4 / 25
4 体育倉庫の地下室
しおりを挟む
ぎしぃ
足元から、古い木の軋む音。うっ、大丈夫?ここ。落ちないかな。
やっぱ、戻ろうかな。
そう思った瞬間、鼻の前を小さな虫がかすめた。
ぎゃっ!
いやだ!こんなところにいる虫なんて汚いに違いない。
うわ、やだ、てのひらが真っ黒になってる!
どこにさわっちゃったんだろ。やだなあ。
ジャージも汚れたかもしれない。
まだ新しいのに。シミのついた服なんて絶対ヤダ。
汚れてなくても、洗おう。だって汚いもん、ここ。
女は度胸だ!出産するから女の方が強いっておばあちゃんが言ってたもん。
私は息をとめて、階段を駆け下り、階段下に転がっているボールを拾った。
もう、やっとだよ。ほんと。なんでたった一個のボールで。
まあ、でもいいや戻ろう。
ボールを拾って顔をあげると、階段の奥には広い空間が広がっている。
いつの間にか暗闇に目が慣れたんだ。
ここはずいぶん広い地下室らしい。
地下室だから湿っぽいのか、上とは違う匂いがした。
濡れた、土の匂い。
ぴちゃっ
どこかで水滴が落ちる音がした。
苔の匂い。ぬるっとした何かが手に触れる。
うわ、不気味。
早く戻ろうとボールを小脇に抱え、階段を昇ろうとしたけど、階段の奥にはドアがあるみたいだった。
ドアとドア枠の間からは、四角く光が漏れている。
もしかして、ここから外に出られるのかな。
もう一度ギシギシ言う階段を昇るよりも、ドアから出た方が良くない?
不気味なこの体育倉庫からすぐに出たい。
私はちょっと無理をしてでも早くここから出たかった。
暗がりの中、足元に気をつけながら、ドアに進む。
がらくたみたいな何だかわからないものがたくさん転がっているから、足を取られないように。
もしかしたら誰かの思い出が詰まっているのかもしれないけど、今となってはただのゴミ。
しっかりと両手にボールを持って、一歩一歩気をつけながら進むと、頭のてっぺんに水滴が落ちて、小さく悲鳴をあげた。
ドアまではあと少し。
ぐちゃっ
何かを踏んだ。思わず抑えた叫び声をあげる。
気持ち悪い!
なんかなんだろう?
ひきがえるとか?腐ったみかんとか?
踏んだことないけど。でも気持ちが悪い。
私間違ったかな。もと来た道を戻ったようが良かった?
振り返ると、階段は随分と遠くに見えた。
戻るのは嫌だ。何とか、ここから早く出たい。
そろそろと足先で辿りながら、何とかドアの前までたどり着いた。
ふう。
まさか、鍵かかってるとか、ないよね?
ちょっと不安になりながらドアノブに手を伸ばす。
うん、鍵なんてなさそう。よかった。
ドアノブっていうか、腐りかけた金属の取っ手が付いているだけのドアを押すと、ぎいいいっと抗議するような音を立て、長い間誰にも触れられなかったらしいドアが、ゆがみながらゆっくりと開いた。
眩しい光に目がくらんで、しゃがみこみそうになる。
思わずボールを左脇に抱え、右手で目を隠しながら、前に進んだ。
足元から、古い木の軋む音。うっ、大丈夫?ここ。落ちないかな。
やっぱ、戻ろうかな。
そう思った瞬間、鼻の前を小さな虫がかすめた。
ぎゃっ!
いやだ!こんなところにいる虫なんて汚いに違いない。
うわ、やだ、てのひらが真っ黒になってる!
どこにさわっちゃったんだろ。やだなあ。
ジャージも汚れたかもしれない。
まだ新しいのに。シミのついた服なんて絶対ヤダ。
汚れてなくても、洗おう。だって汚いもん、ここ。
女は度胸だ!出産するから女の方が強いっておばあちゃんが言ってたもん。
私は息をとめて、階段を駆け下り、階段下に転がっているボールを拾った。
もう、やっとだよ。ほんと。なんでたった一個のボールで。
まあ、でもいいや戻ろう。
ボールを拾って顔をあげると、階段の奥には広い空間が広がっている。
いつの間にか暗闇に目が慣れたんだ。
ここはずいぶん広い地下室らしい。
地下室だから湿っぽいのか、上とは違う匂いがした。
濡れた、土の匂い。
ぴちゃっ
どこかで水滴が落ちる音がした。
苔の匂い。ぬるっとした何かが手に触れる。
うわ、不気味。
早く戻ろうとボールを小脇に抱え、階段を昇ろうとしたけど、階段の奥にはドアがあるみたいだった。
ドアとドア枠の間からは、四角く光が漏れている。
もしかして、ここから外に出られるのかな。
もう一度ギシギシ言う階段を昇るよりも、ドアから出た方が良くない?
