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2 学園編
78 その後のこと
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どきん!心臓が跳ね上がる。
唇が触れ合った時間は、ほんの一瞬。
ハル様は弾かれたように私から離れると、口元を押さえて横を向いた。
その顔は耳まで全部真っ赤だった。
「分かったな」
ハル様はボソッとそう呟き、教室から出て行った。
え、えっ?何が起こってるの?
今私キスしちゃったってこと?
ちょっと待って、ちょっと待って。ちょっとだけ待って。
ちょっといま何も考えられない。
なんか、頭とか心臓が全部破裂してどっかに飛んでっちゃいそう!!
思わずその場にしゃがみこんで顔を覆ってしまう。
ちょっと、いま、本当に無理。
無理だからああ。
「ちょっと~、殿下も結構やるね~」」
セオがニヤニヤしながら教室に入ってきた。
「あうーん」
もうどうしたらいいのかわからない。私の心臓はあっちへぴょんぴょんこっちへぴょんぴょん飛び跳ねていて全然落ち着いてくれない。
「殿下ったら真っ赤な顔して教室から出てきたけどさ、何があったのさ」
面白がっているような声でセオが追求してくる。こいつ絶対見てた。まちがいない。
き、聞かないでよぉ~~
私はうずくまったまま、両腕で顔を隠した。
「こないだの文具店におまじないのチャーム買いに行く?」
いやあああ、からかわないでえええ。
胸がムズムズ、ソワソワしてどうしたらいいのかわからない。
一体私になにが起こってるの?
か、買ってもいいかも‥‥でも人に見られたら死ねる。
「わ、わからない‥‥‥」
やっとの思いで声を出す。
「わからないって何が?」セオが相変わらず面白がっている様な声を出す。
「どうしたら、いいのか。ハル様が何を考えているのかわからない」
私の声は聞いたこともないほどか細い。
なんでこんなにヘロヘロになってるの?自分?
「ふ~~ん?」
こっそり見上げると、セオが面白くて仕方ない、と言う様な表情で私を見ていた。
「わからないんだ~~?へーー」
まあ、でも家族としてはそのぐらい奥手な方が安心か、とセオドアは思い直した。
スーだしね?
奥手というか、鈍いというか、幼いというか。
「まあ、そのうちわかる日が来るんじゃない?」
セオドアはそういうと、ステラの手を取って引っ張り上げた。
「さ、授業に行くよ」
そうでした。授業中でした。
この騒ぎですっかり忘れてたわ。
この時間は講堂での授業だったので慌てて移動して出席すると、「殿下から連絡をいただいてますよ」と先生に優しく言われ、着席を促された。
セオが口の中で冷やかす様に口笛を吹いた。
「やるね、殿下」だって。
私は平静を装うだけで精一杯。
このままドキドキしすぎてどうにかなっちゃいそう。
講堂に先にきていたアリアが目に入り、一瞬目があったが、何も感じなかった。
もう、いうべきことは言った。これから話すこともほとんど無いだろう。
むしろそのあとの出来事の方が自分的には大変。
アリアとのやりとりは、もう今日を限りに終わりにしたい。
お互いに何も感じなくなれば、それでいい。
もう何も仕掛けてこなくなれば、それで十分。
全ての人と同じ様に仲良くすることはできない。
アリアとは仲良くすることはできないと思う。
これからも。
みんな仲良くなんて、一種の暴力だよね?
距離を保って過ごす方がいい関係だってあるんだから。
その日の授業が終わった後セオと今日の話をした時に、なんであの場にハル様がきたんだろ?と話すと、「護衛が付いてたからでしょ」とあっさり返された。
どーゆーこと?
「しばらく前から、護衛が付いてたの、気がつかなかったの?」
護衛?護衛ってよく殿下の後ろに立ってるむきむきの護衛のこと?
「学園生活の支障になるから、あからさまな護衛をつけなかった殿下の思いやりぐらい気がつこうよ。スー」
「‥‥‥」
気がつかなかったけど、ハル様には守ってもらっていたらしい。
きちんと婚約者として大切に扱ってくれていたんだ。
そのことに、初めて気がついた。胸が大きな音を立て、いたたまれない様な気分になる。
この気持ちをどう考えたらいいのか、分からない。今日は、まだ。
でも、ハル様の顔を見たいような、会いたいような会いたくないような、どうしたらいいのかわからない気持ちが頭の先から足の先まで私を支配してしまい、このまま骨がなくなってぐずぐずに溶けてなくなってしまうかもしれない、と初めて思った。
唇が触れ合った時間は、ほんの一瞬。
ハル様は弾かれたように私から離れると、口元を押さえて横を向いた。
その顔は耳まで全部真っ赤だった。
「分かったな」
ハル様はボソッとそう呟き、教室から出て行った。
え、えっ?何が起こってるの?
