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第二十話 触れれば殺す ※注意喚起あり
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※残酷なシーンを含みます。苦手な方はご注意ください。
*******************
フリオは、侍従室に戻り、書類作業に没頭しているアウレリオ付きの侍従長に不安をぶちまけた。
「おかしいです。なんか変です。アウレリオ様はお出かけですか?」
侍従長は、いつもなら書類作業をしているときは遠慮するはずの部下の勢いにけおされ、目を上げた。
「なんだ。騒がしい。早くアウレリオ様のおそばで待機していなさい。今日は忙しいというのに・・・あの小僧もなかな戻ってこないし・・・」
「その、小僧のことです!さっきすれ違ったんですよ!でも!」
「なぜさっさと戻るように言わなかったんだ。ただでさえアウレリオ様付きは常に人手不足だというのに」
「いやだから!アウレリオ様がお出かけになるから、随行するようにって警備隊長が迎えに来たんです。俺は若様がお出かけになるなんて聞いてませんけど」
「あーーー」
侍従長は頭を抱えた。
「警備隊長か。また悪い病気がでたな・・・まずいな。すぐに助けないと。だが、管轄外だ。アウレリオ様の命令がなければ我々には何もできん。」
「どういうことですか?」
「あの警備隊長はな。城主様の親戚筋だ。それなのに、なぜ親衛隊や騎士団付きではなく城門の警備隊長をやっていると思う?騎士団にいたとき、新しく騎士見習いで入ったきた子どもたちを・・・まあ、そういうことだ。だから今は子どものいない城門の警備を任されているんだ。実際には副隊長が有能だしな」
「え・・・?」
「中には、頭がおかしくなった子どももいる。金をつかませて親を黙らせたが・・・ただ、私達では手が出せん。アウレリオ様にお伝えしなければ」
*********************
「なぜ、そんなことになったんだ!」
侍従長から知らせを受けたアウレリオは、大声で怒鳴ると、剣を持って城門に向かって走り出した。
誰のせいでもない。
だが、なぜ知らせておかなかったのだ。城門の警備隊長には近づくな、と。
身体の中から、ふつふつと魔力の波動が湧き上がる。
沸騰するように勢いを増し、飲み込まれてしまいそうだ。
城門まで、果てしなく遠い。
警備隊長は、一応、「遠縁のおじ」ということにはなっているが、目の端に入るのも我慢ならないほど、大嫌いな男だった。
あまり人に興味を持たないアウレリオにしては珍しい。だが、虫が好かない相手。
「警備隊長の自室はどこだ!」
普段冷静なアウレリオが城門警備に当たる兵士たちに向かって大声を上げ、皆が目を丸くした。
「あ、あちらです!」
転がり出るようにして1人の男が先導し、古ぼけた、だが頑丈なドアの前まで先導した。
「開けろ!」
アウレリオの低い声におびえた兵士が扉を開けようとしたが、内側から錠がかかっていてびくともしない。
「すみません、鍵が・・・」
「開けろ」
声に魔力が乗り、周りにいた者たちが次々にドアに体当たりを始めた。
だが、人間の身体では、硬い鉄の掛け金にはかなわない。
(開けてしまうか・・・間に合わないかもしれない)
身体の中からふつふつと湧いてくる魔力が抑えられなくなりそうだ。
ちいさなリオが大男の警備隊長に何をされているのか考えただけでも、爆発してしまいそうになる。
ドアに体当りする男たちはどんどん増え、もう十人以上になっている。
男たちの掛け声と応援を呼ぶ声で現場は騒然となっているが、警備隊長はドアの中から顔を出そうともしない。
いったい何をしているのか。
まさか、何か・・・汚らわしいことに夢中になっているのか・・・
(そろそろいいだろう)
アウレリオが、かけ金に向けて、小さく魔力を放出すると、鉄がぐにゃりとゆがみ、同時にドアが開いた。
うわっと歓声が上がり、何人かの男が勢い余って部屋の中になだれこんだ。
「うわ!なんだおまえたち!」
動揺した声が部屋の中から聞こえてきたが、アウレリオは周りの静止も聞かずに、人をかき分け部屋の中に入った。
部屋の奥には薄汚いベッド。垢じみたにおいと、ほこりの混じった空気のなか、リオが床に転がっていた。
その顔は蒼白で、息をしているのかわからない。
だが、左の腕が、あり得ない方向に曲がっている。
体中には殴られたような痕が残り、唇や膝からは血がにじんでいる。
着衣は乱れ、お仕着せのシャツのボタンはすべて弾け飛んでいる。ただ、ズボンだけははいている。
男が慌てて履かせたのか、それともそこまでは至らなかったのか。
アウレリオは警備隊長をにらみつけた。
「私の召使いに無体を働いたと知らされた」
目が金色に光った。
(なんだこいつ、ガキのくせに・・・身分が高いからって・・・)
警備隊長は内心腹が立ったが、アウレリオの言い分が正しいので、ここはどう出るべきか迷った。本当のことを言うべきか、それとも・・・
