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夏休みに入り地元に戻ってきた。和也と翔の家は電車で一駅しか離れていないので比較的簡単に会える。
夕方に着くようにして帰ってきた。
「ただいま」
自分で持っていた鍵を使って扉を開けて入る。
「おぅ帰ってきたかクソガキ」
「は?」
家には誰もいないと思っていたが…居た…。
俺の母親皆川佳子(ミナガワ ヨシコ)が…。
「何でいるんだよ…?仕事じゃねえのか?」
「自分の可愛い子供が帰ってくんのに仕事してられねぇだろ?」
真っ黒な髪をロングに伸ばし切れ長の目でこちらを睨んでくる。身長も170とデカイ。
歳なんてないものだ。
全然若く見られる。俺と同じ場所にある泣き黒子が親子だと語っていた。
俺の母親は仕事が出来る人間らしい。俺には兄弟も父親も居ない。父親の事は教えてもらってないがこの母親は一人で稼ぎ俺を養ってあんな良い学校にまで通わせてくれる。
しかし…性格が悪い。口が悪い…暴力は当たり前…。
それでも外面は良いので仕事は増える一方だ。
こんな立派な一軒家にも住める。ありがたい事だが俺は実の母親が若干苦手だった。
「まぁ…帰ってきたんだ。今日くらい一緒に飯でも食おうぜ」
「まぁ…良いけどな。何処行く?」
「剛の好きなイタリアン!予約したゼェ!スーツ着てなっ!イケメン側に置いて楽しむぞー」
この人は何時もそうだ。俺が成長期を迎えて見れる様になってから頻繁に外に連れ出し外野に自慢する。仕事仲間と会った時などもっと酷い。自慢で顎が上がりすぎている。
まぁ慣れたから良いけどな。イタリアン…滾る。
「はぁ…俺少し身長伸びたからスーツサイズ合うか?」
「そう思って新調してきたぜっ!」
いきなり走り去ってクローゼットから真新しいスーツを出してきた。黒にガンメタのストライプが入っている。中々に攻めたスーツにドン引きする。
「これ?嫌だ。だったら制服で行く」
「ダメに決まってんだろ?幾らしたと思ってんだ。着ろ」
結局強制だ…。はぁ…。仕方ない…イタリアンが呼んでいる。母親からスーツを受け取り準備する。
あっちも準備するんだろう鼻歌を歌いながら準備していく。
暫くして俺が着替えてまってると真っ赤なドレスに紺のボレロを肩にかけ、真っ赤な口紅を色っぽく塗りたくった母が入ってきた。気合が凄いな…。
「んーなんかたりねぇ…。髪いじるか?」
俺を化粧台に座らせ髪を弄る。ワックスを撫でつけ伸びてきた髪の毛先を遊ばせ俺の眼元が良く見えるようにセットした。
「よし良い男になったな…ちゃんとエスコートしろよ?」
分かっている。小さい頃からそういう類のマナーは嫌と言うほど教えられてきた。
「わかってるよ。その変わり嫌と言うまで食うからな」
「そんなの分かってんだよ。さて…行きましょうかね」
女の顔になる俺の母親…。外につけているタクシーで高級ホテルに入ってる有名店に向かう。
予約をしていたからか入り口で支配人が直接案内してきた。俺は母親の手を取りエスコートして席に向かう。その席を見てビビった。
真ん中のステージにグランドピアノが置いてある。
その正面の特等席…。
そんなにも目立ちたいのかこのババァ。
グッと堪えて母親を連れて行く。支配人が椅子を引くのをやんわり断り俺が母親を座らせる。
入り口から俺達を見ていた他の客は息を飲んで見ている。この時ばかりは俺も実感する。学校は他のイケメンが腐るほど要るが外に出れば俺も少しは映える顔をしているらしい。
そしてゆっくり座り二人向き合う…高級な恋人同士の雰囲気をババァが出してくるので視線を集めたいだけ集めていた。
はぁ…と溜息が出るが表情は笑っている。食事に陰湿な空気は要らないのだ。
「ここ結構良い線いってるな…ちゃんと素材が旨い」
「ふふっ…そうでしょう?剛に食べさせたくて一生懸命探したの」
言葉使いが変わって上目遣いでワインを飲む。俺はその味をしってる。美味しくは無いぞ…。
「いつもありがとう…」