不気味なこの体育倉庫からすぐに出たい。
私はちょっと無理をしてでも早くここから出たかった。
暗がりの中、足元に気をつけながら、ドアに進む。
がらくたみたいな何だかわからないものがたくさん転がっているから、足を取られないように。
もしかしたら誰かの思い出が詰まっているのかもしれないけど、今となってはただのゴミ。
しっかりと両手にボールを持って、一歩一歩気をつけながら進むと、頭のてっぺんに水滴が落ちて、小さく悲鳴をあげた。
ドアまではあと少し。
ぐちゃっ
何かを踏んだ。思わず抑えた叫び声をあげる。
気持ち悪い!
なんかなんだろう?
ひきがえるとか?腐ったみかんとか?
踏んだことないけど。でも気持ちが悪い。
私間違ったかな。もと来た道を戻ったようが良かった?
振り返ると、階段は随分と遠くに見えた。
戻るのは嫌だ。何とか、ここから早く出たい。
そろそろと足先で辿りながら、何とかドアの前までたどり着いた。
ふう。
まさか、鍵かかってるとか、ないよね?
ちょっと不安になりながらドアノブに手を伸ばす。
うん、鍵なんてなさそう。よかった。
ドアノブっていうか、腐りかけた金属の取っ手が付いているだけのドアを押すと、ぎいいいっと抗議するような音を立て、長い間誰にも触れられなかったらしいドアが、ゆがみながらゆっくりと開いた。
眩しい光に目がくらんで、しゃがみこみそうになる。
思わずボールを左脇に抱え、右手で目を隠しながら、前に進んだ。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
夏の日の出会いと別れ~霊よりも怖いもの、それは人~
赤羽こうじ
ホラー
少し気の弱い男子大学生、幸太は夏休みを前にして、彼女である唯に別れを告げられる。茫然自失となりベンチで項垂れる幸太に「君大丈夫?」と声を掛けて来た女性、鬼龍叶。幸太は叶の美しさに思わず見とれてしまう。二人の出会いは運命か?偶然か?
想いを募らせていく幸太を叶は冷笑を浮かべて見つめる。『人の気持ちは変わるもの。本当の私を知った時、君は今の気持ちでいてくれるかな?』
若い男女が織り成す恋愛ホラーミステリー。語り継がれる怪談には裏がある。
怖いお話短編集、『縛られた想い』より鬼龍叶をヒロインとして迎えた作品です。
ジャンルはホラーですが恋愛要素が強い為、怖さは全然ありません。
〈完結〉暇を持て余す19世紀英国のご婦人方が夫の留守に集まったけどとうとう話題も尽きたので「怖い話」をそれぞれ持ち寄って語り出した結果。
江戸川ばた散歩
ホラー
タイトル通り。
仕事で夫の留守が続く十二人の夫人達、常に何かとお喋りをしていたのだけど、とうとうネタが尽きてしまっったので、それぞれに今まで起こったか聞いたことのある「怖い話」を語り出す。
ただその話をした結果……
死にたがりオーディション
本音云海
ホラー
アイドルやら女優、俳優、歌手、はたまた声優など
世の中には多種多様なオーディションがある。
一度は誰もが夢をみて受けたいと思うのが、オーディション。
だか、世の中には夢も希望もない人種もいる。
そんな人が受けるオーディションがあるのをご存知だろうか?
その名も、死にたがりオーディション。
この話は、とある冴えない少年達の何気ない会話から始まる。
物語部員の嘘とその真実
るみえーる
ホラー
夏休みの火曜日の午後、物語部員が巻き込まれた惨劇について
・樋浦遊久…物語部員の3年生。背は高くないがそのことをコンプレックスにはしていない。本を読むのが早い。立花備は妄想を抱いていると思い込ませるフリをしている。
・千鳥紋…2年生。紅茶を愛し女性語で話す親切な人。世界の創造のときからいる人物。
・年野夜見…2年生。この物語の中では唯一超越的三人称視点で語ることができる。普段は観察者的立場にいる。紋とは友人。
・樋浦清…1年生。樋浦遊久の妹で頭の回転は早いがボケ役に回ることが多い。
・市川醍醐…1年生。樋浦清と同じクラスにいる。冷笑的な性格で、くだらない物語を作る。
・立花備…おれ。1年生。この物語の真犯人を探そうとする。
一日一怪 ~秒で読めちゃう不思議な話~
ありす
ホラー
Twitter (現: X ) で「#一日一怪」として上げた創作怪談を加筆修正した短編集です。いろんなテイストのサクッと読めちゃう短いお話ばかりですので、お気軽にお読み下さいませ(˶´ᵕ`˶)☆.*・
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる