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3 ヒロインへの道
145 聖女降臨!
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私と黒馬を取り巻くように光の柱が立ち、降り注ぐひかりの粒となって、あたりが金色に輝いた。
ふわふわと舞う粉雪のようなひかりの粒は地上に落ち、そのまま吸い込まれていく。
地面は鈍く輝き、地表も金色に輝いた。
手のひらに大きく集まる光の玉をイメージすると、ひかりの粒がブワッと手のひらの上に集まり、大きな玉になった。
そのまま、祈りを込めて馬小屋の方にひかりの玉を投げる。
すると、さっきまで苦しげに鳴いていた馬たちの声が落ち着いて満足げに喉を鳴らす音が聞こえてきた。
まだ残っているふわふわとした光の粒は周囲を照らしながら、ゆっくりと地上に落ちていく。
「うわーーー」
「聖女様だ!!」
小さな子供の声が聞こえてきた。
思わず振り返ると、少し離れたところから小さな男の子とすこし大きな女の子が私のことを指差していた。
エプロンドレスの女の子と半ズボンの男の子は手を繋ぎ、そっくりな表情でこぼれ落ちそうなほど大きく目を見開いて立っていた。よく似ているから姉弟なのかな?
二人の後ろに立っていたお母さんらしき女の人が、
「こ、こら、やめなさい」
と慌てて止めようとしている。
私はにっこりと微笑むと、ひかりの粒をあつめ、二人の頭の上に飛ばし、花の形にするとまるで花びらが散るようにひかりが舞い落ちた。
「すげ」
「わあ」
そっと唇の上に指をのせ、「ナイショだよ」と念を送る。
子供達にはすぐわかったみたい。
二人は、大きく首を縦に振った。しかも何回も。
ふふ、可愛い。
はーちゃんの瞳には元の強い力が戻ってきている。
さっきまでの、苦しさやもどかしさがすっかりなくなっていた。
もしかして、これって浄化?
いやー、知らなかった。こんなことできたんだあ。
すごいねー、やっぱり私って聖女なんだねえ。ほんと、すごいね。これってゲーム補正ってやつなの?
どこからどこまでがゲーム補正なのかわかんないけど、こんな力があったんだあ。
でも、便利だね、これ。
はーちゃんは、甘えたようにブルルルと喉を鳴らし、私のお腹に鼻を押し付けてきた。
「くすぐったい、くすぐったいよ、はーちゃん。何?乗せてくれるの?もう大丈夫なの?よかったねえ。ごめんね、私のせいで薬盛られちゃったんだよね。本当にごめん」
はーちゃんは私の腕を甘噛みして一振りすると、私の体が宙に浮き、ぽんっと背中に乗せられた。
「うわっ」
驚いてはーちゃんの首に手を回すと、また、ブルルルと言いながら立ち上がった。
「わかったわかった、他の子達も見ようね」
はーちゃんに乗せられて馬小屋に戻ろうとすると、声を失ったように黙り込んでいた人たちがどっと叫び出した。
「すげーーー!!!」
「奇跡だ!」
「聖女って本当にいるんだな!!」
「光の柱って本当に立つんだ。すげー」
「聖女様、バンザーイ」
ううーん、ちょっと目立ちすぎたな。
自分でコントロールできないのに、聖女が出現したって噂になっちゃうと、ちょっと困るなあ。
周りにはどんどん人が集まってきている。
「聖女様、聖女様」
「ありがとうございます、ありがとうございます」
「聖女様どうかこの子にも祝福を」
「控えなさい」
私の周りに近づいてきた人たちとの間にジョセフが割って入った。
「聖女様の祝福を自分だけが受けようとするなど、あってはならないこと。下がりなさい」
身なりは質素だけど、威厳のあるジョセフの言葉に人々は言葉を失い、立ちすくんでしまった。
がっかり、失望。そんな気持ちが流れ込んでくる。
「ジョセフ、待って」
「皆さん。ごめんなさい。祝福の与え方がよくわかりません。今度教団で習ってきます。さっきの光はなぜできたのか自分でもわからないんです。ですが、ここにいらっしゃる方々が心正しく、正直に、周りの方々と調和して過ごされることを祈っています」
そこに集まった全員が膝をつき、首を垂れた。
「ありがとう。皆さんに祝福を」
あたりは感謝の念で包まれている。
こんな感じで良かったのかな。今度ヴィダル先生によく習っておかなきゃ。
神学の授業をもっと真面目に受けるべきだった。
そんなことを考えていると、馬丁さんが弾かれたように立ち上がり、鞍を持って戻ってきてくれた。
そういえば、そうでした。
振り返ると、リーラが呆然と立ちすくんでいた。
「どうしたの?」
「どうしたって・・・目が、金色に光ってたし、それに、ハヤテから薬が抜けてるし・・・」
「そうだよねえ。不思議だよねえ?私もわかんない」
「あ、そう・・・そう・・・そこは、ステラのままなのね」
ジョセフを見ると、肩をすくめ首を振った。
「まあ、なんとかなるだろ」
「そうよ、なんとかなるから!さあ、出発しましょ!!」
私は元気に声を上げた。
ふわふわと舞う粉雪のようなひかりの粒は地上に落ち、そのまま吸い込まれていく。
地面は鈍く輝き、地表も金色に輝いた。
手のひらに大きく集まる光の玉をイメージすると、ひかりの粒がブワッと手のひらの上に集まり、大きな玉になった。
そのまま、祈りを込めて馬小屋の方にひかりの玉を投げる。
すると、さっきまで苦しげに鳴いていた馬たちの声が落ち着いて満足げに喉を鳴らす音が聞こえてきた。
まだ残っているふわふわとした光の粒は周囲を照らしながら、ゆっくりと地上に落ちていく。
「うわーーー」
「聖女様だ!!」
小さな子供の声が聞こえてきた。
思わず振り返ると、少し離れたところから小さな男の子とすこし大きな女の子が私のことを指差していた。
エプロンドレスの女の子と半ズボンの男の子は手を繋ぎ、そっくりな表情でこぼれ落ちそうなほど大きく目を見開いて立っていた。よく似ているから姉弟なのかな?