二人で微笑み合いながら高級イタリアンを食べる。メインを食べコースが終わる。母親は専ら飲み専なので俺はまたメニューを貰い何にしようと悩んでいたが不意に声がかかる。
「失礼…っ!やっぱり…剛?」
顔を上げて驚愕した。
「翔?どうして…っ!」
また後ろを見て驚愕。学校の理事長が立っていた。
「お前っ…失礼少しお借りしても良いですか?すみませんっ理事長こちらの女性の相手をお願いしても良いですか?」
「構わないよ…。すみません。少しお邪魔しても大丈夫ですか?」
「えぇ…こんな素敵な方と御一緒出来るなら嬉しいです」
二人がそんな会話をしてる中で俺は翔に手を引かれロビーのカフェエリアの椅子に座らせられる。
「おいっ…いきなりなにすんだっ俺っまだ食ってた…」
「てめぇ…夏休み早々浮気してんじゃねえよ…あんな美人俺見た事ねぇぞ」
「バカ言ってんなよ!ありゃ俺の母親だ」
「嘘つけ!お前を産んであんなに若いわけねぇだろ」
「あれで三十後半だバカタレ」
「はぁ?マジかよ…」
「つーか帰って見てみろ。俺と同じ場所に泣き黒子あるから」
「マジかよ…すげぇ動揺したじゃねぇか…」
翔が落ち着いたみたいだった。改めてお互いの格好を見て二人で気まずくなる。
翔は黒の艶の有るスーツを着ていて黒地に青いペイズリーのネクタイをしていた。
何時もは流してセットしてる髪も今はゆるいオールバックの様にセットしている。
男前振りが上がりすぎた…少し興奮してしまう…。が!今は食事だ。
「ってか戻ろうぜ!俺まだ食いてぇんだ」
「あぁ…こうやって見ると剛イメージが少し違うから興奮するな…髪の分け目が違うから眼の下の黒子がよく見える。やっぱり髪伸びたな…」
翔が黒子を指で摩る。周りの女性から溜息が出る…。恥ずかしい…そんな眼でみるなよ。
レストランに戻るときに話を聞いた。翔の親父の事業が食品関係の仕事でそれの仕事を高一から手伝ってるそうだ。今日理事長と居たのは理事長が学校以外の事業で翔の家と一緒に仕事をする為の話し合いをしていたらしい。
そこに俺が居てビックリしたと…。俺だってそうだ。
そして席に戻る。この二人の雰囲気にも周りは驚愕している。
夕方に着くようにして帰ってきた。
「ただいま」
自分で持っていた鍵を使って扉を開けて入る。
「おぅ帰ってきたかクソガキ」
「は?」
家には誰もいないと思っていたが…居た…。
俺の母親皆川佳子(ミナガワ ヨシコ)が…。
「何でいるんだよ…?仕事じゃねえのか?」
「自分の可愛い子供が帰ってくんのに仕事してられねぇだろ?」
真っ黒な髪をロングに伸ばし切れ長の目でこちらを睨んでくる。身長も170とデカイ。
歳なんてないものだ。
全然若く見られる。俺と同じ場所にある泣き黒子が親子だと語っていた。
俺の母親は仕事が出来る人間らしい。俺には兄弟も父親も居ない。父親の事は教えてもらってないがこの母親は一人で稼ぎ俺を養ってあんな良い学校にまで通わせてくれる。
しかし…性格が悪い。口が悪い…暴力は当たり前…。
それでも外面は良いので仕事は増える一方だ。
こんな立派な一軒家にも住める。ありがたい事だが俺は実の母親が若干苦手だった。
「まぁ…帰ってきたんだ。今日くらい一緒に飯でも食おうぜ」
「まぁ…良いけどな。何処行く?」
「剛の好きなイタリアン!予約したゼェ!スーツ着てなっ!イケメン側に置いて楽しむぞー」
この人は何時もそうだ。俺が成長期を迎えて見れる様になってから頻繁に外に連れ出し外野に自慢する。仕事仲間と会った時などもっと酷い。自慢で顎が上がりすぎている。
まぁ慣れたから良いけどな。イタリアン…滾る。
「はぁ…俺少し身長伸びたからスーツサイズ合うか?」
「そう思って新調してきたぜっ!」
いきなり走り去ってクローゼットから真新しいスーツを出してきた。黒にガンメタのストライプが入っている。中々に攻めたスーツにドン引きする。
「これ?嫌だ。だったら制服で行く」
「ダメに決まってんだろ?幾らしたと思ってんだ。着ろ」
結局強制だ…。はぁ…。仕方ない…イタリアンが呼んでいる。母親からスーツを受け取り準備する。
あっちも準備するんだろう鼻歌を歌いながら準備していく。
