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後日譚〜あれから〜
21 【リュカ】敵国の金貨
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(こんな金貨、持ってないのに・・・何のことだ?それとも、でまかせを言ってるのか?)
首をかしげながら金貨をてのひらの上で転がすと、なにかが気になった。
なんだろう。
「前から怪しいと思ってたんだ。訳ありっぽい態度とか、一度なんて、本を読んでいたんですよ!平民のくせにおかしいでしょう?しかも、時々お貴族様かよって思うことがあるんです。学もありすぎるし、帳簿だって見られるんですよ!どこかで教育を受けたに違いないくせに、パン職人になりすましているんです。しかも、店は繁盛してる!あのすばしっこいガキがいなくなったから、調べに部屋に入ったら、思ったとおり!この金貨はうちの国のもんじゃないでしょう?俺、知ってるんです。前、この金貨で金を払おうとした客がいて断ったんです。そいつは、ロマーニャの客からもらったって言ってました」
「ロマーニャ!!」
部屋にいた全員が息を飲んだ。
ロマーニャは、敵国だ。兄さんが活躍して戦争は終わったけど、まだ友好関係にはない。ロマーニャと聞いただけでも、激高する者も多かった。
そんな敵国の金貨をたくさん隠し持っているなんて、たしかに怪しい。
でも、俺には身に覚えが・・・
「そいつはね、寝室の引き出しに、金貨をごっそり入れてありましたよ!全部これです。しかも床下にまで金貨が!それは、この領地のものですけど」
・・・妙だ。
ポールはほんとうのことを証言している気がする。
「スパイを告発しようとしただけなんです。こいつの店だって、俺に貸してくれるはずだったのに、急に横入りしやがって。お陰で俺は、人通りの少ないところに店を開くしかなくなったんです。ぜんぶおかしいですよ。こいつは・・」
「いや、リュカの店がある場所は、前の店主が、パンの試作品を食べて借り主を決めたんだ。お前だって承知していただろう?」ギルド長が戸惑ったように、ポールに言った。
「俺のパンのほうが、美味いのに!不公平だ!」
「いや、その・・・リュカ親方のパンが気に入ったようでな」
「絶対おかしい!誰だって分かってますよ。不正があったって」
「ポール、お前は納得行かないかも知れないが、不正はなかった」
「スパイだからでしょう?金を積んだんでしょう?あの場所が欲しくて」
「もうやめなさい。みっともない」ギルド長が肩を落とした。
「本当に申し訳ないことをしました。こんなこととは・・・ご指示にはすべて従います。私共も、どこか公正な視点を欠いていたのかもしれません。リュカ親方の店は、開店してすぐに人気店になり・・・しかも最近では、小麦粉が足りなくなるほどの大繁盛と聞き、妬みがあったのかもしれません。反省しております」
ギルド長が頭を下げると、親方たちも居心地が悪そうに顔を見合わせ、頭を下げた。
「謝るのなら、リュカに謝るんだな」
兄さんが冷たく言い放つと、ギルド長と親方たちは俺に頭を下げた。
「本当に申し訳なかった。お前の店がうまく行き過ぎて、妬む気持ちがあったんだと思う。私もお前を隠れて殴る者を見て見ぬふりをしたんだから同罪だ。許してくれ」
「リュカ親方、申し訳なかった」
「俺のこと、一発殴っていいんだぞ」
皆が口々に謝ってくれると、硬くなっていた心がほぐれてくる。
よそ者の俺を受け入れてくれたギルド長や仲間たちのことを思えば、いつまでも怒ってはいられなかった。
「誤解が解ければ、いいんです」
ぎこちなく微笑むと、殴られた頬が痛んだ。
「すまなかったな」別の親方が俺の手を握り、また別の誰かが手を重ねた。
「なに和解してんだよ!!」
キレ気味な大声が、広間に響き渡った。
「そいつはスパイなんだよ!ロマーニャのスパイなんだよ!!パン職人のふりして情報を売ってたんだろう?じゃなきゃそんなに金持ってるわけ無いだろう」
「そういやそうだな。お前、なんで金貨なんて持ってるんだ?そんなにたくさん」
「普通、金は預けるよな」
「確かに。それが普通だよな?」
親方たちが俺の顔を見た。
「床下にあったって金貨は、俺のものです。お代としていただいたもので・・・でも、ロマーニャの金貨は見たこともないし、俺のもんじゃありません」
「嘘つけ!」ポールが叫んだ。「じゃあ、なんでお前の寝室の引き出しに隠してあったんだよ!!しかもリネンで隠して!」
「引き出し?」
「そうだよ!からっぽの引き出しのなか、上にリネンがかけてあった」
嘘にしては、リアリティがありすぎる。
まさか・・・
俺は、ポールが取り落とした袋に駆け寄った。
(・・・ネルだ!)
