76 / 279
第二幕〜マティアス〜
75 逢瀬 ※※
しおりを挟む
ベネディクトが銀のトレイに乗った手紙を持って部屋に入ってきた。
薄桃色の封筒。イネスだ。
まあ、そろそろだとは思っていたが。
せっかくリュカと朝食の時間を楽しんでいたのに。
私は、リュカに無断で触れている罪悪感からか、ついつい必要以上にリュカを甘やかすようなそぶりをしてしまう。
今朝はちらちらと私を見ているので、「膝に座るか?」と声をかけたらいそいそと膝に座ってきた。
小さな口の中に、パンやチーズをちぎって入れてやると、嬉しそうにもぐもぐと口を動かしている。
目を煌めかせて私を見るリュカには邪念は全くない。
ただ純粋に、兄に甘えているだけだ。
母が亡くなり、兄弟とも引き離され、親愛の情を示す相手が私しかいない。ただそれだけ。
だが私には、私に触れるリュカの暖かな体と尻の感触が気になって仕方なかった。
私が明確な意思を持ってリュカに触れたら、一体どんな顔をするのだろう。
頬を染めるのか、それとも嫌悪されるのか。
甘えるリュカを失うのはあまりにも辛い。
必死で自制して、リュカに必要以上に触れないようにカトラリーを握りしめると、しっとりと汗の感触がした。
「兄上?」
尋ねるようなリュカの視線にはっと気がつく。忘れていた。
私は小さくため息をつき、イネスからの手紙に目を走らせた。
手紙には母の葬儀以降の日々への見舞いと、今日訪問したい旨が書かれていた。
「了承したと伝えてくれ」
ベネディクトに伝えると、リュカの肩がしゅんと落ちたのがわかる。
私も同じ気持ちだよ。
お前との時間を邪魔されたくないんだ。
肩をそっと撫でると、リュカの細い肩が小さく震えた。
食事をすませると、リュカは逃げるように去って行ってしまった。
貴重な休みを一緒に過ごしたいのに。
結局その休みはイネスに邪魔をされ、リュカと過ごすことはできず、不満な心を抱えたまま寮に戻る羽目になった。
次こそは。寮に帰る馬車の中、考える。
次こそはもっとリュカと過ごしたい。
夜のリュカも魅力的だ。
だが、バレたら嫌われてしまうかもしれない。目を覚まさないように考えないと。
リュカの体に負担がかからない眠り薬はないだろうか。
父がモラン医師を処分しなければ、こんな時に頼りになっただろうにと舌打ちする。
それに、昼のリュカとも過ごしたい。
リュカの私を見る瞳。
この世で一番私を愛して信頼しているとその瞳はいつも語っている。
「にいちゃんが大好きだ」
言葉に出さなくてもリュカの気持ちがいつも伝わってくる。
リュカの細い体をぎゅっと抱きしめ、「私もだよ」と答えられる日が早くくればいいのに。
イネスも余計な手紙などよこさなければ・・・手紙。手紙か。ふむ。何かの役にたつかもしれんな。
翌週、屋敷に帰ると、リュカに弟妹への手紙を書かせた。
出来栄えは予想以上だった。
つい、震えがくるほど浮かれてしまう。
思いもよらないほどの切り札になるかもしれない。
リュカの手紙を胸ポケットに入れると、頬を真っ赤に染めたリュカが愛しくてつい口付けをしてしまった。
意識のあるリュカに手を出してはいけないのに。
怖がらせてしまうかもしれない。
寝ているリュカに触れる楽しみを知ってしまってから、チャンスがあればつい触れたくなってしまう。
身体中撫で回し、愛撫し、そして、私にも触れさせる楽しみを知ってしまった後では、素知らぬ顔も辛くなってくる。
腕の中で蕩けるリュカを抱き寄せると、唇を吸った。
桃の香りと温かい体に甘い唇。全てが私を狂わせる。
「にいちゃん、誰かに見られたらまずいんじゃ・・・」
「見られてもいいだろ。もう報告する相手がいないんだから」
母の親族は全て解雇した。
父は不安定だ。
私に逆らう愚かな召使いなどもういない。
そうだ。ならいいじゃないか。
歯止めは効かない。
リュカの麻薬のような唇に溺れ、いつしか、ベッドの上で組み敷いた。
リュカが私に触れると、もう止められなくなった。
このままリュカに触れなければ死んでしまうかもしれないと思うほどの強い衝動に突き動かされ、リュカの首筋に吸い付いた。
このまま奪ってしまいたい。
気が狂いそうなほど、欲しい。
リュカの乳首を吸うと、甘えるような声でもっと欲しいと訴えた。
身を震わせ、そこから先を求めてくる。
リュカが欲しい。欲しくてたまらない。
だが、怖い。恐ろしい。
リュカを傷つけてしまうのが、怖い。
そんな自分が恐ろしい。
震えるほどの恐怖が襲ってきた。
ぐるぐるとめまいがするほどの恐怖に吐き気がした。
これ以上は、ダメだ。
リュカを壊してしまう。
荒い息を吐き、リュカから必死の思いで体を離す。
だが、指先は吸い付いたようにリュカの乳首や首筋から離すことができなかった。
ああ、耐えなければいけないのに。
そのとき、リュカが私の腰に自分の中心を押し付けてきた。
その熱い塊は、私の理性を一瞬で崩壊させた。
薄桃色の封筒。イネスだ。
まあ、そろそろだとは思っていたが。
せっかくリュカと朝食の時間を楽しんでいたのに。
私は、リュカに無断で触れている罪悪感からか、ついつい必要以上にリュカを甘やかすようなそぶりをしてしまう。
