21 / 247
1 聖女開眼
21 攻略対象者?? 禁断枠??? 義弟?? セオドア
しおりを挟む
この屋敷に引き取られたばかりの私がセオドアと同じ授業を受けられる科目はそう多くはない。
礼法と書き取りとダンスと護身術とか、今のところそのくらい?
今日の授業は美しい字を書くための書き取りの授業だった。
もともと地がガサツな私は、結構苦手分野。
でも、貴族にとっては、礼状とか招待状のあて名書きとかに美しい字は必須だから、必須科目として学ばなければならない分野だ。
ペンを紙に引っ掛けまくり、書いた文字を擦ってしまい手は真っ黒、ついでに書いた紙も真っ黒にしている私とは違い、授業を受けるセオドアは完璧だった。
丁寧かつ速く美しい文字が綴られていく。
「まあ、ぼっちゃま素晴らしいですね。これならどこに出しても恥ずかしくないお手紙が書けますよ」
先生は大絶賛だ。
セオドアはきゅるるんモードをかぶり、
「本当ですかぁ?うれしい♡自分では綺麗にできているか自信がなくってぇ。」
などと言いながらモジモジクネクネしている。
先生はその姿を見て、嬉しそうに笑っており、こやつに完全に騙されているようにしか見えない。
(ちっ、かわいこぶって。そいつ、変なやつですからね?)
心の中で言いつけては見るものの、現実は厳しい。
「お嬢様、こちらのタオルでお手を拭ってくださいませ」
などとマーシャさんに温めたおしぼりを渡され、手元を見下ろすと私の書き取りした紙は超汚い。
前世でもあまりこういう分野は得意ではなかったような記憶がうっすらあるが、転生者あるあるで急に上達してるとかってないの?ほら、スキル無限大になってるとかさぁ。
残念ながら、そんなスキルはないらしい。むしろ「がっかりレベル」だ。
先生も「初めてですからね」などと生温かい目で見ているが、なんかすごく負けた気分。
いや、完敗か。
1時間程の授業の後、講義は終了し、先生は席を立ち、マクシムさんも先生をお送りするために退出した。
マーシャさんは、「おしぼりを持ってまいりますね。」と微笑みながら、新しい手拭きを取りに行ってしまった。
どうやら私は予想以上に、手を汚してしまっていたらしい。
お手数おかけして、すみません。
学習室に、セオドアと二人きりになると、部屋の空気がガラッと変わった。
今までいた天使のような愛らしい男の子はどこへ?
「あんたって、チカンじゃなくて、義理のオネエサマだったんだ~ふう~ん、へぇ~~」
「‥‥‥そうみたいね。」
「ま、大したことなさそうだね。今日の感じなら、ボクの地位も安泰ってことでいいのかな?安心したよ」
「ボクの地位?」
セオドアはプイッと横を向いた。
答える気は無いらしい。
「てっきり、美しいボクを覗きにきた変態だと思った」
そして、一言多い。
「‥‥‥あっそう。何でそう思ったのよ。」
「ふ、ふん。ボクのような美少年を見たらまともな神経ではいられないだろ?‥‥‥今までだって‥‥‥」
何言ってんのこいつ、と思いながら呆れて見ていると、セオドアから流れ込んできたのは微かな不安だった。
「‥‥‥?」
そう、こいつってなんか「きゅるるん美少年」という砂糖菓子でコーティングされているような存在だけど、なんとなく微かな不安が伝わってくるような気がする。
「でも、忘れないでよね?この屋敷の跡取りはボクなんだから!どの科目だって、負けないからね!?」
そう言うと、突然席を立ち、部屋から出て行ってしまった。
なんだあいつ?と首をひねっていると慌てた様子で戻ってきて、
「そ・れ・か・ら、風呂場でのチカン、今度やったら許さないよ?」
わざわざ言いやがった。
やってねーっつーの。コラ。
ただ、あいつの言ってたことが気にかかる。
(屋敷の跡取りはボク?当たり前じゃないの?)
?
何言ってんだろ?
男爵が外で作った子供である私相手に何言ってんだろ?
だって、この屋敷のおぼっちゃまってことは、とうさまと男爵夫人の子供だよね?
「嫡男」ってやつじゃないの?
何で跡取り問題が?
そもそも嫡男が継ぐもんじゃないの?
そういえば、とうさまが「義弟」って言ってた?
腹違いの弟って「義弟」っていうの?
?
変なの。なんだかわからない。
私は、突然向けられた激しいライバル意識とその底に漂っていた微かな不安に首をひねったのだ。
礼法と書き取りとダンスと護身術とか、今のところそのくらい?
