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1 聖女開眼

21 攻略対象者?? 禁断枠??? 義弟?? セオドア

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この屋敷に引き取られたばかりの私がセオドアと同じ授業を受けられる科目はそう多くはない。

礼法と書き取りカリグラフィーとダンスと護身術とか、今のところそのくらい?

今日の授業は美しい字を書くための書き取りカリグラフィーの授業だった。
もともと地がガサツな私は、結構苦手分野。

でも、貴族にとっては、礼状とか招待状のあて名書きとかに美しい字は必須だから、必須科目として学ばなければならない分野だ。

ペンを紙に引っ掛けまくり、書いた文字を擦ってしまい手は真っ黒、ついでに書いた紙も真っ黒にしている私とは違い、授業を受けるセオドアは完璧だった。

丁寧かつ速く美しい文字が綴られていく。

「まあ、ぼっちゃま素晴らしいですね。これならどこに出しても恥ずかしくないお手紙が書けますよ」

先生は大絶賛だ。

セオドアはきゅるるんモードをかぶり、

「本当ですかぁ?うれしい♡自分では綺麗にできているか自信がなくってぇ。」

などと言いながらモジモジクネクネしている。
先生はその姿を見て、嬉しそうに笑っており、こやつに完全に騙されているようにしか見えない。

(ちっ、かわいこぶって。そいつ、変なやつですからね?)

心の中で言いつけては見るものの、現実は厳しい。

「お嬢様、こちらのタオルでお手を拭ってくださいませ」

などとマーシャさんに温めたおしぼりを渡され、手元を見下ろすと私の書き取りした紙は超汚い。

前世でもあまりこういう分野は得意ではなかったような記憶がうっすらあるが、転生者あるあるで急に上達してるとかってないの?ほら、スキル無限大になってるとかさぁ。

残念ながら、そんなスキルはないらしい。むしろ「がっかりレベル」だ。

先生も「初めてですからね」などと生温かい目で見ているが、なんかすごく負けた気分。
いや、完敗か。


1時間程の授業の後、講義は終了し、先生は席を立ち、マクシムさんも先生をお送りするために退出した。
マーシャさんは、「おしぼりを持ってまいりますね。」と微笑みながら、新しい手拭きを取りに行ってしまった。
どうやら私は予想以上に、手を汚してしまっていたらしい。
お手数おかけして、すみません。


学習室に、セオドアと二人きりになると、部屋の空気がガラッと変わった。

今までいた天使のような愛らしい男の子はどこへ?

「あんたって、チカンじゃなくて、義理のオネエサマだったんだ~ふう~ん、へぇ~~」
「‥‥‥そうみたいね。」

「ま、大したことなさそうだね。今日の感じなら、ボクの地位も安泰ってことでいいのかな?安心したよ」
「ボクの地位?」

セオドアはプイッと横を向いた。
答える気は無いらしい。

「てっきり、美しいボクを覗きにきた変態だと思った」

そして、一言多い。

「‥‥‥あっそう。何でそう思ったのよ。」

「ふ、ふん。ボクのような美少年を見たらまともな神経ではいられないだろ?‥‥‥今までだって‥‥‥」

何言ってんのこいつ、と思いながら呆れて見ていると、セオドアから流れ込んできたのは微かな不安だった。

「‥‥‥?」

そう、こいつってなんか「きゅるるん美少年」という砂糖菓子でコーティングされているような存在だけど、なんとなく微かな不安が伝わってくるような気がする。

「でも、忘れないでよね?この屋敷の跡取りはボクなんだから!どの科目だって、負けないからね!?」

そう言うと、突然席を立ち、部屋から出て行ってしまった。


なんだあいつ?と首をひねっていると慌てた様子で戻ってきて、

「そ・れ・か・ら、風呂場でのチカン、今度やったら許さないよ?」

わざわざ言いやがった。

やってねーっつーの。コラ。


ただ、あいつの言ってたことが気にかかる。

(屋敷の跡取りはボク?当たり前じゃないの?)



何言ってんだろ?
男爵が外で作った子供である私相手に何言ってんだろ?

だって、この屋敷のおぼっちゃまってことは、とうさまと男爵夫人の子供だよね?
「嫡男」ってやつじゃないの?
何で跡取り問題が?

そもそも嫡男が継ぐもんじゃないの?

そういえば、とうさまが「義弟」って言ってた?
腹違いの弟って「義弟」っていうの?



変なの。なんだかわからない。

私は、突然向けられた激しいライバル意識とその底に漂っていた微かな不安に首をひねったのだ。




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