今朝はちらちらと私を見ているので、「膝に座るか?」と声をかけたらいそいそと膝に座ってきた。
小さな口の中に、パンやチーズをちぎって入れてやると、嬉しそうにもぐもぐと口を動かしている。
目を煌めかせて私を見るリュカには邪念は全くない。
ただ純粋に、兄に甘えているだけだ。
母が亡くなり、兄弟とも引き離され、親愛の情を示す相手が私しかいない。ただそれだけ。
だが私には、私に触れるリュカの暖かな体と尻の感触が気になって仕方なかった。
私が明確な意思を持ってリュカに触れたら、一体どんな顔をするのだろう。
頬を染めるのか、それとも嫌悪されるのか。
甘えるリュカを失うのはあまりにも辛い。
必死で自制して、リュカに必要以上に触れないようにカトラリーを握りしめると、しっとりと汗の感触がした。
「兄上?」
尋ねるようなリュカの視線にはっと気がつく。忘れていた。
私は小さくため息をつき、イネスからの手紙に目を走らせた。
手紙には母の葬儀以降の日々への見舞いと、今日訪問したい旨が書かれていた。
「了承したと伝えてくれ」
ベネディクトに伝えると、リュカの肩がしゅんと落ちたのがわかる。
私も同じ気持ちだよ。
お前との時間を邪魔されたくないんだ。
肩をそっと撫でると、リュカの細い肩が小さく震えた。
食事をすませると、リュカは逃げるように去って行ってしまった。
貴重な休みを一緒に過ごしたいのに。
結局その休みはイネスに邪魔をされ、リュカと過ごすことはできず、不満な心を抱えたまま寮に戻る羽目になった。
次こそは。寮に帰る馬車の中、考える。
次こそはもっとリュカと過ごしたい。
夜のリュカも魅力的だ。
だが、バレたら嫌われてしまうかもしれない。目を覚まさないように考えないと。
リュカの体に負担がかからない眠り薬はないだろうか。
父がモラン医師を処分しなければ、こんな時に頼りになっただろうにと舌打ちする。
それに、昼のリュカとも過ごしたい。
リュカの私を見る瞳。
この世で一番私を愛して信頼しているとその瞳はいつも語っている。
「にいちゃんが大好きだ」
言葉に出さなくてもリュカの気持ちがいつも伝わってくる。
リュカの細い体をぎゅっと抱きしめ、「私もだよ」と答えられる日が早くくればいいのに。
イネスも余計な手紙などよこさなければ・・・手紙。手紙か。ふむ。何かの役にたつかもしれんな。
翌週、屋敷に帰ると、リュカに弟妹への手紙を書かせた。
出来栄えは予想以上だった。
つい、震えがくるほど浮かれてしまう。
思いもよらないほどの切り札になるかもしれない。
リュカの手紙を胸ポケットに入れると、頬を真っ赤に染めたリュカが愛しくてつい口付けをしてしまった。
意識のあるリュカに手を出してはいけないのに。
怖がらせてしまうかもしれない。
寝ているリュカに触れる楽しみを知ってしまってから、チャンスがあればつい触れたくなってしまう。
身体中撫で回し、愛撫し、そして、私にも触れさせる楽しみを知ってしまった後では、素知らぬ顔も辛くなってくる。
腕の中で蕩けるリュカを抱き寄せると、唇を吸った。
桃の香りと温かい体に甘い唇。全てが私を狂わせる。
「にいちゃん、誰かに見られたらまずいんじゃ・・・」
「見られてもいいだろ。もう報告する相手がいないんだから」
母の親族は全て解雇した。
父は不安定だ。
私に逆らう愚かな召使いなどもういない。
そうだ。ならいいじゃないか。
歯止めは効かない。
リュカの麻薬のような唇に溺れ、いつしか、ベッドの上で組み敷いた。
リュカが私に触れると、もう止められなくなった。
このままリュカに触れなければ死んでしまうかもしれないと思うほどの強い衝動に突き動かされ、リュカの首筋に吸い付いた。
このまま奪ってしまいたい。
気が狂いそうなほど、欲しい。
リュカの乳首を吸うと、甘えるような声でもっと欲しいと訴えた。
身を震わせ、そこから先を求めてくる。
リュカが欲しい。欲しくてたまらない。
だが、怖い。恐ろしい。
リュカを傷つけてしまうのが、怖い。
そんな自分が恐ろしい。
震えるほどの恐怖が襲ってきた。
ぐるぐるとめまいがするほどの恐怖に吐き気がした。
これ以上は、ダメだ。
リュカを壊してしまう。
荒い息を吐き、リュカから必死の思いで体を離す。
だが、指先は吸い付いたようにリュカの乳首や首筋から離すことができなかった。
ああ、耐えなければいけないのに。
そのとき、リュカが私の腰に自分の中心を押し付けてきた。
その熱い塊は、私の理性を一瞬で崩壊させた。
0
お気に入りに追加
224
あなたにおすすめの小説
久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…
3人の弟に逆らえない
ポメ
BL
優秀な3つ子に調教される兄の話です。
主人公:高校2年生の瑠璃
長男の嵐は活発な性格で運動神経抜群のワイルド男子。
次男の健二は大人しい性格で勉学が得意の清楚系王子。
三男の翔斗は無口だが機械に強く、研究オタクっぽい。黒髪で少し地味だがメガネを取ると意外とかっこいい?