今私キスしちゃったってこと?
ちょっと待って、ちょっと待って。ちょっとだけ待って。
ちょっといま何も考えられない。
なんか、頭とか心臓が全部破裂してどっかに飛んでっちゃいそう!!
思わずその場にしゃがみこんで顔を覆ってしまう。
ちょっと、いま、本当に無理。
無理だからああ。
「ちょっと~、殿下も結構やるね~」」
セオがニヤニヤしながら教室に入ってきた。
「あうーん」
もうどうしたらいいのかわからない。私の心臓はあっちへぴょんぴょんこっちへぴょんぴょん飛び跳ねていて全然落ち着いてくれない。
「殿下ったら真っ赤な顔して教室から出てきたけどさ、何があったのさ」
面白がっているような声でセオが追求してくる。こいつ絶対見てた。まちがいない。
き、聞かないでよぉ~~
私はうずくまったまま、両腕で顔を隠した。
「こないだの文具店におまじないのチャーム買いに行く?」
いやあああ、からかわないでえええ。
胸がムズムズ、ソワソワしてどうしたらいいのかわからない。
一体私になにが起こってるの?
か、買ってもいいかも‥‥でも人に見られたら死ねる。
「わ、わからない‥‥‥」
やっとの思いで声を出す。
「わからないって何が?」セオが相変わらず面白がっている様な声を出す。
「どうしたら、いいのか。ハル様が何を考えているのかわからない」
私の声は聞いたこともないほどか細い。
なんでこんなにヘロヘロになってるの?自分?
「ふ~~ん?」
こっそり見上げると、セオが面白くて仕方ない、と言う様な表情で私を見ていた。
「わからないんだ~~?へーー」
まあ、でも家族としてはそのぐらい奥手な方が安心か、とセオドアは思い直した。
スーだしね?
奥手というか、鈍いというか、幼いというか。
「まあ、そのうちわかる日が来るんじゃない?」
セオドアはそういうと、ステラの手を取って引っ張り上げた。
「さ、授業に行くよ」
そうでした。授業中でした。
この騒ぎですっかり忘れてたわ。
この時間は講堂での授業だったので慌てて移動して出席すると、「殿下から連絡をいただいてますよ」と先生に優しく言われ、着席を促された。
セオが口の中で冷やかす様に口笛を吹いた。
「やるね、殿下」だって。
私は平静を装うだけで精一杯。
このままドキドキしすぎてどうにかなっちゃいそう。
講堂に先にきていたアリアが目に入り、一瞬目があったが、何も感じなかった。
もう、いうべきことは言った。これから話すこともほとんど無いだろう。
むしろそのあとの出来事の方が自分的には大変。
アリアとのやりとりは、もう今日を限りに終わりにしたい。
お互いに何も感じなくなれば、それでいい。
もう何も仕掛けてこなくなれば、それで十分。
全ての人と同じ様に仲良くすることはできない。
アリアとは仲良くすることはできないと思う。
これからも。
みんな仲良くなんて、一種の暴力だよね?
距離を保って過ごす方がいい関係だってあるんだから。
その日の授業が終わった後セオと今日の話をした時に、なんであの場にハル様がきたんだろ?と話すと、「護衛が付いてたからでしょ」とあっさり返された。
どーゆーこと?
「しばらく前から、護衛が付いてたの、気がつかなかったの?」
護衛?護衛ってよく殿下の後ろに立ってるむきむきの護衛のこと?
「学園生活の支障になるから、あからさまな護衛をつけなかった殿下の思いやりぐらい気がつこうよ。スー」
「‥‥‥」
気がつかなかったけど、ハル様には守ってもらっていたらしい。
きちんと婚約者として大切に扱ってくれていたんだ。
そのことに、初めて気がついた。胸が大きな音を立て、いたたまれない様な気分になる。
この気持ちをどう考えたらいいのか、分からない。今日は、まだ。
でも、ハル様の顔を見たいような、会いたいような会いたくないような、どうしたらいいのかわからない気持ちが頭の先から足の先まで私を支配してしまい、このまま骨がなくなってぐずぐずに溶けてなくなってしまうかもしれない、と初めて思った。
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