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12. ありがとうサファイア

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サファイアが倒れた…。

頭の中が真っ白になった。

「サファイア…」

先に動いたのはお義兄さんだった。

僕もお義兄さんの後を追うようにサファイアのいる部屋に急いだ。

部屋の前には執事のバルダがいて今はベッドで横になっていると教えられた。

「医者は!医者は呼んだのか?!」

僕はバルダを問い詰めた。

「勿論でございます。主治医を今呼びに行かせています。近くですのですぐに来るかと思いますがそれまではお静かにお待ちください」

静かに待て…?

大切な大切な僕のサファイアが倒れたのに…。

サファイアの顔を見ないと落ち着かないだろ。

この気持ちはお義兄さんも同じらしくバルダにサファイアに会わせてほしいと言っている。

「サファイア様は気持ちが悪いと言われて倒れられました。今は落ち着かれて横になられていますが人が入ると気を使われる方ですので起きてしまわれるかと心配なのです…」

バルダもサファイアを心配しているんだな。

サファイアは屋敷の使用人達にも優しく皆から慕われている。

屋敷の他の使用人達も心配している様子が見られる。

「お医者様を連れて来ました!」

使用人がやっと医者を連れて来たみたいだ。

「こちらでございます。早く中へ」

医者は急かされながらサファイアのいる部屋の中に入っていった。

数分が長く感じる。

サファイア…大丈夫だよね。

神様…いつも邪魔だなんて言ってすいません。

反省していますから、どうかサファイアをお助け下さい。

今度からお茶会も文句を言いません。

美味しいお茶菓子も用意しておくようにします…だからお願いします。

僕が神様に祈りを捧げていると部屋から医者が出てきた。

「サファイアは大丈夫なのか…!」

僕は大丈夫だと言ってくれ!と祈りながら聞いた。

「殿下おめでとうございます」

医者は満面の笑みで答えた。

「「は?」」

僕とお義兄さんは緊張が解けて同時に声をあげていた。

「おめでたでございます」

「「へ?」」

おめでた?

「子供が出来たのか…」

お義兄さんがポツリと呟いた。

僕とサファイアの子供…。

僕が父親…。

「「「おめでとうございます」」」

屋敷の使用人達がいつの間にか並んでいる。

みんなが喜んで涙している者もいる。

お義兄さんも泣いている。

僕は急いで部屋に入った。

ベッドに横たわっているサファイアと目が合った。

「サファイア…」

「アデル様…」

サファイアは目に涙を貯めて僕を見つめる。

僕はそっと体を起こしたサファイアを抱きしめた。

「体調悪くないかい?大丈夫?」

「もう大丈夫です。ご心配を、おかけしました…」

僕はサファイアの涙を指で拭いた。

そして、瞼にキスをした。

「ありがとうサファイア…」






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