全寮制男子校

30

「ん…っ？」


少しづつ意識が覚醒してく。
あれ…俺…ここは？何処だ？いきなり暗闇から眼を開いた瞬間…真っ白い天井が俺の眼に入って来た。
少し身体を動かしてみる。いてぇ…。俺が動いた事でベットがギシっと鳴った。



「おっ？剛っ！起きたか？」



「大きい声だすなよ…うるせぇ…」




今の時間は分からないが。何時もの二人が来客用ソファーに横になり毛布に包まれながらこっちを見ていた。
何故か可愛いと思ってしまい少し起こした身体のまま笑ってしまう。



「っつ！い…て」



「大丈夫か？今ナースコール押すから」



「笑った剛に見惚れてて一瞬動けなかった」




二人が近づいて俺の様子を伺っている。
あぁ…俺病院に居るのか。曖昧な記憶を繋いでいく。



「怪我したの俺だけか？会長に確かぶつかった様な…」



「あぁ…大丈夫だ…。そんな事よりお前が起きるまで三日掛かったんだぞ。本当に心配した…」



普段見ない余裕のない顔でこっちを見ている翔。眉毛が下がって今にも泣きそうな和也。
そんなに心配を掛けてしまって申し訳なくなる。
そうか…俺は三日も眠っていたのか…。自然と痛む頭に手を持っていく。



「頭縫ったんだっ…5針位…。傷残らしい…。
脳には異常が無いって先生が言ってたのに剛起きねぇし…。俺学校行かないでずっと居たんだ…怖かったんだぞ！」



「悪かった。まぁ女子じゃないんだ。傷位どうでも良いって。ただ和也と翔の時間奪っちまってすまない」



「そんな風に考えるな。お前が目を覚ましてくれた…それで良い」




ベッドを挟んで両サイドから抱き締められる。
二人交互に俺の顔にキスを降らせて来た。
人肌が暖かい…気が緩んだのだろうか？身体が細かく震えて来た。


「あ…れ？」



自分でも分からないが身体が言うことを聞かない。



「怖かったろ？あんな高さから落ちたんだ…体は恐怖を覚えてるんだな…。ちっ…あのクソっ…やっぱり殺しておけば良かった」



俺を強い力で抱きしめて翔が物騒な事を言っている。
和也は無言で下を向き拳を握り締めていた。俺が寝ている間に何があったのだろうか…。

暫くして俺の身体が落ちついた時丁度良く扉が開いて看護師さんが来た。
目が覚めた俺の再検査を午前中にすると。それまでは絶
安静だそうだ。

だいぶ朝早く目が覚めたのだろう。検査までまだ時間がある。
その間に掻い摘んで翔が俺が眠ってる間の話を簡単にしてくれた。


俺が病院に運ばれたのを聞いて和也も翔も急いで来てくれたそうだ。
それだけで嬉しい気持ちになる。
それでキレた翔がワカメに可愛らしい説教をした。
（内容は聞くなと言われてしまった）
生徒会（主に二人）がワカメ更生を約束したので後は預けて来たとの事。
それからは和也と寮を行き来して病院に入り浸っていたと。

少し気分が良くなったのか和也が笑いながら言った。学校のベテラン先生が二人に授業を受けて欲しいと老体に鞭打ちながら病院に来たそうだ。


「ちゃんと出ないとダメだろう…先生に迷惑掛けて…っふっははっ」



「ほらな！剛もウケてるじゃん！」



「俺らは大丈夫だ。会長が俺と和也の休みを公式に受理するって言ってた」



「珍しいな…あの会長がそんな事するなんて。まぁ目の前で俺がぶっ飛んできたらビビったろな…」



「あのクソを好きにさせていた自覚があるんだろ？良い傾向じゃねぇか」




三人で話をしてると時間が過ぎるのが早い。俺は再検査の為どっかに連れていかれた。
二人は俺の個室で待っているらしい。少しでも休んでくれれば良いと思う。
一人になってどれ程迷惑を掛けたのだろうと考える。
俺はワカメに対する対応を間違ったのか…？
ダメだ…。頭を振って今は考えない様にする。
取り敢えず身体を治して学校に行こう。
それが俺が今すべき事だ。


再検査も無事に終わった。俺の身体は異常無しと言われてホッとした。
軽い擦り傷や打撲などはあるが時間が経てば治るものが殆んどだ。
頭の傷は仕方ない。デコにキズがあるなんて男前が上がるってもんだ。

まぁ…安静なのは変わらないので後数日入院し来週の月曜日からキリよく登校しようと話になった。
ありがたいことに学校系列の病院なので学校には連絡してくれるそうだ。

和也のと翔は帰した。まぁすぐまた来るんだが…。




それから数日を俺はまったり三人で過ごしながら退院した。