二人の後ろに立っていたお母さんらしき女の人が、
「こ、こら、やめなさい」
と慌てて止めようとしている。
私はにっこりと微笑むと、ひかりの粒をあつめ、二人の頭の上に飛ばし、花の形にするとまるで花びらが散るようにひかりが舞い落ちた。
「すげ」
「わあ」
そっと唇の上に指をのせ、「ナイショだよ」と念を送る。
子供達にはすぐわかったみたい。
二人は、大きく首を縦に振った。しかも何回も。
ふふ、可愛い。
はーちゃんの瞳には元の強い力が戻ってきている。
さっきまでの、苦しさやもどかしさがすっかりなくなっていた。
もしかして、これって浄化?
いやー、知らなかった。こんなことできたんだあ。
すごいねー、やっぱり私って聖女なんだねえ。ほんと、すごいね。これってゲーム補正ってやつなの?
どこからどこまでがゲーム補正なのかわかんないけど、こんな力があったんだあ。
でも、便利だね、これ。
はーちゃんは、甘えたようにブルルルと喉を鳴らし、私のお腹に鼻を押し付けてきた。
「くすぐったい、くすぐったいよ、はーちゃん。何?乗せてくれるの?もう大丈夫なの?よかったねえ。ごめんね、私のせいで薬盛られちゃったんだよね。本当にごめん」
はーちゃんは私の腕を甘噛みして一振りすると、私の体が宙に浮き、ぽんっと背中に乗せられた。
「うわっ」
驚いてはーちゃんの首に手を回すと、また、ブルルルと言いながら立ち上がった。
「わかったわかった、他の子達も見ようね」
はーちゃんに乗せられて馬小屋に戻ろうとすると、声を失ったように黙り込んでいた人たちがどっと叫び出した。
「すげーーー!!!」
「奇跡だ!」
「聖女って本当にいるんだな!!」
「光の柱って本当に立つんだ。すげー」
「聖女様、バンザーイ」
ううーん、ちょっと目立ちすぎたな。
自分でコントロールできないのに、聖女が出現したって噂になっちゃうと、ちょっと困るなあ。
周りにはどんどん人が集まってきている。
「聖女様、聖女様」
「ありがとうございます、ありがとうございます」
「聖女様どうかこの子にも祝福を」
「控えなさい」
私の周りに近づいてきた人たちとの間にジョセフが割って入った。
「聖女様の祝福を自分だけが受けようとするなど、あってはならないこと。下がりなさい」
身なりは質素だけど、威厳のあるジョセフの言葉に人々は言葉を失い、立ちすくんでしまった。
がっかり、失望。そんな気持ちが流れ込んでくる。
「ジョセフ、待って」
「皆さん。ごめんなさい。祝福の与え方がよくわかりません。今度教団で習ってきます。さっきの光はなぜできたのか自分でもわからないんです。ですが、ここにいらっしゃる方々が心正しく、正直に、周りの方々と調和して過ごされることを祈っています」
そこに集まった全員が膝をつき、首を垂れた。
「ありがとう。皆さんに祝福を」
あたりは感謝の念で包まれている。
こんな感じで良かったのかな。今度ヴィダル先生によく習っておかなきゃ。
神学の授業をもっと真面目に受けるべきだった。
そんなことを考えていると、馬丁さんが弾かれたように立ち上がり、鞍を持って戻ってきてくれた。
そういえば、そうでした。
振り返ると、リーラが呆然と立ちすくんでいた。
「どうしたの?」
「どうしたって・・・目が、金色に光ってたし、それに、ハヤテから薬が抜けてるし・・・」
「そうだよねえ。不思議だよねえ?私もわかんない」
「あ、そう・・・そう・・・そこは、ステラのままなのね」
ジョセフを見ると、肩をすくめ首を振った。
「まあ、なんとかなるだろ」
「そうよ、なんとかなるから!さあ、出発しましょ!!」
私は元気に声を上げた。
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