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33. 侍女イルラの楽しみ 〈イルラ視点〉
しおりを挟む屋敷の大広間に使用人達を全員集合させるようにとアデル様から頼まれた。
「いったい今から何があるのですか?」
「今までこんな事は無かったですよね」
「考えられるのはサファル様のことでしょうか?」
「まだ、お生まれになったばかりですが全然お泣きになりませんし…普通の赤ちゃんとは少しちがいますよね…」
「これ!勝手な臆測で話をしてはいけませんよ!」
「はい、申し訳ありません。イルラ様…」
屋敷の使用人達は今までに無かったことなので不安に思っているようだ。
「待たせたな…」
アデル様がサファル様を抱いて部屋に入って来られた。
「集まってもらって感謝する。今日はこれから大事な話をしたいと思うのだが…これから話す事を必ず秘密にしてもらいたい。それができないと言うならすぐに解雇の手続きをする。もちろん、こちらの都合で辞めさせるので今までの給金と少し手当てを足す。皆…どうだ?」
「「「………」」」
誰も部屋を出て行きませんでした。
元々、この屋敷の使用人達は仲が良く待遇も良いので辞める者はほとんどいません。
辞めるのは結婚するとか親元に帰らないといけなくなったなどの理由くらいだ。
皆、思うことはあるかも知れないが何も言わずにアデル様を見ていた。
「ありがとう…。皆を信じる。今日、集まってもらったのは我が息子サファルについてだ…」
皆が少しざわついております。
やはり…といった感じですね。
「サファルは皆が知っている赤ん坊とは少し違う…実は神の御告げがあり神の力を頂いている」
「「「「「え!!??!!」」」」」
これは私も驚きです。
アデル様の時も早くからアフロディーテ様の加護などを頂いておりましたが…。
アデル様よりも早く生まれた時からですか…。
「あの…具体的にはどういう…」
執事のバルダがアデル様に聞いています。
「…実は、サファルは皆の話す言葉を理解しているし話せる」
「「「「「ええ!!!」」」」」
お話ができる?
会話できるということですか?
「驚くのも無理ない…。サファル、皆に挨拶しなさい」
「はい。みなしゃん、よろしくおねがいしましゅ」
「「「「「えええ!!!!!」」」」」
皆が大声をあげて固まってしまった。
本当にサファル様がお話になられました。
しかも、可愛らしいお声でたどたどしく…。
何て愛らしいのでしょう!
「理解してもらえると思うが…この事が世間に知られてしまうと大変な事になるのは想像がつくだろう。だから秘密にしてほしいのだ」
なるほど、そういうことでしたのね。
暫く使用人達は動揺していましたが、口火をきったのはバルダでした。
「お任せください!サファル様を必ずお守りします!」
「…そうね」
「…そうだ」
皆が口々にバルダの意見に賛成し始めた。
「「「必ず秘密にし、サファル様をお守りします!」」」
何やら連帯感みたいなのが生まれたみたいですね。
これからが楽しみになってきました。
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