第一王子から断罪されたのに第二王子に溺愛されています。何で？

３１ 【番外編】2人の初でえと ４

「はーっ、はーっ、はーっ」

俺はもう息も絶え絶えだ。
膝はガクガク、汗はダラダラ。

なんだよ、「初でえと」ってのはこんなにハードなもんなのかよ。
今、クラウスに誘われて、「雪みたいなもの」とやらを見にいく最中だ。

「初でえとは2人きりですよ。」とかいうクラウスの甘い言葉にすっかり騙された。
どんなにきつくても自分で歩くしかないじゃんか。

今日はピッカピカのいい天気。空は真っ青。
気持ちいい風も吹いていて、山の空気は最高！なはずなんだが。

でもな？俺繊細な孕み腹だから、とにかく体力ないわけよ？
誰か、俺のこと運んでくれないの～～？
そもそも、こんな距離歩いたことないよ～～

サクサク山道を登っていくクラウスに比べて、俺はだんだんと山道を登る一歩一歩が辛くなってきた。
ガチで足が重い。っていうか、俺の身体ってこんなに重いのかよ？

「手伝いますか？」
随分と先を歩いていた、余裕のクラウスが振り返って声をかける。

「だ、だい、じょー、ぶ‥‥‥」
息も絶え絶えだが、俺にだって意地がある。
足が重すぎてなかなか進まないが、これは足が重いからで俺の体力がないからじゃないんだからな？

「相変わらず意地っ張りですね。」
クラウスはクスッと笑い、もごもご口の中で呟くとパチン、と指を鳴らした。

お、軽くなった！！
突然俺の体が驚くほど軽くなる。

「まあ、このくらいはね？」
クラウスがにっこり笑う。

「せっかくの『でえと』なんだから楽しみましょう」
そう言って、俺の手を握った。

うう。ちょっと悔しい気もするが、それ以上に体が軽くなったのが嬉しい。
それに、これならクラウスが歩くスピードについて行ける。
いいじゃん、これ！もう、早くやってくれよな～～？

「うん、ありがと」
すっかり気分が上がった俺が、小声で言ったお礼の言葉はクラウスにも届いていたらしい。
前を向いているクラウスの耳が真っ赤になった。
か、かわいい‥‥‥！
もう、俺、きゅんきゅんしちゃうだろぉ？やめろってばぁ。

2人で手を繋いで山道を登っていく。
いやー、やっぱり足も身体も軽いのっていいな？

サクサクドンドン進めるぞ？

そう思うと、山の中が急に居心地が良くなってきた。
空気は美味しいし、鳥の鳴き声とか虫の声とか、心地よい音が聞こえてくるし、森特有の緑のいい匂いがする。
スーハースーハー
と森林浴も兼ねて深呼吸してみる。

なんだか、気分がいいな、これ！
山に来てよかった。
『初でえと』っていいな！
そう思ってニコニコしてしまう。
なんか、2人っきりってのもいいよな？

クラウスは俺をチラッと見ると、「まあ、楽しそうでよかったです」とだけ言って前を向いた。
「可愛すぎるとか、殺す気か‥‥‥」とボソボソ呟いていたが、聞かなかったことにしてやろう。

そうこうしながら、木の根っこを避けながら山を登っていく。

「あと少しなはず‥‥‥」

クラウスが、俺の手を引きながら、迷わず歩を進めていく。

「もう少しですよ」

俺を振り返って励ましたその５分ほど後、俺は信じられない光景を見ることになったんだ。