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7 学校の怪談
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「よし、みんな集まったか?それじゃみんなで知ってること話そうぜ」
昼休み、カツを中心に怖い話を聞きたい生徒が集まった。
私の右手はユカにガッチリと掴まれて、逃げられなかった。
「じゃあ、俺からな?」カツが机の上に座って話し始めた。
「ここって元砦だったって知ってるか?
「とりで?」
「なにそれ?」
みんなの顔にでっかく「?」が書いてある。
「まあ、一種の軍事拠点だな」リクが言った。
「ほお・・・」
「さすが優等生」
感心はするけど、軍事拠点ってなに?
「つまりどうゆうこと?」カノンが小首を傾げると、男子がぐにゃっと崩れた。
「戦っている時の基地、みたいなもんかな。中世だと山城が多いんだけど、それは軍事的に考えられてそうなっているんだ。見晴らしがいい高いところに軍事的な施設を作る。住むところというよりは、住んでいたとしても戦うため、っていう小型の城みたいなもんかな」
「へえ」さすが優等生。あのメガネも伊達じゃないんだ。
「ちっ」カツが小さく舌打ちした。「いいとこ持ってきやがって」
「ごめんごめん。でも、ここが砦だってのは知らなかったな。確かに小高い丘の上にあるし、平らに整地してあって昔の典型的な城跡だよな」
「そういうこと」リクの説明にカツがうなずいた。
「で、お前ら知ってるか?城ってのはな、必ず死人が出るんだよ」
ぞーっと冷たいものが背筋を通り抜けた。
「や、やめ・・・」私が止めようとしたら、「なんで?どういう意味?」リナが遮った。
カノンは気味悪そうな顔をしている。
「城でも砦でも普通の土地よりも大勢の人間が死んでるんだよ。まず、戦があればそこは必ず戦場になるだろ?それに敵の兵士を連れてきて、処刑したり強制労働で無理やり働かせたり。敵だから、死んだって構わないような仕事をさせるんだ。城の石垣なんて、人力であげてるんだぞ?どうやったって人は死ぬよな。それから、昔は敵は皆殺しにしたんだよ。女でも子供でも関係ない。農民だって逆らったら一村皆殺しなんて伝説があったりするんだ。それを考えたら敵に容赦したわけないだろ」
さっきまできゃっきゃと笑っていたみんなは黙り込んでいた。
予想を超えたヘビーな内容だ。
「ま、つーことで!俺たちの学校の下には死体が埋まってるかもしれないな!」
「ひっ」誰かが息を飲んだ。
「こわいよ」カノンが涙目で抗議した。「もっと楽しい話だと思ったのに。音楽室のベートーベンの目が動くとか、そういうのじゃないの?」
「あ、そ、そうだよ。俺知ってる!音楽室の前の階段が夜中になると増えるんだって!12段が13段になるらしいぞ?」リュウが慌てて言った。
「夜中に来なければわからないじゃん」リナは不満げだ。
「でも、本当にわかったらこわいじゃん」私は思わず言った。「わからないからいいんだよ。本当だったら、こわいよ・・・」声がだんだん小さくなってしまう。
「そうだよなあ」ヤスが頷いた。「兄貴から聞いた話だけど。階段の踊り場にある鏡。4時44分に鏡に写ると引き込まれるって」
「うわあ」カノンが言った。
「でも、4時44分ぴったりに鏡の前に立つって結構むずいよね。だって授業は遅くたって4時前には終わるもん」
ユカが取り成すように言った。
みんなが元気なく同意する。
最初の元気いっぱいな雰囲気からだんだんと力を失ってきたのはきっとみんな怖くなってるから。
トイレの花子さんとか、映画や漫画の話だと思ってたけど、自分の学校の下に死体が埋まってるかもって言われたら、引くよね。怖すぎるもん。
暗くなる前に帰ろうっと。
「えっと、まだあるんだよ」ユカが言った。「先輩に聞いたんだけど、放送室の・・・」
「やめて!」突然部屋の端から大声で遮られた。
その子のことはよく知らなかった。誰とも話さないし、いつも教室の中でうつむいている暗い子。
前髪で顔が隠れているし、制服は誰かにもらったのか全然体に合ってないし、靴下はヨレヨレだし・・・なんとなく、友達がいなさそうなタイプの子。名前すら覚えていなかった。
「だれ?」
「キモ子じゃね?」
「キモ子は存在自体がキモいんだから、静かにしろって」
「ちょっと、男子、なに言ってんのよ」
小声で話す男子をリナがビシッと止めた。リナ、かっこいい。
「カズコちゃん、ごめんね、うるさかった?」リナが話しかけると、カズコちゃんと呼ばれた子は立ち上がってこっちを向いた。でも顔は前髪に隠れて見えない。
「あなたたち、わかってるの?わかってやってるの?学校の七不思議って全部知ったら死んじゃうんだよ?私、知りたくなかったのに、あなたたちのせいよ」
カズコちゃんは、見た目からは想像もつかない激しさで抗議するように怒鳴ると、部屋から駆け出していった。
「なんだよあいつ」驚いたカツが思わず、というように言った。「最初から部屋にいなきゃいいじゃんか」
「カツ、あんたそれ身勝手」リナがまたビシッと言ってのけた。やっぱりリナはかっこいいかも。
昼休み、カツを中心に怖い話を聞きたい生徒が集まった。
私の右手はユカにガッチリと掴まれて、逃げられなかった。
「じゃあ、俺からな?」カツが机の上に座って話し始めた。
「ここって元砦だったって知ってるか?