ネルがリオンを迎えに来た晩、受け取ってくれと何度も押しつけてきた袋。
ぎっしりと金貨が入っているのは見たが、俺はいらないと断った。
納得できないネルは、引き出しの中に隠すように入れておいたんだろう。
俺がすぐに気が付かないように、リネンを被せて。
からっぽの引き出しは、レオンが使っていた引き出しのことだ。
「顔色が変わった!身に覚えがあるんだろう?」
「いや、そうじゃない。この金貨のことは俺も知らなかった」
「売国奴!裏切り者!!」
「違う!俺は、裏切り者じゃない」
「やめろ!」
まるで悲鳴のような声が、響き渡った。
首をかしげながら金貨をてのひらの上で転がすと、なにかが気になった。
なんだろう。
「前から怪しいと思ってたんだ。訳ありっぽい態度とか、一度なんて、本を読んでいたんですよ!平民のくせにおかしいでしょう?しかも、時々お貴族様かよって思うことがあるんです。学もありすぎるし、帳簿だって見られるんですよ!どこかで教育を受けたに違いないくせに、パン職人になりすましているんです。しかも、店は繁盛してる!あのすばしっこいガキがいなくなったから、調べに部屋に入ったら、思ったとおり!この金貨はうちの国のもんじゃないでしょう?俺、知ってるんです。前、この金貨で金を払おうとした客がいて断ったんです。そいつは、ロマーニャの客からもらったって言ってました」
「ロマーニャ!!」
部屋にいた全員が息を飲んだ。
ロマーニャは、敵国だ。兄さんが活躍して戦争は終わったけど、まだ友好関係にはない。ロマーニャと聞いただけでも、激高する者も多かった。
そんな敵国の金貨をたくさん隠し持っているなんて、たしかに怪しい。
でも、俺には身に覚えが・・・
「そいつはね、寝室の引き出しに、金貨をごっそり入れてありましたよ!全部これです。しかも床下にまで金貨が!それは、この領地のものですけど」
・・・妙だ。
ポールはほんとうのことを証言している気がする。
「スパイを告発しようとしただけなんです。こいつの店だって、俺に貸してくれるはずだったのに、急に横入りしやがって。お陰で俺は、人通りの少ないところに店を開くしかなくなったんです。ぜんぶおかしいですよ。こいつは・・」
「いや、リュカの店がある場所は、前の店主が、パンの試作品を食べて借り主を決めたんだ。お前だって承知していただろう?」ギルド長が戸惑ったように、ポールに言った。
「俺のパンのほうが、美味いのに!不公平だ!」
「いや、その・・・リュカ親方のパンが気に入ったようでな」
「絶対おかしい!誰だって分かってますよ。不正があったって」
「ポール、お前は納得行かないかも知れないが、不正はなかった」
「スパイだからでしょう?金を積んだんでしょう?あの場所が欲しくて」
「もうやめなさい。みっともない」ギルド長が肩を落とした。
「本当に申し訳ないことをしました。こんなこととは・・・ご指示にはすべて従います。私共も、どこか公正な視点を欠いていたのかもしれません。リュカ親方の店は、開店してすぐに人気店になり・・・しかも最近では、小麦粉が足りなくなるほどの大繁盛と聞き、妬みがあったのかもしれません。反省しております」
ギルド長が頭を下げると、親方たちも居心地が悪そうに顔を見合わせ、頭を下げた。
「謝るのなら、リュカに謝るんだな」
兄さんが冷たく言い放つと、ギルド長と親方たちは俺に頭を下げた。
「本当に申し訳なかった。お前の店がうまく行き過ぎて、妬む気持ちがあったんだと思う。私もお前を隠れて殴る者を見て見ぬふりをしたんだから同罪だ。許してくれ」
「リュカ親方、申し訳なかった」
「俺のこと、一発殴っていいんだぞ」
皆が口々に謝ってくれると、硬くなっていた心がほぐれてくる。
よそ者の俺を受け入れてくれたギルド長や仲間たちのことを思えば、いつまでも怒ってはいられなかった。
「誤解が解ければ、いいんです」
ぎこちなく微笑むと、殴られた頬が痛んだ。
「すまなかったな」別の親方が俺の手を握り、また別の誰かが手を重ねた。
「なに和解してんだよ!!」
キレ気味な大声が、広間に響き渡った。
「そいつはスパイなんだよ!ロマーニャのスパイなんだよ!!パン職人のふりして情報を売ってたんだろう?じゃなきゃそんなに金持ってるわけ無いだろう」
「そういやそうだな。お前、なんで金貨なんて持ってるんだ?そんなにたくさん」
「普通、金は預けるよな」
「確かに。それが普通だよな?」
親方たちが俺の顔を見た。
「床下にあったって金貨は、俺のものです。お代としていただいたもので・・・でも、ロマーニャの金貨は見たこともないし、俺のもんじゃありません」
「嘘つけ!」ポールが叫んだ。「じゃあ、なんでお前の寝室の引き出しに隠してあったんだよ!!しかもリネンで隠して!」
「引き出し?」
「そうだよ!からっぽの引き出しのなか、上にリネンがかけてあった」
嘘にしては、リアリティがありすぎる。
まさか・・・
俺は、ポールが取り落とした袋に駆け寄った。
(・・・ネルだ!)
ネルがリオンを迎えに来た晩、受け取ってくれと何度も押しつけてきた袋。
ぎっしりと金貨が入っているのは見たが、俺はいらないと断った。
納得できないネルは、引き出しの中に隠すように入れておいたんだろう。
俺がすぐに気が付かないように、リネンを被せて。
からっぽの引き出しは、レオンが使っていた引き出しのことだ。
「顔色が変わった!身に覚えがあるんだろう?」
「いや、そうじゃない。この金貨のことは俺も知らなかった」
「売国奴!裏切り者!!」
「違う!俺は、裏切り者じゃない」
「やめろ!」
まるで悲鳴のような声が、響き渡った。
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