上 下
23 / 54

23. 女王陛下の提案 〈サファイア視点〉

しおりを挟む


「私が今日ここに来たのは…このお腹の子を神様からのお告げの子として発表しようかと思っているの」

女王様が私のお腹を触りながら言った。

「どうしてですか?」

「サファイアも知っているようにこの国でのアデルちゃんの立場は弱い…。今だに王に相応しくないと言ってくる貴族もいる。残念だが、いつまた王族を巻き込んだ争いが起きるかも分からない状態なのだ。そこで、これ以上争いがおきないようにアデルちゃんの地位を確かにする必要があるの…」

それは分かります。

アデル様のお父様が神様だということはトップシークレットだ。

この国の貴族の中には貴族ではないから父親を明らかにできないのだろうと言う人達も今だにいるのは知っている。

「それと、この子とどう関係するのでしょうか?」

女王様の表情が少し緩んだ。

「父親がアデルちゃんに言った話を聞いたかしら?」

「はい、この子がこの国の偉大な王になる…と言われたのです」

「そう、それをそのまま国民に伝えようと思っているの」

あっ…そうか。

「分かりました、王になる子供を授かったのは親が王様だからだと言うおつもりなのですね…」

女王様は笑顔で頷いた後、お茶わ一口飲まれた。

「理解してもらえて良かった…。たぶんアデルちゃんは家族を危ない目に合わせたくないとか言って反対すると思うの、だから先に貴女に言った方が良いと思ってね」

「そうですね…、アデル様ならきっと反対されると思います。あっ…」

私はお腹を擦って会話を止めてしまった。

「大丈夫か?」

女王様が心配して側に来て下さった。

「大丈夫です。その…サファルが私に話しかけてきたものですから…」

「何?!何と言ってきたのだ」

「『ぼくがおかあさまもまもるよ』と言ってきました」

「ハハハ…頼もしい孫だな!」

女王様が声高に笑いながら私のお腹を触っている。

そこに猛スピードでアデル様がやって来た。

「ハアハア…一体何をしているのですか?」

肩を揺らし息を荒くしてアデル様が女王様を睨んでいる。

「仕事はどうしたのだ?」

確かに…お仕事がたまっていると言ってましたよね。

「片付けてまいりました」

息を整えたアデル様がどうだ!と言わんばかりに胸を張って言っている。

「はあ~、そんな事ができるなら何故普段からやらないのだ…」

その通りですね…。

「今回は緊急事態なので…。いつもはできません」

アデル様は私の所にやってきて、お腹を触っていた女王様の手を払いのけた。

「アデル様…?」

「お前は本当に心の狭い男だな…。母親にも触らせたくないのか?」

アデル様は私をきつく抱きしめて何も言わずに頷いている。

「はあ~…、もう話しは終わったからこれで帰るとするよ。サファイア身体に気を付けてな…」

「はい、ありがとうございます」

さあ、後はアデル様に何と伝えるか…だよね。





しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

絶対に間違えないから

mahiro
恋愛
あれは事故だった。 けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。 だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。 何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。 どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。 私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。

この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。

鶯埜 餡
恋愛
 ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。  しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

女神様、これからの人生に期待しています

縁 遊
ファンタジー
異世界転生したけど、山奥の村人…。 普通は聖女とか悪役令嬢とかではないんですか? おまけにチートな能力もなければ料理も上手ではありません。 おかしくありませんか? 女神様、これからの人生に期待しています。 ※登場人物達の視点で物語は進んでいきます。 同じ話を違う人物視点で書いたりするので物語は進むのが遅いです。

骸骨と呼ばれ、生贄になった王妃のカタの付け方

ウサギテイマーTK
恋愛
骸骨娘と揶揄され、家で酷い扱いを受けていたマリーヌは、国王の正妃として嫁いだ。だが結婚後、国王に愛されることなく、ここでも幽閉に近い扱いを受ける。側妃はマリーヌの義姉で、公式行事も側妃が請け負っている。マリーヌに与えられた最後の役割は、海の神への生贄だった。 注意:地震や津波の描写があります。ご注意を。やや残酷な描写もあります。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

わたしは婚約者の不倫の隠れ蓑

岡暁舟
恋愛
第一王子スミスと婚約した公爵令嬢のマリア。ところが、スミスが魅力された女は他にいた。同じく公爵令嬢のエリーゼ。マリアはスミスとエリーゼの密会に気が付いて……。 もう終わりにするしかない。そう確信したマリアだった。 本編終了しました。

処理中です...