今日の授業は美しい字を書くための書き取りの授業だった。
もともと地がガサツな私は、結構苦手分野。
でも、貴族にとっては、礼状とか招待状のあて名書きとかに美しい字は必須だから、必須科目として学ばなければならない分野だ。
ペンを紙に引っ掛けまくり、書いた文字を擦ってしまい手は真っ黒、ついでに書いた紙も真っ黒にしている私とは違い、授業を受けるセオドアは完璧だった。
丁寧かつ速く美しい文字が綴られていく。
「まあ、ぼっちゃま素晴らしいですね。これならどこに出しても恥ずかしくないお手紙が書けますよ」
先生は大絶賛だ。
セオドアはきゅるるんモードをかぶり、
「本当ですかぁ?うれしい♡自分では綺麗にできているか自信がなくってぇ。」
などと言いながらモジモジクネクネしている。
先生はその姿を見て、嬉しそうに笑っており、こやつに完全に騙されているようにしか見えない。
(ちっ、かわいこぶって。そいつ、変なやつですからね?)
心の中で言いつけては見るものの、現実は厳しい。
「お嬢様、こちらのタオルでお手を拭ってくださいませ」
などとマーシャさんに温めたおしぼりを渡され、手元を見下ろすと私の書き取りした紙は超汚い。
前世でもあまりこういう分野は得意ではなかったような記憶がうっすらあるが、転生者あるあるで急に上達してるとかってないの?ほら、スキル無限大になってるとかさぁ。
残念ながら、そんなスキルはないらしい。むしろ「がっかりレベル」だ。
先生も「初めてですからね」などと生温かい目で見ているが、なんかすごく負けた気分。
いや、完敗か。
1時間程の授業の後、講義は終了し、先生は席を立ち、マクシムさんも先生をお送りするために退出した。
マーシャさんは、「おしぼりを持ってまいりますね。」と微笑みながら、新しい手拭きを取りに行ってしまった。
どうやら私は予想以上に、手を汚してしまっていたらしい。
お手数おかけして、すみません。
学習室に、セオドアと二人きりになると、部屋の空気がガラッと変わった。
今までいた天使のような愛らしい男の子はどこへ?
「あんたって、チカンじゃなくて、義理のオネエサマだったんだ~ふう~ん、へぇ~~」
「‥‥‥そうみたいね。」
「ま、大したことなさそうだね。今日の感じなら、ボクの地位も安泰ってことでいいのかな?安心したよ」
「ボクの地位?」
セオドアはプイッと横を向いた。
答える気は無いらしい。
「てっきり、美しいボクを覗きにきた変態だと思った」
そして、一言多い。
「‥‥‥あっそう。何でそう思ったのよ。」
「ふ、ふん。ボクのような美少年を見たらまともな神経ではいられないだろ?‥‥‥今までだって‥‥‥」
何言ってんのこいつ、と思いながら呆れて見ていると、セオドアから流れ込んできたのは微かな不安だった。
「‥‥‥?」
そう、こいつってなんか「きゅるるん美少年」という砂糖菓子でコーティングされているような存在だけど、なんとなく微かな不安が伝わってくるような気がする。
「でも、忘れないでよね?この屋敷の跡取りはボクなんだから!どの科目だって、負けないからね!?」
そう言うと、突然席を立ち、部屋から出て行ってしまった。
なんだあいつ?と首をひねっていると慌てた様子で戻ってきて、
「そ・れ・か・ら、風呂場でのチカン、今度やったら許さないよ?」
わざわざ言いやがった。
やってねーっつーの。コラ。
ただ、あいつの言ってたことが気にかかる。
(屋敷の跡取りはボク?当たり前じゃないの?)
?
何言ってんだろ?
男爵が外で作った子供である私相手に何言ってんだろ?
だって、この屋敷のおぼっちゃまってことは、とうさまと男爵夫人の子供だよね?
「嫡男」ってやつじゃないの?
何で跡取り問題が?
そもそも嫡男が継ぐもんじゃないの?
そういえば、とうさまが「義弟」って言ってた?
腹違いの弟って「義弟」っていうの?
?
変なの。なんだかわからない。
私は、突然向けられた激しいライバル意識とその底に漂っていた微かな不安に首をひねったのだ。
0
お気に入りに追加
112
あなたにおすすめの小説
もう死んでしまった私へ
ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。
幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか?
今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!!
