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3 ヒロインへの道

175 湖の浄化

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まずは瘴気穴の浄化からだ。
この間は魔物化したカニに弾かれちゃったけど、今回は大丈夫。だってもう魔物化したカニがいないもんね!

さっき板で水をせき止めてもらっていたので、瘴気穴の周辺には水がなくなっていた。

「今から、先ほどの聖女様の力を込めた水晶をここに入れて、祈りを送ります。おそらく、それで十分浄化できると思いますので、聖女様はお休みください」

えー?もう仕事終わってんの?
なんか、やる気出したのになあ。肩透かしを食らったみたい。
ジョセフに促されて、おとなしく後ろに下がっていると、リカルドが私が力を込めた水晶を一つ取り出した。
「とりあえず、一つでいいか」
ボソッと呟くと、瘴気穴に水晶を放り投げ、両手を広げると大声で叫んだ。

「大地よ!聖なる御霊みたまがこの土地に降りたり!聖なるお力を借り、この地を浄化せよ!!」

うわっ!いきなり、ノリノリじゃん!
と思ったら、瘴気穴からリカルドの声に応えるように、光が溢れ出してきた。
そしてその光はどんどん広がり、強くなり弱くなり、また強い光となり、そして静かに消えていった。

「え、すご・・・」
なんでそんなことができるの?もしかして、もしかしてリカルドって単なる変態じゃなくってすごい人だったってこと?
「序の口ですよ」リカルドが振り返り、ドヤ顔で笑った。
・・・これがなければ、すごい人かもね。

「さあ次ですよ!」

リカルドも調子出てきたみたい。

「ケチケチしないで全部使ってしまいましょう!聖女様が力を込めてくださった水晶を全部使います。私が湖に水晶を投げ入れて、祈りを込めますので、そのタイミングで聖女様も力を湖の中にまっすぐに入れるイメージで放ってください。用意はいいですか?」
「もちろん!」
「湖は広いので、できる限りのお力を出してください。ただし、倒れない程度に、ですよ?」
「任せて!」
私は答えると同時に、気を集め始めた。

休んだおかげで気力体力十分!
頑張ればきっと、湖が浄化されて元の綺麗な湖に戻るはず。そう、男爵領の湖みたいに!
鳥の声や虫の音。風の音や波の音に癒されるようなそんな場所に必ず戻れる!
私に向かってどんどんと気が集まってくる。
今までよりも体が軽い。さあ、みんな手伝って!一緒に頑張ろう!!
そう思った瞬間、すごいいきおいで気が流れ込んできた。

どんどん私に気が流れ込み、身体中から力が湧き上がってくる。
気の塊はもう両手では抱えきれない。でも、なぜか持てる。そしてそのまま大きくなり、私を金色な光が取り巻いた。
「水の精霊よ!聖なる御霊より清らかな力を受け、この地を浄化せよ!」
リカルドの声が響き、水晶を投げ入れたのが分かった。今だ!

私は思いっきり力を込めて湖の中央に向かって光の玉を送った。
光の玉は音もなく湖の上を走りながら、水面に吸い込まれていく。
そして、湖の中央付近でその姿が消えた。

次の瞬間。

ぱらぱらぱら・・・
花火が夜空に舞い散るような音を響かせながら、水面が金色に染まり出した。
ぱらぱらぱら・・・
金色の光はどんどん大きくなり、湖全体を覆っていく。

ざばあーーーーーーーーー!!!!
湖中央から光と水の柱が立ち、湖一帯を金色に照らした。

湖のほとりにいる私たちも全員金色に染まる。

「うわあ・・・、すげー」

誰かが呟いた。

「ちょっとやりすぎたかもしれませんね?」

リカルドが私にそっと囁いた。

「そうなの?うん、そうかも。でも害はないんでしょ?」
「うーん、多分健康になっちゃうかなってところですね」
「健康?」
「この地の浄化力が高まって、恵み豊かな湖になり、そして湖に住む魚を食べた人が健康になっちゃうような感じですかね?」
「あはは、じゃ、いっか」

湖を輝かせていた金色の光は少しずつ弱くなっていった。
そして、湖の中央に金色の大きな魚が跳ね上がり、水の中にまた消えていった。

ぬし様、いたんだ。汚染されていたのかな。浄化されたみたい。よかった)

私はみんなを振り返ると、にっこりと笑った。

「浄化できたみたいです。よかった」

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