「頼まれたからです」一つため息をつく。「こいつがお役に立てなくなるようにしてほしいと」
「どういう意味だ」
「若様のところから追い出されるようにしたかったんでしょ」
「そうか」
さっきまで騒然としていたのに、部屋の中は静まり返った。
凍るほどの冷たい空気の中、皆がこれからどうなるのか息を飲んでいる。
アウレリオは水のように静かだが、何故か周りを不安にさせた。
「なんだっていうんですか!たかが召使いのガキひとり・・・」
やけになった警備隊長が大声を上げた瞬間、アウレリオが剣を振り、警備隊長の首がごろりと床に落ちた。
警備隊長の血がアウレリオの頬にかかり、あたりを血に染めた。
「片付けておけ」
小さな悲鳴と凍りついた空気の中、何人かの男が慌てて、警備隊長の身体と首の上にシーツをかけた。
「ついてきているか」
アウレリオが振り返ると、顔面蒼白な侍従長とフリオが両手を前に組み、素早く前に出た。
「そいつを医者に見せろ。よく調べるように言え。必要な手当はすべてするように」
「受けたまわりました」
侍従長が指を上げると、フリオがリオを背に担ぎ上げた。
「う・・・ん・・・」
リオがうめき声を上げ、その場の空気がふっと柔らかくなった。
とりあえず、生きてはいるらしい。
アウレリオの中で煮えたぎっていた魔力もすとんと落ち着いてしまった。
(不思議なやつだ。名前は・・・そう、リオといったな)
アウレリオの頬が一瞬ゆるみ、周りにいた者たちは皆凍りついた。
(この、凄惨な光景の中、笑っていらっしゃる)
(やっぱり伯爵家の血筋は・・・)
(触れてはならないお方だ)
「皆の者に申し伝えろ。私の召使いに手を出したら、それは私に対する侮辱ととらえ、成敗する。ふらちな目で見たものは目を潰す。ふらちな目的で触れたものは手を切り落とす。殺そうとしたものは殺す。いいな」
誰もが大きく目を見開き、うなずいた。
*********************
(お詫び)
更新が空いてしまって、すみませんでした(土下座)
一日は予定があったんですが、そのあと身辺でばたばたしてしまいまして・・・ストック無しの低空飛行なのでこういう事になってしまっています。
とりあえず、11月中はなんとか毎日更新して、12月は週一ぐらいで休みを入れてなんとか続けたいと思います。
年内終了が目標なんですけど、ちょっと不安・・・
もう少しで一部終了です。
そして、ハートをくださった方、ありがとうございました!
今日はお風呂でリラックスできるように祈っておきました♡
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フリオは、侍従室に戻り、書類作業に没頭しているアウレリオ付きの侍従長に不安をぶちまけた。
「おかしいです。なんか変です。アウレリオ様はお出かけですか?」
侍従長は、いつもなら書類作業をしているときは遠慮するはずの部下の勢いにけおされ、目を上げた。
「なんだ。騒がしい。早くアウレリオ様のおそばで待機していなさい。今日は忙しいというのに・・・あの小僧もなかな戻ってこないし・・・」
「その、小僧のことです!さっきすれ違ったんですよ!でも!」
「なぜさっさと戻るように言わなかったんだ。ただでさえアウレリオ様付きは常に人手不足だというのに」
「いやだから!アウレリオ様がお出かけになるから、随行するようにって警備隊長が迎えに来たんです。俺は若様がお出かけになるなんて聞いてませんけど」
「あーーー」
侍従長は頭を抱えた。
「警備隊長か。また悪い病気がでたな・・・まずいな。すぐに助けないと。だが、管轄外だ。アウレリオ様の命令がなければ我々には何もできん。」
「どういうことですか?」
「あの警備隊長はな。城主様の親戚筋だ。それなのに、なぜ親衛隊や騎士団付きではなく城門の警備隊長をやっていると思う?騎士団にいたとき、新しく騎士見習いで入ったきた子どもたちを・・・まあ、そういうことだ。だから今は子どものいない城門の警備を任されているんだ。実際には副隊長が有能だしな」
「え・・・?」
「中には、頭がおかしくなった子どももいる。金をつかませて親を黙らせたが・・・ただ、私達では手が出せん。アウレリオ様にお伝えしなければ」
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「なぜ、そんなことになったんだ!」
侍従長から知らせを受けたアウレリオは、大声で怒鳴ると、剣を持って城門に向かって走り出した。
誰のせいでもない。
だが、なぜ知らせておかなかったのだ。城門の警備隊長には近づくな、と。
身体の中から、ふつふつと魔力の波動が湧き上がる。
沸騰するように勢いを増し、飲み込まれてしまいそうだ。
城門まで、果てしなく遠い。
警備隊長は、一応、「遠縁のおじ」ということにはなっているが、目の端に入るのも我慢ならないほど、大嫌いな男だった。
あまり人に興味を持たないアウレリオにしては珍しい。だが、虫が好かない相手。