3人とも高身長でルックスが良いと学校ではモテまくっている。
しかし、同時に超がつくブラコンとも言われているとか?
そんな3つ子に溺愛される瑠璃の話。
調教・お仕置き・近親相姦が苦手な方はご注意くださいm(_ _)m
僕が玩具になった理由
Me-ya
BL
🈲R指定🈯
「俺のペットにしてやるよ」
眞司は僕を見下ろしながらそう言った。
🈲R指定🔞
※この作品はフィクションです。
実在の人物、団体等とは一切関係ありません。
※この小説は他の場所で書いていましたが、携帯が壊れてスマホに替えた時、小説を書いていた場所が分からなくなってしまいました😨
ので、ここで新しく書き直します…。
(他の場所でも、1カ所書いていますが…)
犯されないよう逃げるけど結局はヤラれる可哀想な受けの話
ダルるる
BL
ある日目が覚めると前世の記憶が戻っていた。
これは所謂異世界転生!?(ちょっと違うね)
いやっほーい、となるはずだったのに……
周りに男しかいないししかも色んなイケメンに狙われる!!
なんで俺なんだぁぁぁ……
ーーーーーーー
うまくにげても結局はヤられてしまう可哀想な受けの話
題名についた※ はR18です
ストーリーが上手くまとまらず、ずっと続きが書けてません。すみません。
【注】アホエロ
考えたら負けです。
設定?ストーリー?ナニソレオイシイノ?状態です。
ただただ作者の欲望を描いてるだけ。
文才ないので読みにくかったらすみません┏○┓
作者は単純なので感想くれたらめちゃくちゃやる気でます。(感想くださいお願いしやす“〇| ̄|_)
ヤンデレだらけの短編集
八
BL
ヤンデレだらけの1話(+おまけ)読切短編集です。
全8話。1日1話更新(20時)。
□ホオズキ:寡黙執着年上とノンケ平凡
□ゲッケイジュ:真面目サイコパスとただ可哀想な同級生
□アジサイ:不良の頭と臆病泣き虫
□ラベンダー:希死念慮不良とおバカ
□デルフィニウム:執着傲慢幼馴染と地味ぼっち
ムーンライトノベル様に別名義で投稿しています。
かなり昔に書いたもので、最近の作品と書き方やテーマが違うと思いますが、楽しんでいただければ嬉しいです。
短編エロ
黒弧 追兎
BL
ハードでもうらめぇ、ってなってる受けが大好きです。基本愛ゆえの鬼畜です。痛いのはしません。
前立腺責め、乳首責め、玩具責め、放置、耐久、触手、スライム、研究 治験、溺愛、機械姦、などなど気分に合わせて色々書いてます。リバは無いです。
挿入ありは.が付きます
よろしければどうぞ。
リクエスト募集中!
やり直せるなら、貴方達とは関わらない。
いろまにもめと
BL
俺はレオベルト・エンフィア。
エンフィア侯爵家の長男であり、前世持ちだ。
俺は幼馴染のアラン・メロヴィングに惚れ込み、恋人でもないのにアランは俺の嫁だと言ってまわるというはずかしい事をし、最終的にアランと恋に落ちた王太子によって、アランに付きまとっていた俺は処刑された。
処刑の直前、俺は前世を思い出した。日本という国の一般サラリーマンだった頃を。そして、ここは前世有名だったBLゲームの世界と一致する事を。
こんな時に思い出しても遅せぇわ!と思い、どうかもう一度やり直せたら、貴族なんだから可愛い嫁さんと裕福にのんびり暮らしたい…!
そう思った俺の願いは届いたのだ。
5歳の時の俺に戻ってきた…!
今度は絶対関わらない!
ヤンデレ化していた幼稚園ぶりの友人に食べられました
ミルク珈琲
BL
幼稚園の頃ずっと後ろを着いてきて、泣き虫だった男の子がいた。
「優ちゃんは絶対に僕のものにする♡」
ストーリーを分かりやすくするために少しだけ変更させて頂きましたm(_ _)m
・洸sideも投稿させて頂く予定です
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる