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1 聖女開眼

35 婚約の申し込み

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ちょっとよく理解できないことも多いんだけど、教団の皆さんには湖の景色でも楽しんでもらうことにして、私とセオドアとジョセフの3人はそこを後にすることにした。

「スーにお礼を言いたいことがあったんだよ」
歩きながらジョセフが言う。

「この間スーに『自分を認めてあげて』、って言われてから、ずっと自分のことを考えていたんだ。」
私はジョセフを見つめた。

「何故かわからないけど、すごく心に残る言葉で、後からもずっと何度もなんども心の中で繰り返されたんだ。そうしたら、どんどん心が軽くなってきて‥‥‥」
ジョセフの茶色の瞳がきらめく。
「スーって本当に聖女様なんじゃないの?僕の心が軽くなったら、食欲も出て、鍛錬がすごく捗るようになったんだ。気持ちもやる気に満ちてるし。背まで伸びたんだ。もしかして、それが聖女様の力なんじゃないの?」

「んな訳ないでしょ。」
セオドアが割って入る。
「ステラが聖女様のわけないじゃん。偶然だよ偶然。早く忘れなよね」
「そうかな。」ジョセフは納得がいかなそうだ。

「でも。聖女様じゃないなら、僕が婚約を申し込んでもいいのかな」

「えっ?」
「はあ?」
私とセオドアは同時に声をあげた。

「君は僕が今まで知り合った中で一番気持ちのいい人だし。君がいてくれればなんでもできそうな気がする。爵位が欲しいなら、親戚の家で跡取りがいない家があるからそこの養子に転がり込んでもいいし。考えてみてくれないかな。」

ジョセフは真剣な瞳で私を見つめる。

「えー‥‥‥まだ、10歳だよ?考えられない」
動揺した私が答えると、
「10歳で婚約なんて普通でしょ」
セオドアがまた横から余計なツッコミを入れてきた。

「きっと、ジョセフの勘違いだよ。そのうち好きな人ができたら、慌てて婚約したことを後悔するかもしれないしね!もうちょっと大人になってから考えよう!」
10歳で結婚相手を決めちゃうなんて、ちょっと転生者にはついていけないぞ?

「そう‥‥‥」ジョセフは納得いかなげに黙り込んでしまった。

「さあ、今日はもう帰りましょ!そういえば、今日の午後はなんの授業だったかしら?」
「今日は休み‥‥‥」私がセオドアを肘で小突く。
「えーっと、なんだったっけ。歴史?」
「そうそう、歴史!じゃ、ジョセフまたね!」

とりあえず、私とセオドアはジョセフを置いて逃げ出した。


屋敷に戻ると、とうさまが書斎で呼んでいるとマクシムさんに告げられた。
セオドアとともにとうさまの書斎に向かう。

机に向かって何か書き物をしていたとうさまは私たちを見ると立ち上がって、ソファーに座るように手で促す。

「ステラにお茶会の招待状が来た。家格的にも断れない相手だ。準備をして、お伺いするように。」

と言って私に招待状を手渡した。

そこには、アドランテ公爵家令嬢のルシアナ様の流れるように美しい筆致でお茶会に招待するのでぜひご参加いただきたいと記載されていた。
こ、公爵家のお誘いじゃ断れないよね?一介の男爵家じゃさぁ‥‥‥

「うわ、それって、王太子の婚約者候補筆頭の令嬢じゃん」
横から覗き込んだセオドアがポツリと言う。

うわあ。もうあの王太子の訪問のことはすっぱりと忘れたいと思ってたのに。
婚約者候補筆頭とかおっかない。
でも、きっと、断れないんだよね?
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