「警備隊長の自室はどこだ!」
普段冷静なアウレリオが城門警備に当たる兵士たちに向かって大声を上げ、皆が目を丸くした。
「あ、あちらです!」
転がり出るようにして1人の男が先導し、古ぼけた、だが頑丈なドアの前まで先導した。
「開けろ!」
アウレリオの低い声におびえた兵士が扉を開けようとしたが、内側から錠がかかっていてびくともしない。
「すみません、鍵が・・・」
「開けろ」
声に魔力が乗り、周りにいた者たちが次々にドアに体当たりを始めた。
だが、人間の身体では、硬い鉄の掛け金にはかなわない。
(開けてしまうか・・・間に合わないかもしれない)
身体の中からふつふつと湧いてくる魔力が抑えられなくなりそうだ。
ちいさなリオが大男の警備隊長に何をされているのか考えただけでも、爆発してしまいそうになる。
ドアに体当りする男たちはどんどん増え、もう十人以上になっている。
男たちの掛け声と応援を呼ぶ声で現場は騒然となっているが、警備隊長はドアの中から顔を出そうともしない。
いったい何をしているのか。
まさか、何か・・・汚らわしいことに夢中になっているのか・・・
(そろそろいいだろう)
アウレリオが、かけ金に向けて、小さく魔力を放出すると、鉄がぐにゃりとゆがみ、同時にドアが開いた。
うわっと歓声が上がり、何人かの男が勢い余って部屋の中になだれこんだ。
「うわ!なんだおまえたち!」
動揺した声が部屋の中から聞こえてきたが、アウレリオは周りの静止も聞かずに、人をかき分け部屋の中に入った。
部屋の奥には薄汚いベッド。垢じみたにおいと、ほこりの混じった空気のなか、リオが床に転がっていた。
その顔は蒼白で、息をしているのかわからない。
だが、左の腕が、あり得ない方向に曲がっている。
体中には殴られたような痕が残り、唇や膝からは血がにじんでいる。
着衣は乱れ、お仕着せのシャツのボタンはすべて弾け飛んでいる。ただ、ズボンだけははいている。
男が慌てて履かせたのか、それともそこまでは至らなかったのか。
アウレリオは警備隊長をにらみつけた。
「私の召使いに無体を働いたと知らされた」
目が金色に光った。
(なんだこいつ、ガキのくせに・・・身分が高いからって・・・)
警備隊長は内心腹が立ったが、アウレリオの言い分が正しいので、ここはどう出るべきか迷った。本当のことを言うべきか、それとも・・・
「頼まれたからです」一つため息をつく。「こいつがお役に立てなくなるようにしてほしいと」
「どういう意味だ」
「若様のところから追い出されるようにしたかったんでしょ」
「そうか」
さっきまで騒然としていたのに、部屋の中は静まり返った。
凍るほどの冷たい空気の中、皆がこれからどうなるのか息を飲んでいる。
アウレリオは水のように静かだが、何故か周りを不安にさせた。
「なんだっていうんですか!たかが召使いのガキひとり・・・」
やけになった警備隊長が大声を上げた瞬間、アウレリオが剣を振り、警備隊長の首がごろりと床に落ちた。
警備隊長の血がアウレリオの頬にかかり、あたりを血に染めた。
「片付けておけ」
小さな悲鳴と凍りついた空気の中、何人かの男が慌てて、警備隊長の身体と首の上にシーツをかけた。
「ついてきているか」
アウレリオが振り返ると、顔面蒼白な侍従長とフリオが両手を前に組み、素早く前に出た。
「そいつを医者に見せろ。よく調べるように言え。必要な手当はすべてするように」
「受けたまわりました」
侍従長が指を上げると、フリオがリオを背に担ぎ上げた。
「う・・・ん・・・」
リオがうめき声を上げ、その場の空気がふっと柔らかくなった。
とりあえず、生きてはいるらしい。
アウレリオの中で煮えたぎっていた魔力もすとんと落ち着いてしまった。
(不思議なやつだ。名前は・・・そう、リオといったな)
アウレリオの頬が一瞬ゆるみ、周りにいた者たちは皆凍りついた。
(この、凄惨な光景の中、笑っていらっしゃる)
(やっぱり伯爵家の血筋は・・・)
(触れてはならないお方だ)
「皆の者に申し伝えろ。私の召使いに手を出したら、それは私に対する侮辱ととらえ、成敗する。ふらちな目で見たものは目を潰す。ふらちな目的で触れたものは手を切り落とす。殺そうとしたものは殺す。いいな」
誰もが大きく目を見開き、うなずいた。
*********************
(お詫び)
更新が空いてしまって、すみませんでした(土下座)
一日は予定があったんですが、そのあと身辺でばたばたしてしまいまして・・・ストック無しの低空飛行なのでこういう事になってしまっています。
とりあえず、11月中はなんとか毎日更新して、12月は週一ぐらいで休みを入れてなんとか続けたいと思います。
年内終了が目標なんですけど、ちょっと不安・・・
もう少しで一部終了です。
そして、ハートをくださった方、ありがとうございました!
今日はお風呂でリラックスできるように祈っておきました♡
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