「とりで?」
「なにそれ?」
みんなの顔にでっかく「?」が書いてある。
「まあ、一種の軍事拠点だな」リクが言った。
「ほお・・・」
「さすが優等生」
感心はするけど、軍事拠点ってなに?
「つまりどうゆうこと?」カノンが小首を傾げると、男子がぐにゃっと崩れた。
「戦っている時の基地、みたいなもんかな。中世だと山城が多いんだけど、それは軍事的に考えられてそうなっているんだ。見晴らしがいい高いところに軍事的な施設を作る。住むところというよりは、住んでいたとしても戦うため、っていう小型の城みたいなもんかな」
「へえ」さすが優等生。あのメガネも伊達じゃないんだ。
「ちっ」カツが小さく舌打ちした。「いいとこ持ってきやがって」
「ごめんごめん。でも、ここが砦だってのは知らなかったな。確かに小高い丘の上にあるし、平らに整地してあって昔の典型的な城跡だよな」
「そういうこと」リクの説明にカツがうなずいた。
「で、お前ら知ってるか?城ってのはな、必ず死人が出るんだよ」
ぞーっと冷たいものが背筋を通り抜けた。
「や、やめ・・・」私が止めようとしたら、「なんで?どういう意味?」リナが遮った。
カノンは気味悪そうな顔をしている。
「城でも砦でも普通の土地よりも大勢の人間が死んでるんだよ。まず、戦があればそこは必ず戦場になるだろ?それに敵の兵士を連れてきて、処刑したり強制労働で無理やり働かせたり。敵だから、死んだって構わないような仕事をさせるんだ。城の石垣なんて、人力であげてるんだぞ?どうやったって人は死ぬよな。それから、昔は敵は皆殺しにしたんだよ。女でも子供でも関係ない。農民だって逆らったら一村皆殺しなんて伝説があったりするんだ。それを考えたら敵に容赦したわけないだろ」
さっきまできゃっきゃと笑っていたみんなは黙り込んでいた。
予想を超えたヘビーな内容だ。
「ま、つーことで!俺たちの学校の下には死体が埋まってるかもしれないな!」
「ひっ」誰かが息を飲んだ。
「こわいよ」カノンが涙目で抗議した。「もっと楽しい話だと思ったのに。音楽室のベートーベンの目が動くとか、そういうのじゃないの?」
「あ、そ、そうだよ。俺知ってる!音楽室の前の階段が夜中になると増えるんだって!12段が13段になるらしいぞ?」リュウが慌てて言った。
「夜中に来なければわからないじゃん」リナは不満げだ。
「でも、本当にわかったらこわいじゃん」私は思わず言った。「わからないからいいんだよ。本当だったら、こわいよ・・・」声がだんだん小さくなってしまう。
「そうだよなあ」ヤスが頷いた。「兄貴から聞いた話だけど。階段の踊り場にある鏡。4時44分に鏡に写ると引き込まれるって」
「うわあ」カノンが言った。
「でも、4時44分ぴったりに鏡の前に立つって結構むずいよね。だって授業は遅くたって4時前には終わるもん」
ユカが取り成すように言った。
みんなが元気なく同意する。
最初の元気いっぱいな雰囲気からだんだんと力を失ってきたのはきっとみんな怖くなってるから。
トイレの花子さんとか、映画や漫画の話だと思ってたけど、自分の学校の下に死体が埋まってるかもって言われたら、引くよね。怖すぎるもん。
暗くなる前に帰ろうっと。
「えっと、まだあるんだよ」ユカが言った。「先輩に聞いたんだけど、放送室の・・・」
「やめて!」突然部屋の端から大声で遮られた。
その子のことはよく知らなかった。誰とも話さないし、いつも教室の中でうつむいている暗い子。
前髪で顔が隠れているし、制服は誰かにもらったのか全然体に合ってないし、靴下はヨレヨレだし・・・なんとなく、友達がいなさそうなタイプの子。名前すら覚えていなかった。
「だれ?」
「キモ子じゃね?」
「キモ子は存在自体がキモいんだから、静かにしろって」
「ちょっと、男子、なに言ってんのよ」
小声で話す男子をリナがビシッと止めた。リナ、かっこいい。
「カズコちゃん、ごめんね、うるさかった?」リナが話しかけると、カズコちゃんと呼ばれた子は立ち上がってこっちを向いた。でも顔は前髪に隠れて見えない。
「あなたたち、わかってるの?わかってやってるの?学校の七不思議って全部知ったら死んじゃうんだよ?私、知りたくなかったのに、あなたたちのせいよ」
カズコちゃんは、見た目からは想像もつかない激しさで抗議するように怒鳴ると、部屋から駆け出していった。
「なんだよあいつ」驚いたカツが思わず、というように言った。「最初から部屋にいなきゃいいじゃんか」
「カツ、あんたそれ身勝手」リナがまたビシッと言ってのけた。やっぱりリナはかっこいいかも。
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