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8. まさかですね
しおりを挟む回りは小さなお店が集まっている。人通りも悪くないしお店が面している道も広く馬車も通っている。我ながら良い場所を選んだのかもしれません。
クロード様の本屋はそんなお店が集まった通りの端にある。店構えは…少し変わってますね。私が作った時はこんな店構えではなかったはずですが…?
私がクリエイトした時はこの世界に馴染むようなお店にしていたのですが今目の前にあるお店は何と言うか…ヨーロッパ調の建物になっています。レンガなんてどこから手に入れたのでしょうかと気になってしまいます。
まあ、御本人に聞いた方が早いですね。
私は本屋の扉を開けてお店の中に入りました。
「こんにちは~。」
お店の中は大きなテーブルがいくつかありその上に本が並べられています。
おかしいですね?確かに本棚をご用意させていただいたのですが…。
お店をクリエイトした時に本棚も必要だろうと思い沢山クリエイトしてお店の中に入れていたのですが見当たりません。
「……。」
クロード様の声も聞こえませんね。お店の中にはいらっしゃらないようですね。
この店は手前に店舗、奥に自宅という造りにしています。どうやらクロード様は奥の自宅にいて私に気がついていない様子です。こんなことで商売は上手くいっているのでしょうか。
バタバタ!
「…すいません!お待たせしました。あれ?」
やっとクロード様がお店に顔を見せました。
「お久しぶりです、クロード様。」
久しぶりにお会いするクロード様は鼻の下にお髭をはやされていて人相が以前と少し違うように見えます。
「あっ、やっぱり!あの時の人だ。今日はどうしたんですか?」
そう言えば様子を見に行く事をお伝えしていませんでしたね。
「いつも異世界転生していただいたお客様の様子を見に行く事にしているんです。何かお困りの事はありませんか?」
クロード様は私の話を聞き終わると少しもじもじと身体を動かされています。何でしょうか。
「あの~、実は本棚が足りなくて…。」
おや?本棚は店舗の方にありませんでしたよね。大きなテーブルの上に本が置かれていましたよね。本棚はどこにあるのでしょうか?
「お店には本棚はありませんでしたよね?」
「そうなんですが…。本棚は自宅で使ってます。」
やはり自宅で使われていたのですね。そんなに本がお好きになったのですね。
「中に入って見てください。」
扉を開けて部屋の中に招かれました。チラッともう本棚が見えています。ん?
「…実はあれから日本のマンガにはまってしまって。あんな面白い物をなぜ読んで無かったのかと今は思ってます。」
まさかあれからこれ程にマンガにはまられているとは思いませんでした。壁一面に本棚が並べられて中にビッシリとマンガが入れられています。
「わかりました。本棚をまたお渡ししますね。ですが本業の本屋には本棚を使わなくて良いのですか?」
今の並べ方だとあまり種類を置けないと思うのですが経営はできているのでしょうか?心配ですね。
「大丈夫だ。この本屋に来る人は珍しい本が欲しくてやってくる。あまり沢山置いても価値がさがるから少ない方が良い。一冊の値段を高く設定しているから商売もなりたつしね。何より整理するのも楽で良い。ハッハッハッ。」
明るい外国の方という雰囲気は残っていらっしゃいますね。まぁ、商売も上手くいっているようですし、この生活も楽しんでいらっしゃるみたいで安心しましたよ。
「お姿を見て、様子を聞いて安心しました。では帰ってすぐに本棚をクリエイトして送りますね。」
「ありがとう!宜しく頼む。」
凄い笑顔ですね。そんなに本棚が欲しいと思っていたのですね。ちょうど訪問して良かったです。
私はクロード様の本屋を出た。クロード様はお店の表まで出て見送ってくれています。
「またいつでも来てくれよ。いつでもウェルカムだ。」
「ありがとうございます。それでは今度は本棚をお持ちしますね。」
クロード様の目が輝きました。
「待ってるよ!」
私の姿が見えなくなるまでクロード様は「本棚を頼むよ~。」と叫ばれていました。
これは早いうちに再訪問となりそうです。
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