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1 聖女開眼

25 教団来襲のその後は

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「ぎゃ~っははは~~だぁれが聖女だぁってぇ~~?」

腹を抱えて笑い転げるセオドア。

「わ、笑わせんなよ~~コロス気か~~ぎゃ~っはっは~
ヒー、ヒーッ、ヒーッ、ヒー、笑い死ぬ。やめてくれ~~」

もう、息も絶え絶えだ。

「う、うるさいわね。別にこっちから名乗ったわけじゃなくて、あっちがいきなり押しかけてきたんだからね?」

「し、しかも、なんだよ!あの歌!!ぎゃはははははは」

「あっちが勝手に歌い始めたんだから。知らないわよ」

「ヒーヒーヒー」

「笑いすぎよ!この二重人格!!」

「ヒーヒーヒー」


教団来襲の後、「お姉様、今度の授業のことで‥‥‥」とかなんとかいいながらきゅるんとしたセオドアに学習室に連れ込まれた。

そして、イマココ。
床に転がって笑い転げるセオドアを今まさに踏んでやろうかと思っているところだ。

「あ、あんたが、せ、聖女‥‥‥く、国を挙げたお笑い企画でも考えてんのかよ。ぶはははははははは」

「ふ、ふん」

自分こそ、聖女に選ばれると思ってたんじゃないの?リボンマシマシでいつにもましてきゅるんきゅるんしてたくせに。なにさ。
別に聖女認定されたかったわけじゃないけど、なんかムカつく。

「ぎゃはははは~~」

セオドアからはこの間漂っていたような不安のかけらも感じない。
ただただ笑い転げてるだけだ。

「ふ、ふん。自分だっていつもよりリボンマシマシで張り切ってたくせに何さ。」
「ぎゃはは~~だ、だって、教団の権力者が来るなら、当たり前だろ~よ?将来のために媚び売っとかなきゃだろ~~オネエサマはそんなこともわからないのかよ~~やっぱ田舎者だな。それとも山から降りてきた山猿かぁ~?ぶははっはっは~」

そうかい、そうかい。
ったくお貴族様は大変なこって。

床でなおも笑い転げるセオドアを軽く足で蹴ると、自分の部屋に向かった。
相手してられるか。


「お嬢様、こちらでしたか」
途中、慌てたようなマクシムさんに見つかり、とうさまの書斎に連れて行かれた。

「来たか」
書斎に着くと、とうさまは待ちわびていたようだった。

「まあ、座れ」
手でソファーを指差すと、自分も椅子に腰掛ける。

「お前は聖女なのか?」
お父様が単刀直入に聞いた。

「正直、わかりません。」
私は素直に答えた。
まあ、ゲームの設定では聖女だったけどさあ。
何が聖女なのかもわからないもんね?
「聖女なのか、聖女じゃないのかすら分からないです。聖女かどうかなんてどうやって見分けるんですか?そもそも仮に聖女だとしても、どんな力があるのかもわかりません」

「ふむ。確かに」
父は少し考え込むと、

「まあ、しかし、教団があれだけの騒ぎを起こしたのだから、噂は広まるだろう。このまま、何もないわけにはいかないだろうな」
と言った。

「危険なので、今後は小屋での寝泊まりは禁ずる」
とも。

最近は少しずつ屋敷でも過ごすようになっていたが、気が向いた時は小屋で過ごしていた。あいつらのせいでもう
許されないようだ。

私は、嘆息すると、「わかりました」と答えた。

「しばらくは屋敷内で静かに過ごすように」と父に命令されて、部屋を出た。



(あーあ、なんだか訳がわからない騒ぎになっちゃったけど、このままこれで終わってくれないかな)

がっかりしながら、自室に向かっていると、今度はデボラにバッタリ会った。

思わず、緊張し、体が固まる。
体の底から恐怖が浮かび上がってくる。

デボラは私を一瞥すると、何も言わずに目の前を通り過ぎて行った。

(なんだろう‥‥‥怒りだけじゃない。戸惑い?困惑?混乱?複雑な感情が渦巻いているようだ。よくわからない‥‥‥)

ただ、前回会った時とは、別人のようだ。
あの、恐ろしいほどの怒りは消えたわけではないが、随分と形を変えていた。

(うーん‥‥‥とりあえず、殴られなくてよかった)

そう思い直し、自分の部屋に向かった。



男爵夫人ヴァイオレットはデイルームにて考え込んでいた。

(あの娘が聖女?聖女様‥‥‥?)

真偽のほどはわからない。旦那様も本人も否定していたようだ。

(わからないけど、でも、あの娘の言葉は妙に心に残る‥‥‥)

ノックの音がして、デボラが部屋に入ってきた。

振り返って見ると、落ち着きをなくしているようなデボラがお茶セットを手にして立っていた。


「そうね、お茶にしましょう」

ヴァイオレットはデボラに優しく声をかけると、デイベッドに身体を預けた。



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