ゆるゆる設定です。
運命の歯車が壊れるとき
和泉鷹央
恋愛
戦争に行くから、君とは結婚できない。
恋人にそう告げられた時、子爵令嬢ジゼルは運命の歯車が傾いで壊れていく音を、耳にした。
他の投稿サイトでも掲載しております。
【完結】烏公爵の後妻〜旦那様は亡き前妻を想い、一生喪に服すらしい〜
七瀬菜々
恋愛
------ウィンターソン公爵の元に嫁ぎなさい。
ある日突然、兄がそう言った。
魔力がなく魔術師にもなれなければ、女というだけで父と同じ医者にもなれないシャロンは『自分にできることは家のためになる結婚をすること』と、日々婚活を頑張っていた。
しかし、表情を作ることが苦手な彼女の婚活はそううまくいくはずも無く…。
そろそろ諦めて修道院にで入ろうかと思っていた矢先、突然にウィンターソン公爵との縁談が持ち上がる。
ウィンターソン公爵といえば、亡き妻エミリアのことが忘れられず、5年間ずっと喪に服したままで有名な男だ。
前妻を今でも愛している公爵は、シャロンに対して予め『自分に愛されないことを受け入れろ』という誓約書を書かせるほどに徹底していた。
これはそんなウィンターソン公爵の後妻シャロンの愛されないはずの結婚の物語である。
※基本的にちょっと残念な夫婦のお話です
もう彼女でいいじゃないですか
キムラましゅろう
恋愛
ある日わたしは婚約者に婚約解消を申し出た。
常にわたし以外の女を腕に絡ませている事に耐えられなくなったからだ。
幼い頃からわたしを溺愛する婚約者は婚約解消を絶対に認めないが、わたしの心は限界だった。
だからわたしは行動する。
わたしから婚約者を自由にするために。
わたしが自由を手にするために。
残酷な表現はありませんが、
性的なワードが幾つが出てきます。
苦手な方は回れ右をお願いします。
小説家になろうさんの方では
ifストーリーを投稿しております。
心の声が聞こえる私は、婚約者から嫌われていることを知っている。
木山楽斗
恋愛
人の心の声が聞こえるカルミアは、婚約者が自分のことを嫌っていることを知っていた。
そんな婚約者といつまでも一緒にいるつもりはない。そう思っていたカルミアは、彼といつか婚約破棄すると決めていた。
ある時、カルミアは婚約者が浮気していることを心の声によって知った。
そこで、カルミアは、友人のロウィードに協力してもらい、浮気の証拠を集めて、婚約者に突きつけたのである。
こうして、カルミアは婚約破棄して、自分を嫌っている婚約者から解放されるのだった。
記憶がないので離縁します。今更謝られても困りますからね。
せいめ
恋愛
メイドにいじめられ、頭をぶつけた私は、前世の記憶を思い出す。前世では兄2人と取っ組み合いの喧嘩をするくらい気の強かった私が、メイドにいじめられているなんて…。どれ、やり返してやるか!まずは邸の使用人を教育しよう。その後は、顔も知らない旦那様と離婚して、平民として自由に生きていこう。
頭をぶつけて現世記憶を失ったけど、前世の記憶で逞しく生きて行く、侯爵夫人のお話。
ご都合主義です。誤字脱字お許しください。
【完結】婚約破棄されたので、引き継ぎをいたしましょうか?
碧桜 汐香
恋愛
第一王子に婚約破棄された公爵令嬢は、事前に引き継ぎの準備を進めていた。
まっすぐ領地に帰るために、その場で引き継ぎを始めることに。
様々な調査結果を暴露され、婚約破棄に関わった人たちは阿鼻叫喚へ。
第二王子?いりませんわ。
第一王子?もっといりませんわ。
第一王子を慕っていたのに婚約破棄された少女を演じる、彼女の本音は?
彼女の存在意義とは?
別サイト様にも掲載しております
婚約破棄されたら魔法が解けました
かな
恋愛
「クロエ・ベネット。お前との婚約は破棄する。」
それは学園の卒業パーティーでの出来事だった。……やっぱり、ダメだったんだ。周りがザワザワと騒ぎ出す中、ただ1人『クロエ・ベネット』だけは冷静に事実を受け止めていた。乙女ゲームの世界に転生してから10年。国外追放を回避する為に、そして后妃となる為に努力し続けて来たその時間が無駄になった瞬間だった。そんな彼女に追い打ちをかけるかのように、王太子であるエドワード・ホワイトは聖女を新たな婚約者とすることを発表した。その後はトントン拍子にことが運び、冤罪をかけられ、ゲームのシナリオ通り国外追放になった。そして、魔物に襲われて死ぬ。……そんな運命を辿るはずだった。
「こんなことなら、転生なんてしたくなかった。元の世界に戻りたい……」
あろうことか、最後の願いとしてそう思った瞬間に、全身が光り出したのだ。そして気がつくと、なんと前世の姿に戻っていた!しかもそれを第二王子であるアルベルトに見られていて……。
「……まさかこんなことになるなんてね。……それでどうする?あの2人復讐でもしちゃう?今の君なら、それができるよ。」
死を覚悟した絶望から転生特典を得た主人公の大逆転溺愛ラブストーリー!
※最初の5話は毎日18時に投稿、それ以降は毎週土曜日の18時に投稿する予定です
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる