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4. もしかして…?
しおりを挟む「元気そうじゃない。肌の艶も良くて羨ましいわ~。」
こう話しているのは、フランス人で生物学上では男性だけど心は女性の私のいとこのルカです。今日は久しぶりに日本に戻ってきたので私の顔を見に来てくれました。
「そういうルカこそ、お肌が綺麗になっているみたいだけど…彼とは上手くいっているみたいね。」
「やだ!菫ってば言うようになったわね~。やだ~。」
以前は日本で私のスタイリストとして働いてもらっていたのですが、フランスに里帰りした時に運命の出会いがあったらしく、そのまま帰って来ませんでした。
「でも、ルカは幸せなんでしょう?」
「ウィ。」
頬を赤らめながら恥ずかしそうに答えるルカはとても可愛らしく見えますわ。以前にメールで彼の写真を送ってもらいましたがモデルをしているだけあってイケメンさんでした。
「彼には何て言って日本に来たの?」
ルカが身体をくねくねさせながら頬を赤らめています。
「…実はね、彼も日本に来ているの。その…仕事でね。それに私がついて来たって感じなの。」
ルカってば、私にはそのついでに会いに来たんですね。
「ルカが幸せそうで嬉しい。」
「菫…。」
しんみりしちゃいますね。だって以前のルカは恋人とも長続きせず悩んでいましたから。ご両親とも上手くいっていませんでしたし。
「菫もね。まさかあの菫がこんなに早く結婚するとは思っていなかったわよ。男性恐怖症はいつ治ったのよ。」
そうなんですよね。それは私も不思議なんです。賢人さんと付き合うようになってから男性恐怖症がいつの間にか治っていたんですよね。
何故なのか私が知りたいくらいです。
「本当に不思議よね…。」
私がそう呟くとルカは呆れる様な顔をしました。
「その天然ぶりは変わらないのね…。まあ、変わらなくて安心したわ。」
ルカと楽しいティータイムを過ごしていたら自宅のインターホンが鳴りました。
「あら?旦那が帰って来たの?」
「いえ、今日は賢人さんから遅くなると聞いていたので違うかと…。」
時間は17時を少しまわったところです。いつも早くてもこんな時間には帰って来ませんよ。
誰だろう?と映像を見ると知らない人でした。
茶髪で一重の目の眼光鋭い感じの人。
宅配?セールス?誰だろう?
とりあえず…返答する。
「はい。」
「あっ、島岡さんの奥さまですか?会社でお世話になっております、田村と申します。」
田村さん?賢人さんから聞いたことない名前ですね。
「はい…。」
「島岡さんが会社にお忘れになっていた書類をお届けにやって参りました。」
「そうなのですね、申し訳ありません。今、開けますからお入り下さい。」
私はマンション玄関のロックを解除した。
「誰だったの?」
ルカが心配して聞いてくる。
「賢人さんの忘れ物を会社の人が届けに来てくれたみたい。」
「え?忘れ物を…。そんな事があるのね。」
ルカは腑に落ちない所があるみたいです。
暫くすると自宅のインターホンが鳴りました。田村さんが来たのでしょう。
「はい。すぐに出ます。」
インターホンで対応してから玄関に行きました。
「お待たせしました。」
ドアを開けると田村さんが書類を手に持って立っていた。
「……。」
「あの…どうかされましたか?」
田村さんは無言で立ったまま動かなかった。バサッと手にしていた書類が床に落ちた。その音に反応したように田村さんの顔が真っ赤になった。
「…す、すいません。」
封筒から書類が出てしまっているのを集めようとかがんだ。私もお手伝いしようかと書類を手にしておかしな事に気がついた。
「真っ白…?」
床に散らばっている書類には文字も写真もなく真っ白なのだ。この書類が重要?
「あ…、も、申し訳ありません。書類の中身を間違えて持ってきてしまったみたいです。すぐに取り替えて来ます!」
それだけ言うと田村さんは落ちていた書類を素早く集めて、足早に去ってしまった。
「何だったのかしら…。」
何だかこれって以前にも経験があるような…。
胸の奥のモヤっとするものを感じながらもルカが待っているので部屋に戻った。
「どうしたの?」
私は、リビングで待っていたルカに今の事を話した。
「それって…前のストーカーの時と似てない?」
「え?」
そうだわ。先程、モヤっとしたのはそれね。
「ほら、宅配業者を装って家に来た奴がいたでしょ!早く、旦那に相談した方が良いわよ。」
そんな事があったのを思い出しました。
あれは独身時代の話です。賢人さんともまだ付き合っていない時だったと思います。
一度だけ、お手伝いの静さんがいない時に地味活動メイクをせずに宅配物を受け取ったことがあったのですが、それからやたらと宅配間違いが多くて…。不思議に思ってルカに相談したのです。
ルカはすぐに調べてくれて、その間違いがわざとだと分かったのです。
最初に配達に来てくれた人が私に会いたいから、わざと間違えて宅配していたらしいです。その時に持って来ていた荷物は自分で自作した空の箱で、連絡も自分の個人携帯にかかってくるようにしていたそうなんですよね。
まさか…その時と同じ?
賢人さん…早く帰って来ないかしら。
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