つかる危険がある。

 男達の姿が見えなくなってから父さん達に連絡を取った。

「お父様、今から男が2人出ていきます。どうやらここのドアに鍵をかけて出かけるようです。僕は暫くここにいることになりそうです。」

「何!出ることはできないのか?」

「無理です。男達に見つかります。他には見張りはいないみたいなので心配はいりません。お父様達はその男達をつけて話の内容を聞いてみて下さい。何か分かるかも知れませんからね。」

 お酒が入ると人は口が軽くなりやすいからね。

「分かった。気を付けるんだぞ!」

「はい。お父様達も気を付けてくたさいね。」

 魔道具の通信を切り、安全を確認しながらゆっくりと奧に進んで行った。

 明るいのは畑の周りたけで他は薄暗いな…。

「あなたは誰?」

 不意に横から女の子の声が聞こえてきて驚いた。

 声のした方を見ると俺と同じくらいの歳に見える女の子が立っていた。

 薄暗いから顔も良く見えないな…。

「あ、俺は変な入口が気になって冒険するつもりで入ってきたんだけど…。君こそここで何をしているの?」

「私達はここに住んでいるのよ。あなたは早くここから出た方が良いわ。ここは危険よ。」

「危険?どうして?」

 俺はわざと知らないふりをして彼女が何て答えるかを待った。

「ここは人に知られてはいけない場所だから…。ここはダメね、私の後についてきて」

 そう言うと彼女が一瞬俺の手を掴む為に光があたる場所まで出てきた。

 驚いた…。ものすごい美少女だ。

 薄い藤色の髪と大きな同じ色の瞳。肌は太陽に当たっていないせいか妖精か!と思うくらいに白い。いや、透けているようだ。

 姉さん達も美人だと思っていたが…姉さん達より美人だ。これを姉さん達に言ったら怒られるな…。

 俺は美少女に手を繋がたまま、暫く歩いた。

 すると土壁に木の扉がついている場所のまえで美少女は止まった。

「私よ、開けて。」

 中には誰かいるんだな。美少女は中にいる人に話しかけているようだ。

 扉が少し開き中から30代くらいの女性が顔だけ出した。

「ちょっ!その子どうしたの?早く中に入りなさい。」

 女性は慌てて俺達を扉の内側へと入れた。

「ここは…。」

 周りは土壁で作った棚が作ってあったり、台所らしきものがあるのが見える。部屋なのか?

「ここは私達の家よ。」

 美少女は先程の顔を覗かせていた女性の横に行った。彼女の母親なのかな。

「咲里(さり)説明してちょうだい。」

 どうやら美少女は咲里と言う名前らしい。

「畑の方に歩いて行ったらこの子が居たのよ。アイツらに見つかると危険だと思ったから連れてきたの。」

「アイツらには見つかっていないのね。」

「うん。多分だけど出かけたみたいよ。姿も無かったし声も聞こえなかったから。」

「そう…それなら大丈夫ね。」

 母親はホッとした様子で今度は俺に話を聞いてきた。

「それで、君はどうしてここにいるのかしら?」

「えーと、冒険です。」

 通用するかは分からないけど今の俺の歳なら考えられるよね。

「冒険?ここに?はぁ~。あなたのご両親はどうしたの?」

「大丈夫です。両親には言っているので。」

 何てたって父さん達と作戦をたてたんだからね。

 咲里の母親は俺の目線まで屈んで俺の顔を見た。

「貴女は…貴族様ね。こんな所に来ては行けません。危険ですからすぐに戻って下さい。」

 両腕をがっしり掴まれて揺さぶられる。気分が悪くなりそうだよ。

「それが…できないんです。さっき男の人達が扉に鍵をかけて外に遊びに行くって言っていたので、外には出られないかと…」

「はあ~、タイミングが良いのか悪いのか…。あの男達に見つかると何をされるか分からないので暫くここに隠れていて下さいね。タイミングを見て外に出られる様にしますから。」

 優しい人だな。自分達も俺が見つかると危険な目に合うだろうに…。

「フフフッ…。これで暫く一緒に居られるわね。私は咲里。貴女の名前は?」

「僕は竜です。」

「竜くん、少しの間一緒に遊んでくれる?」

 本当は調査しないといけないんだけど、美少女の誘いを断る訳にはいかないよな。

 あ…言っておくけど、俺はけっしてロリコンではないからね。だって今の俺は同じくらいの子供だからね。

 ただ少し…美人に弱いだけだからね。






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