暫くして俺が着替えてまってると真っ赤なドレスに紺のボレロを肩にかけ、真っ赤な口紅を色っぽく塗りたくった母が入ってきた。気合が凄いな…。
「んーなんかたりねぇ…。髪いじるか?」
俺を化粧台に座らせ髪を弄る。ワックスを撫でつけ伸びてきた髪の毛先を遊ばせ俺の眼元が良く見えるようにセットした。
「よし良い男になったな…ちゃんとエスコートしろよ?」
分かっている。小さい頃からそういう類のマナーは嫌と言うほど教えられてきた。
「わかってるよ。その変わり嫌と言うまで食うからな」
「そんなの分かってんだよ。さて…行きましょうかね」
女の顔になる俺の母親…。外につけているタクシーで高級ホテルに入ってる有名店に向かう。
予約をしていたからか入り口で支配人が直接案内してきた。俺は母親の手を取りエスコートして席に向かう。その席を見てビビった。
真ん中のステージにグランドピアノが置いてある。
その正面の特等席…。
そんなにも目立ちたいのかこのババァ。
グッと堪えて母親を連れて行く。支配人が椅子を引くのをやんわり断り俺が母親を座らせる。
入り口から俺達を見ていた他の客は息を飲んで見ている。この時ばかりは俺も実感する。学校は他のイケメンが腐るほど要るが外に出れば俺も少しは映える顔をしているらしい。
そしてゆっくり座り二人向き合う…高級な恋人同士の雰囲気をババァが出してくるので視線を集めたいだけ集めていた。
はぁ…と溜息が出るが表情は笑っている。食事に陰湿な空気は要らないのだ。
「ここ結構良い線いってるな…ちゃんと素材が旨い」
「ふふっ…そうでしょう?剛に食べさせたくて一生懸命探したの」
言葉使いが変わって上目遣いでワインを飲む。俺はその味をしってる。美味しくは無いぞ…。
「いつもありがとう…」
二人で微笑み合いながら高級イタリアンを食べる。メインを食べコースが終わる。母親は専ら飲み専なので俺はまたメニューを貰い何にしようと悩んでいたが不意に声がかかる。
「失礼…っ!やっぱり…剛?」
顔を上げて驚愕した。
「翔?どうして…っ!」
また後ろを見て驚愕。学校の理事長が立っていた。
「お前っ…失礼少しお借りしても良いですか?すみませんっ理事長こちらの女性の相手をお願いしても良いですか?」
「構わないよ…。すみません。少しお邪魔しても大丈夫ですか?」
「えぇ…こんな素敵な方と御一緒出来るなら嬉しいです」
二人がそんな会話をしてる中で俺は翔に手を引かれロビーのカフェエリアの椅子に座らせられる。
「おいっ…いきなりなにすんだっ俺っまだ食ってた…」
「てめぇ…夏休み早々浮気してんじゃねえよ…あんな美人俺見た事ねぇぞ」
「バカ言ってんなよ!ありゃ俺の母親だ」
「嘘つけ!お前を産んであんなに若いわけねぇだろ」
「あれで三十後半だバカタレ」
「はぁ?マジかよ…」
「つーか帰って見てみろ。俺と同じ場所に泣き黒子あるから」
「マジかよ…すげぇ動揺したじゃねぇか…」
翔が落ち着いたみたいだった。改めてお互いの格好を見て二人で気まずくなる。
翔は黒の艶の有るスーツを着ていて黒地に青いペイズリーのネクタイをしていた。
何時もは流してセットしてる髪も今はゆるいオールバックの様にセットしている。
男前振りが上がりすぎた…少し興奮してしまう…。が!今は食事だ。
「ってか戻ろうぜ!俺まだ食いてぇんだ」
「あぁ…こうやって見ると剛イメージが少し違うから興奮するな…髪の分け目が違うから眼の下の黒子がよく見える。やっぱり髪伸びたな…」
翔が黒子を指で摩る。周りの女性から溜息が出る…。恥ずかしい…そんな眼でみるなよ。
レストランに戻るときに話を聞いた。翔の親父の事業が食品関係の仕事でそれの仕事を高一から手伝ってるそうだ。今日理事長と居たのは理事長が学校以外の事業で翔の家と一緒に仕事をする為の話し合いをしていたらしい。
そこに俺が居てビックリしたと…。俺だってそうだ。
そして席に戻る。この二人の雰囲気にも周りは驚愕している。
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