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16. 解決!

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 ナラリー伯爵令嬢と会う約束の日が来た。時間通りに屋敷を訪れるが…ミカルの様子がいつもと違うのが気になりますね。

「ミカル、様子がおかしいけど何があったの?イタズラがバレたとか?」

 キュピナがミカルを心配して聞いていますが、キュピナらしい言い方ですね。

「違う!アイツが約束通りに来るのか心配してるんだ」

 アイツ…たぶん精霊王のことでしょうね。

「大丈夫よ。…たぶん」

 キュピナも断言できずに、苦笑いしています。ルーファは無言です。話しているうちにナラリー伯爵令嬢の姿が見えましたよ。

「お待たせしました。それで…どうなりましたか?原因はわかりましたか?」

 余程気になっていたのでしょうね。席に着くなり本題の話をされています。

「はい。まずはこちらに新たな人物をお呼びしても宜しいですか?」

 今まで黙っていたルーファがやっと口を開きました。新たな人物…精霊王ですね。

「…ええ。必要ならば…」

「では、姿をお見せください」

 ルーファが声をかけると目映いほどの光に部屋が包まれました。

「な、何?!」

 ナラリー伯爵令嬢が驚いて声をあげています。

 光が消えると共に姿を見せたのは、やはり精霊王です。

「貴方は…。昔…森でお会いした…」

 大きく見開かれた驚きの目が全てをものがたっています。

「ナラリー嬢、久しぶりだな。元気そうでなによりだ」

 精霊王は優しく微笑みかけています。ナラリー伯爵令嬢は顔を赤らめていますよ。確かに精霊王は綺麗ですからね~。見つめられるとたまりませんよね~。

「あの…どうしてこの方がこちらに?何か関係があるのですか?」

「はい。そもそもの問題はこの人にあったんです」

「え…それはどういうことですか?」

「実は…」

 ルーファが今回の説明を始めたが長いので要約すると…。

 精霊王はナラリー伯爵令嬢と出会ってから彼女の事が気になり成長を見守っていたらしい。そしてお年頃になった令嬢の婚約者達を調べて相応しくないと判断すれば排除していた…というのが今回のカラクリだそうだ。

 …一度会っただけの令嬢がそんなに気になるものなんでしょうか?私には理解しかねます。

 あ、でもナラリー伯爵令嬢は納得したみたいですよ。

「…そうだったのですね。精霊王様、今までお見守り下り感謝いたします。そして、またお会いできた事を嬉しく思いますわ。私もずっともう一度お会いしたいと思っておりましたの」

 精霊王とナラリー伯爵令嬢の距離が近づいていきます。

「私のしたことを許してくれるのか…」

 精霊王はまともに顔を見ることが出来ずにチラリとナラリー伯爵令嬢の顔を見ながら話してますね。威厳がなさすぎますよ~。

「はい。精霊王様は私の事を心配してくれたのですよね。」

「そうだが…それだけではない。実は…そなたは私の知っている人間の生まれ変わりなのだ」

 え?!何だか変な展開になってきてません?

「まあ、そうなのですね。…それで最初にお会いした時に懐かしい気持ちになったのかしら…」

 この令嬢…驚きませんね。マイペースなんでしょうか。

「宜しかったらいつでも我が家にお越しください。私もお待ちしています」

「え!良いのか?!」

 精霊王は嬉しそうです。精霊王がよく来るお屋敷…噂になれば大変なことになると思うのですが…。

「はい!これで原因は解決!仕事はこれで終了です!」

 キュピナが手を1つ叩いて仕事の終了を告げましたが、ミカルは納得していません。

「え?!良いのか?」

 ミカルの口を塞いでキュピナが部屋から出ていきます。ルーファが2人の後を追っています。

「お幸せにね」

 キュピナは2人に向けて言ったようですが、当の2人が話に夢中で聞いていません。

 屋敷を出て馬車に乗り込むとミカルがキュピナに怒っています。

「新しい婚約者を紹介しなくて良いのか?!」

「あんた…本当に天使だったの?精霊王の眼差しは愛する人を見る眼差しだったでしょ。それにナラリー伯爵令嬢も初恋の人は精霊王だって言っていたから、ほっておいてもそのうちに結ばれるわよ」

 ミカル…わかっていなかったんですね。

「これで1つ問題解消&縁結び終了よ!天界に帰れる日が近づいたわ!」

 嬉しそうに笑うキュピナの前で冷静に見ているルーファ。温度差がありますがルーファも喜んでいるんでしょうかね?私にはわかりません。

 まあ、取り敢えずゼウス様に報告だけはしておきましょう。



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