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「ルーリク・フォン・グロシャー、私はこのダークグレイ王国の第一王子として、お前との婚約を破棄することをここに宣言する!」
煌めくシャンデリアの下、卒業を祝う華やかな舞踏会の空気は一瞬にして凍りついた。
第一王子殿下に卒業のお祝いを申し上げるため、今宵のご挨拶に伺ったところ、突然の宣告であった。
私は、ルーリク・フォン・グロシャー。
男ではあるが、最も国を繁栄させる子を産むことができる孕み腹として、第一王子であるレイモンド殿下の婚約者であった。
先ほど、殿下が高らかに宣言するまでは。
「偉大なる王国の第一王子殿下、このルーリク・フォン・グロシャー、王国の僕として謹んで婚約破棄を承ります」
ルーリクは美しい顔をうつ向けた。透き通るように美しく長い銀髪は、彼を守るかのように彼の身体を覆い、光輝いている。
大きな紫色の瞳には涙が溢れ、今にも真珠のような美しい涙がこぼれ落ちそうだった。
睫毛の先を震わせ、俯きながらもしっかりとした声で返答する。
「まあ‥‥‥」
「何もこのような祝いの場で‥‥‥」
「お可哀想なルーリク様、あんなに殿下をお慕いしていらっしゃったのに‥‥‥」
会場の空気は私に同情的だ。
まあ、それはそうだろう。非の打ち所のない婚約者としてこの10年勤め上げてきたのだ。
12歳で学院に入学するまでは、いや、14歳でローリア・スワン男爵令嬢が男爵家の私生児として編入してくるまでは、第一王子殿下とて私に対する寵愛を隠さないほどの溺愛だったのだ。
「申し開きはないのか」
会場内の空気から分の悪さを感じたのか、レイモンド殿下が言い放つ。
ここで私を断罪して会場の空気を変えるつもりか?
私はすっと背筋を伸ばすと、レイモンド殿下と隣に立つローリア嬢を見つめた。
レイモンド殿下の礼服の胸元にはローリア嬢のピンク髪と同じ色のバラが飾られている。
ローリア嬢の胸元にはレイモンド殿下の瞳と同じロイヤルブルーのサファイアが輝いている。
(それは、伴侶となる方にお渡しするものでしょうに‥‥‥)
私はフッとため息を漏らし、声が震えないようにとお腹に力を入れた。
「お許しいただけるのであれば・・・斯様な場で申し上げることではないかとも思いますが、私も長きに渡り妃候補として教育を受けた身でございます。理由をお聞かせ願っても?」
「許す。お前は身分をかさに来て私が寵愛するこのローリアをイジメただろう」
「イジメ…でございますか?」
「まずは、ローリアに水をかけただろう。また、次にはローリアの教科書を破ったとも聞いている。ローリアのドレスにケチをつけたり、蜂をけしかけたこともあるとか。終いには、ローリアを階段から突き落として亡き者にしようとしたそうだな。」
「‥‥‥」
「可哀想に、ローリアは泣きながらも、お前からいじめを受けていることを必死に隠そうとしていたのだ。
なんと、健気なことであろう‥‥‥お前のような心の汚い者をこれ以上、私のそばに置くことはまかりならん。ましてや婚約者など、もっての外だ」
「発言をお許しいただけますか」
「ふん、これでお前に会うのは最後だ。申し開きがあるなら言ってみるがよい」
私はさらに腹に力を入れる。
絶対に、ここで声を震わせてなるものか。
私は、ルーリク・フォン・グロシャー、誇り高き妃候補なのだ。
「そのような、幼稚な嫌がらせ、全く身に覚えがございません。」
これは、私の婚約者としての最後の舞台。最後まで勤め上げなければ。
煌めくシャンデリアの下、卒業を祝う華やかな舞踏会の空気は一瞬にして凍りついた。
第一王子殿下に卒業のお祝いを申し上げるため、今宵のご挨拶に伺ったところ、突然の宣告であった。
私は、ルーリク・フォン・グロシャー。
男ではあるが、最も国を繁栄させる子を産むことができる孕み腹として、第一王子であるレイモンド殿下の婚約者であった。
先ほど、殿下が高らかに宣言するまでは。
「偉大なる王国の第一王子殿下、このルーリク・フォン・グロシャー、王国の僕として謹んで婚約破棄を承ります」
ルーリクは美しい顔をうつ向けた。透き通るように美しく長い銀髪は、彼を守るかのように彼の身体を覆い、光輝いている。
大きな紫色の瞳には涙が溢れ、今にも真珠のような美しい涙がこぼれ落ちそうだった。
睫毛の先を震わせ、俯きながらもしっかりとした声で返答する。
「まあ‥‥‥」
「何もこのような祝いの場で‥‥‥」
「お可哀想なルーリク様、あんなに殿下をお慕いしていらっしゃったのに‥‥‥」
会場の空気は私に同情的だ。
まあ、それはそうだろう。非の打ち所のない婚約者としてこの10年勤め上げてきたのだ。
12歳で学院に入学するまでは、いや、14歳でローリア・スワン男爵令嬢が男爵家の私生児として編入してくるまでは、第一王子殿下とて私に対する寵愛を隠さないほどの溺愛だったのだ。
「申し開きはないのか」
会場内の空気から分の悪さを感じたのか、レイモンド殿下が言い放つ。
ここで私を断罪して会場の空気を変えるつもりか?
私はすっと背筋を伸ばすと、レイモンド殿下と隣に立つローリア嬢を見つめた。
レイモンド殿下の礼服の胸元にはローリア嬢のピンク髪と同じ色のバラが飾られている。
ローリア嬢の胸元にはレイモンド殿下の瞳と同じロイヤルブルーのサファイアが輝いている。
(それは、伴侶となる方にお渡しするものでしょうに‥‥‥)
私はフッとため息を漏らし、声が震えないようにとお腹に力を入れた。
「お許しいただけるのであれば・・・斯様な場で申し上げることではないかとも思いますが、私も長きに渡り妃候補として教育を受けた身でございます。理由をお聞かせ願っても?」
「許す。お前は身分をかさに来て私が寵愛するこのローリアをイジメただろう」
「イジメ…でございますか?」
「まずは、ローリアに水をかけただろう。また、次にはローリアの教科書を破ったとも聞いている。ローリアのドレスにケチをつけたり、蜂をけしかけたこともあるとか。終いには、ローリアを階段から突き落として亡き者にしようとしたそうだな。」
「‥‥‥」
「可哀想に、ローリアは泣きながらも、お前からいじめを受けていることを必死に隠そうとしていたのだ。
なんと、健気なことであろう‥‥‥お前のような心の汚い者をこれ以上、私のそばに置くことはまかりならん。ましてや婚約者など、もっての外だ」
「発言をお許しいただけますか」
「ふん、これでお前に会うのは最後だ。申し開きがあるなら言ってみるがよい」
私はさらに腹に力を入れる。
絶対に、ここで声を震わせてなるものか。
私は、ルーリク・フォン・グロシャー、誇り高き妃候補なのだ。
「そのような、幼稚な嫌がらせ、全く身に覚えがございません。」
これは、私の婚約者としての最後の舞台。最後まで勤め上げなければ。
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