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23. キスの痕跡 (R)注意報
しおりを挟む「あの…賢人さん。」
「ん?」
「夕飯の準備をしたいのですが…。」
「うん。」
「離していただけませんか…。」
「…無理かな。」
今、私はリビングのソファーに座っている賢人さんの膝の上に座らされて賢人さんに抱きしめられています。
なぜこんな事になったのかと言うと…。
10分程前に賢人さんがお仕事から帰ってきたんです。私はその時、夕食の準備をしていたのですが…。
「菫ちゃん、ちょっとこっちに来てくれる?」
帰宅した賢人さんがリビングから私を呼んだので私は手を止めて賢人さんの元に行きました。
リビングに行くと賢人さんがソファーに座り、私を見つけて手招きしています。
近づくといきなり手を引っ張られて賢人さんの上に座る様な態勢になってしまいました。
「ごめんなさい。バランスを崩してしまって…。すぐに退きますね。」
私は顔を赤くしてバタバタと動きました。…が賢人さんは私を膝の上から下ろそうとしてくれなかったのです。
そして最初に戻ります。
「…菫ちゃん、これを君に貰って欲しい。」
賢人さんが左手で私を抱きしめて私から離した右手で私の目の前に細長い小さな箱を出してきました。
「何ですか?」
賢人さんは優しく笑って私を見つめています。
でも、今日は私の誕生日でもなければ何かの記念日でもなかったはずですなのですが。
「菫ちゃんは色んな人からの誘惑から守るために特別に作ってもらったんだ。箱を開けて見てくれる?」
誘惑から守る?ですか。なんでしょうか。
私がストーカーに襲われてから賢人さんは私の前でストーカーという単語を言わなくなりました。その代わりになぜか"誘惑"と言うようになったのです。気になりますが、理由はまだ聞けていません。
私は賢人さんの言葉を気にしながらも渡された箱を開けました。すると中にはアンティーク調のロケット型ペンダントが入っていました。
ロケットの中を開くと賢人さんの写真が入っています。…これが誘惑から守る為に作った物?
頭の中はハテナマークだらけです。
「それはただのペンダントではないよ。それには小さな発信器が内蔵されているんだ。」
ん?今…の聞き違いでしょうか。発信器と聞こえた様な…。
「気のせいでしょうか?発信器と聞こえてしまいました。」
私が首を傾げながら賢人さんを見ると先程と変わらず優しく微笑む賢人さんの顔があります。
「気のせいではないよ。」
「え?!」
沈黙の時が流れます。
「菫ちゃんが誘惑に負けて、外に出て帰って来られなくなった時に僕がすぐに菫ちゃんを見つけることができるようにと作らせたんだ。」
賢人さんはペンダントを箱から出して私の首に着けました。そして優しく私の首筋にキスをしています。そのキスはだんだんと違う場所にも広がってきています。
「け、賢人さん!?」
私はくすぐったいやら、恥ずかしいやらで賢人さんの腕の中から逃れようとまた身体を動かしますが賢人さんの腕は動きません。
「本当はね…菫ちゃんを家の中に閉じ込めて危険な目に会うことが無いようにしたいんだ。だけどそれをすればアイツ達と変わらなくなってしまう。だから…これは僕なりの譲歩なんだ。菫ちゃんには自由にしてもらいつつ僕の心配を減らす為に…。」
それだけ言うと賢人さんは私をお姫様抱っこして寝室まで運び、ベッドの上に優しく私を寝かせました。
「…賢人さん?」
寝かされた私を覆うように上から賢人さんが抱きしめてきます。私の胸の辺りに顔を当てて動かなくなりました。
「菫ちゃんの心臓の音が聞こえる。安心するよ…。入院した時はもうこの音を聞けないかもしれないという恐怖に襲われたからね…。」
そんなに心配をかけていたのですね。
「これは何があっても自宅以外では外さないで。」
賢人さんがペンダントを手に取り緊張したような真剣な顔をして私をまっすぐに見ています。
それで賢人さんの不安が取り除けるなら…。
「…はい。分かりました。」
私の言葉を聞いた途端に賢人さんの顔が緩みます。
「菫…。」
賢人さんが優しく私の頬に触れて顔を近づけてきて…。
私に触れている手とは違う、激しいキスをされています。
何度も角度を変えながらも私の唇から賢人さんが離れる事はありません。あまりの激しさに私は息継ぎのタイミングが分からなくて苦しくなってきてしまいました。
「菫…鼻で息をするんだよ。良い子だから…。」
やっと私の唇から離れた賢人さんが私の鼻にキスをしながら手際よく私のエプロンや服を脱がしていきます。先程までの激しいキスのせいか頭の中がボーとしています。
気がつけば賢人さんも私も何も着ていない状態になっていました。賢人さん、手際良すぎません?!
賢人さんは私の身体の隅々にキスをし始めました。手先や足の先まで…。
「そんな所は汚いから止めて下さい…。」
恥ずかしすぎて顔を覆いながら抗議しましたが聞き入れられず…。
「菫に汚い所なんて無いよ。」
賢人さんはそう言いきると、今度は私を打つ伏せにして背中にもキスをしています。
「ごめんね。こんな傷を残してしまって…。」
ストーカーに切られた傷跡に繰り返しキスをしています。
「ひゃ…!」
思わず変な声をあげてしまいました。だって賢人さんがいきなり傷口を舐めたんですもの。
「動物みたいに舐めて直るならずっとしてあげるのに…。」
今の賢人さんならやりかねないですわ。ボーとしていた頭が少しハッキリしてきました。
「…賢人さん。夕食は…。」
「ここでそれをまだ言うの?」
賢人さんは少し笑いながら、また私の唇にキスをしてきました。
「今は菫が先だよ。」
私の顔が真っ赤になったのは言うまでもありません。
結局、私が目を覚ましたのは次の日のお昼を過ぎた頃でした。
明るい日の光の中で見る私の全身には賢人さんの残した沢山のキスの痕跡あり、それを見て私の顔がまた真っ赤になったのは理解してもらえますよね。
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